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| 『〜幻獣辞典・銀祇篇〜』 しゅら様より |
〜幻獣辞典・銀祇篇〜
――好き。
――好きなものは、好き。
――好きでいて、悪い?
■『蝸牛』の巻■
「ええ、好きです。一切合財欠片の躊躇いも無く、私は圭一が好きだって言えます」
「ふーむ、そうかそうか。うむ、いや、君の行動を見ればスッゴイ良く判るんだけどねー」
うんうん、と先生は一人勝手に頷いて納得していた。
「いや、判る! 判るよ! 青春の甘酸っぱい恋愛の一コマ! いいねえ……」
それを貪り喰っていた先生が言うとなんだか一瞬で腐った果実を味わってるかのように聞こえる。
第一、なんでこの先生はそんな判りきった事を聞くのだろう。
「で、だ。――君は言えたのかい?」
「……何がです?」
判ってはいたが、あえて聞いた。
「いやいや、彼本人には「スキだー」と言わないのかい?」
いやらしい笑いを付けて彼は考え通りの言葉を出す。
「……」
私が答えないことに、先生は推論を結論にしたのだろう。
「そうかそうかー。恥ずかしくて本人にはとても、かー。うんうん。判るなあ。いつか気づいてくれる、と淡い思いを抱いて日々悶々と過してるんだね」
「……で、結局何が言いたいんですか?」
「いやなに、恋のキューピッド役でもしてあげようかと?」
下心ばりばり。読心術が使えなくたって、すぐに判る。
「……で、失恋させて、私がベッドで枕を濡らしてる合間に圭一に酷い事しようとするんですね」
「はははははははやだなーやだなーそそそそんなことあるわけないじゃないかー。圭一くんにあんなことやこんなことだなんてー」
いまさら説得力0の先生の言葉。これもすでに考え通り。
なら、次に来る言葉は――
「――むう、やはり君とは判りあえんか」
ほら、単純。ばかみたい。
「大人しくして、と言ったでしょう」
「はっ。残念ながら私の聞かん棒は文字通り耳を持たないんでね」
「先生って最低ですね」
「そのセリフは人間の女には言われ慣れている」
「この学校にいる間には私のルールに従ってください。一つ、先生はズボンを下げてはいけないし、尚且つチャックの着いたズボンを履いてはいけない」
「君の服の趣味ってサイテーだな」
「先生の節操無さほどでは。――言っても判ってもらえないようですね。今回も」
私は先生ににじり寄る。
「はっはっはー、何をするつもりなのかなー、先に言っとくが君のお得意のレウコなんたらとやらはもう効かないぞー。なんたってあれから3日3晩それ系のビデオで恐怖を克服したんだから。――いやあ、発狂しかけたよ。何度お母さーんお母さーん叫んだことか」
その割には先生、足がガクガクです。
それに。
「――――――必殺、タマ打撃(強)」
毎度毎度、同じ技ばかり来ると思ったら大間違い。
ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私はどこからともなく取り出したスパナを、悶え寝転がる先生の股間にもう一度振り下ろした。もう一度。もう一度。念のためもう一度。一応もう一度、記念にもう一度。
先生は今度は悲鳴も上げずに泡を吹いていた。
……さ、帰ろ、帰ろ。
女の子の恋心が判らない先生はそこでずっとのたうち回っててください。
「あ、まいちゃん」
「……あ」
職員室から出たらばったり。
またあの先生が呼び出したんだろうか。
「ちょうどよかった。一緒に帰らない?」
とか思ったら、これは拍子抜け。予想だにもしなかった。
「……どうしたの? 調子悪いの?」
「……ううん。……………か、帰ろっ」
告白は、もうちょっと後で良いと思う――
「どしたの、まいちゃん? 何か嬉しそうだね」
だって、今のままで充分、暖かいから――
「ううん、なんでもない」
そう、なんでもないから。
何時も通りだから。
何時も通り、傍には圭一が――
「ビックオ――――――――――――――――――――――ゥ! アクショォ――――――――――――――――ン!」
ちっ、しぶとい。
どっとはらい
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