ジョン・ゾーン[Moonchildもの]
ジョン・ゾーンの新たなる挑戦、"Moonchild"シリーズ。
漆黒の闇を疾走するような、迫力に満ちている。
Moonchild
(2006,TZADIK) TZ7357
MIKE PATTON Voice TREVOR DUNN Bass JOEY BARON Drums
1. Hellfire 2. Ghosts of Thelema 3. Abraxas 4. Possession 5. Caligula 6. 616 7. Equinox 8. Moonchild
9. Le Part Maudit 10. The Summoning 11. Sorceress
● ジョンもとうとうやってくれた。いろいろな意味で強力である。どこまでも地獄を地で行くようなベースとドラム。ここまで聞くとルインズ(吉田達也のアレですね)ぽいけど、まったく異質。パットンの声はもちろん具体的な歌唱などではなく、声帯を苛めに苛め抜いた、別次元に行っちゃった人の奇声とも言うべき代物。1曲目からかなりハイになる。ジョンが目指したルインズ的な音の体現というのはこういうことだったんだろうか。ネイキッド・シティのグラン・ギニョールで試みた実験がこういう形で花開いちゃったかという印象。マニアなら一日一回は聴かないと気がすまなくなるだろうが、苦手な人からは全く見向きもされないであろう。ジョンについていくかどうかをここで試される、踏み絵のような一枚。
![]()
Astronome
(2006,TZADIK) TZ7359
MIKE PATTON Voice TREVOR DUNN Bass JOEY BARON Drums
1. Act 1
(1) A Secluded Clearing in the Woods (2) A Single Bed in a Small Room
(3) The Innermost Chapel of a Secret Temple
2. Act 2
(4) A Mediaeval Laboratory (5) In the Magick Circle
3. Act 3
(6) A Barren Plain at Midnight (7) An Unnamed Location
● 前作"Moonchild"に続く第2弾。もう民族性とかメロディーなんてへったくれもない。暗黒を這いずり回ったり疾走するようなベースとドラムに乗せてマイク・パットンが"ウギャギャギャ〜!!"。3トラックしかないが細かく7部に分かれているらしい。前にも増して不気味で凶暴になった。個人的な感想をいえば、即興的な要素もあるにはあるが、全部が何か得体の知れないものにインスピレーションを得て作られた、細かい計算に基づく音楽だと思う…って普通の人はそうは感じないよなぁ。前作と違い化粧箱とブックレット付き。これだけでもマストアイテムになること間違いなし。アントナン・アルトーの影響を受けたんだってさ。分っかんないよ。"…メイ…コルティ…フィラ…"覚えちゃったよ。
![]()
SIX LITANIES FOR HELIOGABALUS
(2007,TZADIK) TZ7361
MIKE PATTON Voice TREVOR DUNN Bass JOEY BARON Drums JAMIE SAFT Organ IKUE MORI Electronics JOHN ZORN Alto Sax MARTHA CLUVER Chorus ABBY FISCHER Chorus KIRSTEN SOLLER Chorus
1. LITANY T 2.LITANY U 3.LITANY V 4.LITANY W 5.LITANY X 6.LITANY Y
● ついに第3弾が出たこのシリーズ。いつもの3人に加え、ジェイミー・サフトのオルガン、イクエ・モリの電子音、3人の女声コーラス、そしてジョン・ゾーン御大が指揮だけで飽き足らずアルトサックスを手に乱入。1曲目は変なところにコーラスが入る。ゾーンのサックスはパットンの声とかなり似たところがある。女声コーラスはアカペラ合唱だけでなく、タイトルにもある"Heliogabalus"を繰り返しささやいている。2曲目ではゾーンとパットンの掛け合いも少し聴ける。が、この後オルガンに乗せ静かな音楽になるのが特徴。キャーキャー言うだけにも限度があったか。3曲目は中盤女声コーラスが目立ってくる。また"Heliogabalus"を繰り返す。また、アカペラ合唱とセットになって電子音がチロチロ響いてくる。ここまで聴いているとパットン先生、今までほど目立ってないな、と思われるかもしれない。しかし4曲目、ついに出ましたよ、パットン先生のソロ。よく回る舌、どこから出てくるのか分からないほどよく出る声量、声の静と動…どれをとってもこの人は怪物。これが延々8分続く。5曲目になるとパットンら3人を中心に再びパワー全開。最後の曲は静かな始まり。コーラスが伸びやかに歌う。このCDに描かれているものは破壊ではなく再生だ、と言わんばかり。再び"Heliogabalus"…これを機にゾーンとパットンが目覚める。散々騒いでパタッと終わる。ところで、"LITANY"とは連祷といって、要は祈祷の一種であると言うことは分かったのだが、"Heliogabalus"ってどういう意味?"Helio-"が太陽を指すと言うところまでは分かっているんだけど…と思って探していたら、変態皇帝の名前だったのね。最後にこのCDのケース、薔薇の香りがする。購入されたら御試しあれ。
![]()
The Crucible
(2008,TZADIK) TZ7372
MIKE PATTON Voice TREVOR DUNN Bass JOEY BARON Drums JOHN ZORN Alto Sax MARC RIBOT Guitar 4
1. Almadel 2. Shapeshifting 3. Maleficia 4. 9x9 5. Hobgoblin 6. Incubi 7. Witchfinder 8. The Initiate
● このシリーズもついに第4弾。前作からいろいろ混ざりだしたが、今回もゾーンが積極的に参戦(特に6曲目)、パットン将軍の声で押し切るのに限界を感じてしまったんだろうか。メロディーっぽいところが無いのがこのシリーズの特徴だとばかり思っていたのだが、1曲目なんかマサダっぽい。いや、それでも2曲目の出だしなんか神の声と思わせるほどインパクト大。"メイ…コルティ…フィラ"っぽい謎の言語を発している。3曲目が一番今までのシリーズの音に近いか。4曲目ではリボーのギターも参戦。ここでは変拍子に満ちた"Astronome"なんかに比べたら均整の取れたサウンドを披露している。聴きやすさから言えば今までで一番良いが、個人的に言うなら"Astronome"っぽいものにしてほしかったな。まぁこれはこれですごくいいものには違いないが(なんて言っても、普通の人が聴いたらこういう音楽はまともな目で見てくれないんだろうけど)。今回のアルバムはアントナン・アルトー、エドガルド・ヴァレーズ、アレイスター・クロウリーに捧げられている。
Ipsissimus
(2010,TZADIK) TZ7386
MIKE PATTON Voice TREVOR DUNN Bass JOEY BARON Drums JOHN ZORN Alto Sax, Piano MARC RIBOT Guitar
1. Seven Sigils 2. The Book of Los 3. Apparitions I 4. Supplicant 5. Tabula Smaragdina 6. Apparitions II 7. The Changeling 8. Warlock
9. Apparitions III
● 出てしまった第5弾。今回はリボーさんが本格参戦。前作の方向性がより鮮明になった感がある。つまり、闇雲に突出していた1・2作から変わって(前衛性)より音楽性に多少目がいった結果がこれ、という出来(いや、これだって十分前衛だけどね。攻撃性があんまり感じられないんだよ)。パットン将軍あまり吠えてないよ、あの頃が懐かしいよ、とぼやきたくなる一方で、リボーの参戦で明らかに面白くなった4曲目のようなものもある。リボーのギターが将軍の代わりということなんだろうか。各人の技巧は素晴らしいんだけどね。今回のアルバムもやはりアントナン・アルトー、エドガルド・ヴァレーズ、アレイスター・クロウリーに捧げられている。
ENIGMATA
(2011,TZADIK) TZ7391
TREVOR DUNN Electric 5-string Bass MARC RIBOT Electric Guitar
1. Enigma One 2. Enigma Two 3. Enigma Three 4. Enigma Four 5. Enigma Five 6. Enigma Six 7. Enigma Seven 8. Enigma Eight 9. Enigma Nine 10. Enigma Ten 11. Enigma Eleven 12. Enigma Twelve
● これをmoonchildシリーズの中に組み入れるにはやや疑問符が無くはないのだが(特にアルトーやヴァレーズ、クロウリーの名前が無いんだな)。トレヴァー・ダンのベースとマーク・リボーのギターのデュオ。のっけから取りとめの無い感があるが、決して滅茶苦茶にはなってない、といったところか。かと思えば8曲目のようにメロディーが構築されている曲もある。ロシアの作曲家スクリャービンのピアノの小品にヒントを得たものもあるのだとか。ゾーンの解説によると、"Ipsissimus"に収録されているApparitions I・II・IIIの傾向のもと作曲されたもので、万人受けしないことを彼自身が認めている(とらじゃさん、情報感謝!)
TEMPLARS: In Sacred Blood
(2012,TZADIK) TZ7378
MIKE PATTON Voice TREVOR DUNN Bass JOEY BARON Drums JOHN MEDESKI Organ
1. Templi Secretum 2. Evocation of Baphomet 3. Murder of Magicians 4. Prophetic Souls 5. Libera Me 6. A Second Sanctuary 7. Recordatio 8. Secret Ceremony
● 公式にはmoonchildシリーズ6枚目となる本CD。マイク・パットン、トレヴァー・ダン、ジョーイ・バロンの骨組みはもちろんそのままにして新たにジョン・メデスキのオルガンが加わっている。今までと大きく違うのは、パットンのヴォイスがちゃんと言葉になっているという点。ちゃんと歌詞が付属しているのだ。闇雲にウギャギャギャ〜と叫んでいた頃が懐かしい(そういう曲もあるにはあるが)。なんだか歌曲の方向へ進んでいるのかね。まぁこれはこれで面白いが。ただ、この中ではトラック8が以前の傾向を色濃く受けているように感じた。これが好き。今回のアルバムもやっぱりアルトー、ヴァレーズ、クロウリーに捧げられている。