〜 雑草社「ぱふ」初代編集長のまんが日記 〜

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前説

 こーゆー場に書くのは初めてなので、ちょっと緊張していたりする。

 誰だコイツ、と思われる方も多いだろうから、一応説明すると、昭和末期に私は某まんが専門誌の編集をやっていた。スタッフはみんなまだ学生で、こちらのサイトの主とはその頃からのおつき合いである。仲間内で唯一の理工系(?)ということもあって、随分と手伝ってもらい、今でも足を向けて寝られない。

 で、ここでは主に私が読んでいるまんがについて、好き勝手に書く(つもり)。あ、言っとくけれど、私は雑誌を読まず、かつ古本でしかコミックスを買わない(ビンボーだから)ので、扱う内容が古くてもお許しを。

 もし興味のある方は『コミック・ファン』(雑草社)の01〜06号を見てくれると、うれしい。そこでの連載の続きのような気分でいるので、よろしく。


第一回 入稿:2000年6月5日
参考文献 増補:2000年6月10日(訂正:6月12日・16日)


第一回

 年ほど前から、同居人の自転車を奪って、近所を走り回っている。バイクに比べると、小回りがきいて便利だ。行く先は相変わらず古本屋である。タイトルの由来はそこから(bikeは両方の意味があるからね)。

 係ないけど、この頃よく見かけるキックボードというやつ、あれは私が小さい時分に流行っていたものと似ている。もっとも、当時のものは鉄製の3輪で握りは木だったし、折りたたみもできなかった。ああいうものは周期的に流行するものなのか。と、思っていたら大和和紀が「にしむく士」4巻のあとがきで同じようなことを描いていた。そーか、あれは「スクーター」という名前だったのか。

 人が連載で読んでいて、さっぱりわからないと言っていた「20世紀少年」(浦沢直樹)の2巻が出たので、買った。この作品の特色は、主人公たちの少年時代(70年前後)と現在(97年〜)、さらに未来(2000年12月)が交錯する構成にある。子供時代の封印された記憶が甦ってくるあたり、キングの「IT」を思わせ、謎解きの魅力が読者を引っ張っていく。個人的には、作者と世代が近いせいか、アポロの月着陸や『マガジン』の巻頭カラー図解「人類滅亡」の場面なんかが懐かしい。タイトルからしてT.レックスだから泣ける。物語の展開はこれからだが、読んでいるうち、これは浦沢直樹版「童夢」+「AKIRA」ではないかと思えてきた。

 少年マガジン』が出てきたから、というわけでもないが、内田勝「「奇」の発想」は百万部を達成した時代の『週刊少年マガジン』編集長の回想記である。「8マン」「あしたのジョー」などのまんが週刊誌の草創期の名作がどうやって生まれたか、知りたい人にお勧め。また、雑誌づくりの難しさ、面白さが伝わってくる。前述の巻頭図解の立役者・大伴昌司の思い出も貴重である。西村繁男「さらば、わが青春の『少年ジャンプ』」を続けて読めば、近来のまんが隆盛の歴史をたどることもできるだろう。

 泉かねよしを集中的に読んだ。少女まんがっぽくない絵柄とセリフの面白さが気に入った。コミックスの1/3コーナーなんかを読むと、本人のみならず、その周辺の人々にも興味がわく。この人はエッセイ風のまんがを描かせたら、イケるんじゃないか。作品では「大和撫子と生まれては」「バクレツ! 大和撫子」のお嬢サマと自衛隊のミスマッチが楽しく、女王様タイプの女を描かせると天下一品である。

 業ものとしては、逢坂みえこの「火消し屋小町」も、消防士の世界を現代女性の目で描いて新鮮だ。「ケッ、こんな仕事!」なんて思いながらも、だんだんプロ意識に目覚めていく過程が、定石とはいえ読ませる。「ベル・エポック」もそうだが、私からすると働く女の人の軽やかさとしぶとさが羨ましい。

 て、この間の連休は知り合いがセガ・サターンのコントローラーを寄付してくれたのでゲーム三昧していた。今どき「スペースハリアー」や「ぷよぷよ」をやっている奴も珍しい(プレステ2の時代なのに)。しかし、ハードの進化にソフトがついていっていないように思える。ろくにやっていないくせに、エラソーなことを言えば、ゲームも多様化してパワーが衰えているのではないか。コミケのコスプレを見ても、90年代はゲームの時代だったと聞く。まんがとアニメ、ゲームは相互に関連性の強いジャンルだから、次にどんな波が来るのか興味深いところだ。

 ン・シモンズの「ハイペリオン」シリーズを読みかけている。続編の「エンディミオン」が見つからなくて立ち往生しているのだけれど、この「エンディミオン」というというタイトルを、どこかで聞いた覚えがあった。原典は無論、キーツの詩なのだが、私が知ったのは山岸凉子の「メタモルフォシス伝」だったような気がして、文庫で出ているのを読み直してみた(どうして秋田文庫なのだろう)。国語のテスト問題として、西脇順三郎の詩の「覆された宝石」という言葉が出てきて、実はキーツの「エンデミオン」から来ている(と登場人物が言う)。これで謎は解けたわけだが、「メタモルフォシス伝」は今読んでも、風変わりな学園ドラマである。エリートの集まる進学校に現れた不思議な転校生が、同級生たちを巻き込み、変貌させていくストーリーは「日出処の天子」や「天人唐草」などの読者には意外かもしれないが、山岸凉子の才能を再認識させる。コミカルな中に巧みな心理描写が織り込まれていて、思わず読みふけってしまった。未読の方には、ぜひお勧めしたい。

 れにしても、何かを覚えていると思ったら、その大半がまんがで読んだことであるのは、喜ぶべきか悲しむべきか。自分の教養の80%くらいがまんがだというのも問題だな。

 れも古い作品ながら、「ホモホモ7」(みなもと太郎)を再読した。中学の時に若木書房版のコミックスを学校に持っていって、「エロ本を読んでいる」と言われたこととがあったな。ああ平和な時代だった、としみじみ。大阪万博なんか出てきて、若い読者には有史以前の話だろうな、と思う。出てくる風俗はさすがに古いが、実験的な手法は今のギャグまんがの先駆を示している。復刻版(さくら出版)では「作画グループ」のクレジットがないのが気になった。解説はいしかわじゅんが書いている。

 マンガ夜話」でおなじみのいしかわじゅんだが、「イエローカードに気をつけろ!」1巻をやっと手に入れた。発売が95年だから、五年もの間どこにも見かけなかったのがすごい。よほど刷り部数が少なかったか、買った人が誰も古本屋に売らなかったかのどちらかだろう(この本もまんがではなく、スポーツ本のコーナーで見つけた)。サッカーにはまったく興味がないので、内容はよくわからない。プロレス4コマと同じノリであるのは確かだが。Jリーグもこの頃は盛り上がっていたんだなあ。ところで、2巻は出ているのだろうか。

 んがではないが、安永航一郎のカットにつられて買った、中村うさぎの「女殺借金地獄」が笑った。見栄と意地の二本立てで、ブランド品からエステ、怪しい宗教グッズまで、見事な浪費日記である。月にカードで450万も遣ったり、酔っ払ってケツの穴を見せたり。これはもう、捨て身の芸、というヤツだね。西原理恵子もバクチで家建てるくらいの金を失ったというが、それくらいの根性がなければいけないな、と小心者でケチな自分を反省する。この本は現在「だって、欲しいんだもん!」というタイトルで角川文庫から出ている。続編に「だって、買っちゃんたんだもん!」があり、小説では「家族狂」(表紙は井上三太)などがある。ファンタジイ作家としては知られているらしいが、そのジャンルはあまり読まないので、私は知らなかった。週刊誌の記事によれば、結婚して買い物依存症もおさまっているらしいが、残念なことである(本人にすれば大きなお世話、なんだろうな)。

 とても熱中して、今は少し離れているが、それでも新作が出ると気になる作家が何人かいるが、倉多江美もその一人である。「お父さんは急がない」(プチフラワーコミックス)は夫婦と姉妹の4人家族の日常を淡々と描いている。変わっているのは、父親が棋士であることで、いい年をして四段どまりであるのも、味がある(ぼやぼやしてると塔谷どころかヒカルにも先越されちまうぞ、と言いたくなる)。「ジョジョの詩」や「ドーバー越えて」の頃、二十歳そこそこだった作者が、今は母親となり、おそらくは作品のように子供も成長しているのだろうと考えると、何ともいえない感慨がある。男性作家だと、本人と作品が別個である気がして、そういった違和感はないのだけれど。

 村千歌の「パジャマ・デート」が終わった(全7巻)。飲んでグータラ寝ているのが幸せ、という男女のお話。いいですね、こーゆー生活。新作の「ずるずるマイラブ」では不倫なんかやってるけど、基本的にナマケモノのキャラクターが好きだ(自己弁護してるみたいだな)。まあしかし、生きていくというのはいろいろあって、「ダーリンを探して」(陸奥A子)は離婚後の女、「Home Sweet Home」(五十嵐浩一)は妻に先立たれた男が主人公で、家族や仕事、子供の教育と悩みは多い。これまた同世代として、共感できる。もっとも、男3人の共同生活ってのは、実際にはあんなに美しくはない(1人は失業中で一日中ゴロゴロしてるし)。

 回苦労したのは、ふだん使っているPC-98のワープロソフトが潰滅して、漢字変換ができなくなったことである。あまりに昔のものなので、入れ直そうにもモノがない。パソコン音痴の私は、へたに触ると火でも吹くんじゃないかと、怖くていじれない。少しは勉強になるかと思って、毎日コミュニケーションズから出ているコミックスを続けて読む。

 林健次の「壊れた人たち」はパソコンにまつわるおかしな人々を描いた短編集。300万かけて購入したMac Uciと周辺機器が、今では仕事場の隅で埃をかぶっているというコメントがおかしい。

 う1冊は星里もちるの「モチはモチ屋」。こちらは作者自身のパソコンにはまりこんだ体験を描いている。星里もちるはかなりヘビーなマックユーザーである(マック検定B級を取得しているくらい)。どのようにまんがにコンピュータが使われているかを具体的に説明してくれていて、わかりやすかった。寺沢武一みたいに「どーだ、CGだぞ!!」というようなまんがはちょっと苦手だけれど、フツーの作品でどう生かされているのかは興味がある。高橋しんもやってくれないかな。

 誌は読まないと公言している私だが、『ビッグコミックスペリオール』で始まった「孫がゆく! −孫正義物語−」(原作・鶴岡雄二/画・永松潔)は注目している。それというのも、主人公と私は中学校の同級生だからだ。ウチらの学年は12クラスもあったから、ほぼ無関係ではあったが。ひとつだけ覚えているのは、生徒会選挙のときクラスの奴を担いで運動したことがあって、その対立候補が安本(と当時はいっていた)だったのである。結果は安本が当選した。人望があったんだろうな。あれから30年近くたって、まんがの中で再会するとは。子供の頃助けてやったカメが、ガメラになって帰ってきたような……違うか。

 ー、なんとか書き終わった、と喜んでいるところへ、元同居人がやって来て、「名探偵コナン」(27巻まで)、「金田一少年の事件簿」(22巻まで)、「サイコメトラーEIJI」(5巻まで)を置いていった(最近ミステリーに凝っているらしい)。ありがたいけど、これを読めというのか。よーし、毒を食らわば皿までだ。読んでやろーじゃねーか。

 ゆーことで、私のまんが喫茶開店への道は着々と進んでいる。

               <(もしかしたら)つづく>


参考文献
●まんが
No 作者 作品名 出版社 コミックス
01-C001 大和和紀 にしむく士(さむらい) 1-4 講談社 KC Be-Love
01-C002 浦沢直樹 20世紀少年 1-2 小学館 ビッグコミックス・スピリッツ
01-C003 和泉かねよし 和泉かねよしの世界 1
バクレツ! 大和撫子
- 小学館 フラワーコミックス
01-C004 和泉かねよし傑作集 3
秘密の花園
-
01-C006 逢坂みえこ 火消し屋小町 1 小学館 ビッグコミックス・スピリッツ
01-C007 山岸凉子 メタモルフォシス伝 - 秋田書店 秋田文庫
01-C008 みなもと太郎 ホモホモ7 1-2 さくら出版 -
01-C009 いしかわじゅん イエローカードに気をつけろ 1 集英社 -
01-C010 倉多江美 お父さんは急がない - 小学館 プチフラワーコミックス
01-C011 木村千歌 パジャマ・デート 1-7 講談社 KC mimi
01-C012 ずるずるマイラブ - KC Kiss
01-C013 陸奥A子 ダーリンを探して 1 集英社 YOU コミックス
01-C014 五十嵐浩一 Home Sweet Home 1-3 少年画報社 ヤングキングコミックス
01-C015 若林健次 壊れた人たち - 毎日コミュニ
ケーションズ
-
01-C016 星里もちる モチはモチ屋 - 毎日コミュニ
ケーションズ
-
01-C017 鶴岡雄二
永松潔
孫がゆく
−孫正義物語−
- 小学館 『ビッグコミック・
スペリオール』連載中


●本
No 作者 作品名 出版社
01-B001 内田勝 「奇」の発想 - 三五館
01-B002 西村繁男 さらばわが青春の『少年ジャンプ』
さらば、わが青春の『少年ジャンプ』(加筆)
- 飛鳥新社
幻冬舎文庫
01-B003 ダン・シモンズ ハイペリオン(四部作) - 早川書房
01-B004 中村うさぎ 女殺借金地獄(おんなごろしカードのじごく)
だって、欲しいんだもん!(改題)
- 角川書店
角川文庫
01-B005 だって、買っちゃったんだもん! - 角川書店
01-B006 家族狂 - 角川書店
角川文庫

Created by Kenichi Muraishi
Arranged by Shigeto Hojo