| 記念作品目次 |
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『ムーミン谷の攻防』 birds著 |
ムーミン谷は、ついこの間まで静かな谷であった。青々と茂る緑と静かな湖畔、そして心優しい住民。ただそれだけの小さな谷。しかし、それだけで十分幸福を感じられる谷だった。しかし、今、この小さな谷は戦場だった。
「ニョロニョロ隊が攻撃されてるって。どうする?スナフキン!」
通信兵のミーは甲高い声で叫んだ。
「ムーミン・パパに連絡してやってくれ。悪いがこっちも手が足りない。」
スナフキンは大声で怒鳴った。そうしなければ塹壕の中といえども銃声と爆発音で声がかき消されてしまう。スナフキンは右手に持った手榴弾のピンを外した。「1・2・3」と口の中でつぶやくと敵に向かって投げつける。爆発音とかすかな悲鳴が聞こえた。
スナフキンの傍らに青い人影(?)があった。
「どうした。ムーミン。」
湖畔でテントを張り、たき火をしてた頃の凛とした声だった。その声がムーミンを甘えさせた。
「こわいよ。こわいよ、スナフキン。」
ムーミンは抱きついた。目には涙が溜まっている。
「スニフは撃たれて死んじゃうし、ノンノン(フローレン)は敵につかまっちゃうし、僕、こわいよ。ねぇ、一緒に逃げようよ。」
スナフキンはムーミンの頭を優しくなでた。
「そうだね、ムーミン。逃げればこわくないかもしれない。逃げれば生きられるかもしれない。でもね、ムーミン。逃げたら君でなくなってしまう。ムーミン谷でパパやママ、スニフ、ミー、ノンノン達と過ごした君でなくなってしまう。」
ムーミンはスナフキンの顔を見上げた。
「戦った方がいいの?」
「それは君が考えることだよ。」
スナフキンはもう一度ムーミンの頭をなでた。そして、ムーミンの身体を離し再び銃を手にした。スナフキンの自慢の帽子はいつのまにか銃弾で穴だらけになっていた。
ムーミンは震える手で銃を取った。