シチェドリン[歌劇]

歌劇は97年現在で3曲。最新作は"ロリータ"。
61年にVarvara(登場人物)の歌"Stradaniya(Страданье)"をピアノ伴奏用に、
64年に6曲からなる組曲(mezzo-soprano付)に、
(1.Introduction 2.Rain 3.Quadrille 4.A night encounter 5.Varvara's song and Chastushki
6.Finale 以上の構成。)
71年に室内オーケストラ用にそれぞれ編曲している。あらすじについては・・・すいません。
ちなみに、"Страданье"は 苦しみ の意。


CD
[組曲版][Stradaniya]
●Мелодия(BMG CLASSICS)74321 49125 2
あらすじ・・・自称六等官・チチコフが某都市にやってくる。
風采のいいこの男、すぐに社交界で大もて。やがて彼はここで知り合った大地主たちを詣でる旅に出る。
彼の目的は地主たちの持つ死んだ農奴たちを手に入れること。そのために海千山千な連中相手にいろいろな手を使って、時に失敗し時に大金をはたきながらもめげずに買いあさる。
しかし町で些細な噂をきっかけに疑惑が持ち上がる。贋金造りだのスパイだの・・・。終いには検事がショック死する有様。もはやこれまでとばかりチチコフは命からがら逃げていく。


"душа"はロシア語で「魂」、もう一つの意味は「農奴」。一生領主に隷属し土地に縛り付けらる農民たちである。
帝政ロシアでは人頭税を徴収する為に人口調査を10〜15年おきに行うのだが、その間に死んだ者は次回までの間生きているものと見なされ税を払い続ける義務がある。チチコフが地主から買うのはそのような農奴のことである。(とはいっても、死体でなく名義を買うのだ)

地主たちは何の価値もない(どころか厄介な)農奴たちを高値で売りつけるのだ。あこぎな連中だ。ではチチコフは何故買い漁るのか。
これらの農奴の名義を国庫に担保として入れると大金を手にする ことができるのだ。
元々は詐欺師のこの男、末はこの資金を元に農業経営を計画していたのである。お分かり頂けたであろうか。無理か。

参考:集英社ギャラリー[世界の文学]13 ロシアT P1081〜1092



ゴーゴリの小説には共通して"笑い"というものがあるが、シチェドリンの曲からは明るいメロディーは聞えては来ない。第一、買い漁るくらい死んだ農奴がいるというのは貧困と疫病などで大勢死んだということである。
このオペラの節々に挟まれる女声三重唱は農奴の悲しみを代弁している様に聞える。
セリファン(チチコフの従者・テノール)の歌も非常に良い。また、2幕冒頭の弦の使い方が好きである。曲全体で低音の弦が素晴らしい。


尚、原作は第1部(チチコフの逃亡まで)と未完の第2部まであるが当然ながらオペラは第1部に基づいて書かれている。気になる点が二つ、一つはプリューシキンという地主が出てくるが原作では爺さんだがオペラでは婆さんになっている(前掲の集英社の本、川崎隆司訳)。作曲者が意図的に変えたんだろうか。
もう一つ、原作にはチチコフの従者がもう一人登場
するのだが無口な男のためか出てこない。


CD
●Мелодия(BMG CLASSICS)74321 29347 2 (二枚組)


ロリータ (1993) 全3幕
ロリータ-セレナーデ (2001)
初演 1994.12 原作:ヴラジーミル・ナボコフ
"ロリータ・コンプレックス"の語を生み出した小説に基づく。大胆なことをするなあ。中身はちょっとわからない。
2001年にこのオペラを元に"ロリータ−セレナーデ"という曲を作曲。初演はマリス・ヤンソンスよる。期待していた歌唱は無く、6部構成を中断なしに一気に演奏する。決して煽情的な音楽ではない。この先の不安を内包したような、重々しい曲である。チェレスタか何かの音も聞こえる。シチェドリンはナボコフの小説の中に、表面的によく言われるものとは別の、何かを見出したのだろう。


CD
●Pittsburgh Symphony PS0003-2

ボヤリーナ・モロゾヴァ (2006) 2部とエピローグ
初演 2006.10 原作:"長司祭アヴァクムの生涯"、"ボヤリーナ・モロゾヴァの生涯" を基に作曲者が台本。
合唱オペラ。メゾソプラノ(ボヤリーナ・モロゾヴァ)、ソプラノ(皇女ウルソヴァ)、テノール(長司祭アヴァクム)、バス(皇帝アレクセイ・ミハイロヴィッチ)以外は合唱団とトランペット、ティンパニ、パーカッションという最小限な編成。"封印された天使"と手法が似ている。画家ヴァシーリー・イヴァノヴィッチ・スーリコフ(1848-1916)の傑作・「モロゾフ大貴族夫人」に描かれた物語が題材。ロシア正教会の教義分裂によって処刑されることになったモロゾフ夫人の悲劇をドラマティックに表現…かと言って悲劇的過ぎもしない。これはいい。正味1時間弱。

CD
●WERGO WER 6700 2

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