ヒグマの生態と習性
■ ヒグマの体型と成長
ヒグマは本州に住むツキノワグマなどに比べて、格段にその体が大きく、またオスはメスよりも一回りも大きい。ところが、生まれたばかりのヒグマは400g ほどで人間よりもはるかに小さい。したがって大きいオスのクマでは出生時の体重の1000倍にもなる。生後から成獣となるまでの頭胴長や体重の変化は次の表の通りである。
| 頭胴長 | 体重 |
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| 出生時 | 25-30cm | 400g |
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| 3ヶ月 | 50-60cm | 4Kg |
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| 1年 | 100-120cm | 40Kg |
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| 成獣 | ♂200-230cm ♀160-180cm | 400Kg 200Kg |
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0歳から1歳までの幼いクマは、まだ親離れできずに母グマにつきまとい、よく甘える。顔は丸く、体重も40Kgに満たないほどである。2歳を過ぎると、親離れを始める。また、動作も敏捷になり、オスとメスとで体格に差がついてくる。4歳になるとすでに成獣であり、オスは顔つきが骨ばって精悍になる。メスはオスほどの体の大きさにはならず、顔つきも丸みを帯び、オスに比べてやさしい顔をしている。オスは5歳、メスは8歳ほどで成長は鈍る。なお、ヒグマの寿命は約20〜30年である。
■ ヒグマの食性
ヒグマは雑食性の動物である。すなわち、時に応じて場所に応じて自由にその食性を変え、臨機応変の食生活をすることができる。しかし本来は肉食であり、場合によっては共食いもする。
ヒグマはサケを好物としている。サケが川に登る季節になると、ヒグマは岸に腰を据えて、泳いできたサケを素早く爪で引き上げるのである。また、浅瀬に座り込んでサケを岸辺にすくい上げたりもする。だが、現在北海道でサケが遡上する川はほとんどなくなったので、こういった光景はほとんど見られない。
ヒグマが墓地を掘り起こしたという話もある。明治37年7月、当時の砂川村1号線4線の共同墓地にヒグマが現れ、土葬した8個の墓を掘り起こし、死体を引きずり出した。またこの年の9月には、滝川村の共同墓地と屯田兵墓地の墓を30個も掘って、そのうち5体を喰った。その他にも数例、墓地を荒らしたという話が残っている。
■ ヒグマの冬ごもり
ヒグマは冬になると長期間穴にこもり、いわゆる「冬ごもり」をする。穴の中ではほとんど身動きせず、脈拍や呼吸数も減少する。しかし気温の変化とともに体温が下がるカエルやヘビなどの冬眠、同じ哺乳類でありながらある一定温度まで体温が下がるシマリスやヤマネなどの冬眠とは違う。ヒグマの冬ごもりはクマ型冬眠と呼ばれ、わずかな音やにおい、ちょっとした刺激にも目を覚ます非常に浅い眠りである。このためヒグマの場合、あまり冬眠といった言い方をせず、冬ごもりと言う場合が多い。ヒグマの冬ごもりは、エサの不足と寒さを逃れる保身の習性であると考えられている。本州に生息するツキノワグマや、アメリカクログマ、懐妊中のホッキョクグマなども冬ごもりをする。
ヒグマは11月下旬までには冬ごもりをし終える。穴から出るのは3月下旬から4月の中旬までであり、仔連れのヒグマは5月初旬である。したがってヒグマは4ヶ月以上もの間、エサを食べずに生き延びる。さらにメスはこの間の1月下旬から2月初旬に出産し授乳に耐えるのだから、体力を消耗する。実際、ヒグマは春になるとかなり体重が減ってやせてしまう。冬ごもりの前後では体重の25%から30%も減少する。このためヒグマは秋には貪欲な食欲でエネルギーを蓄える。
ヒクマの冬ごもり穴はほとんどは見つけにくい所にある。一般に起伏に富んだ傾斜面の疎林で植生の繁茂した所に存在する。方角的には東の向きに作られることが最も多い。穴の大きさも、大人がゆっくりと入れるものから、やっとのものまで様々である。また、穴口は常に開口している。このため、風向きによっては数m先の人間を察知することができる。穴の周辺の数mまで接近した時はすでに気づかれていると思った方がよい。
時々、春に山に入った人間が偶然にも穴に近づき、ヒグマに襲われるといった事件が起こっている。これはヒグマにとって、自分たちの領域やその仔たちを守るための行為であり、この時人間を襲うのは主に母グマである。
■ 春グマと夏グマ
ヒグマは4ヶ月以上もの間冬ごもりをするため、夏に比べて春のクマは著しく体力、腕力が低下している。したがって春グマに襲われたのと夏グマに襲われたのでは、被害が全然違う。素手にクマと戦って退散させた話、逆に深手を負わせた話などが時として記録に残っているが、これらのほとんどは春グマであったと考えられる。
■ ヒグマの出産
ヒグマの出産は前述してあるとおり、1月の下旬から2月の初旬にかけて行われる。この時期は冬ごもり中の時期でもある。生まれた仔には死産や直後の死亡なども考えられるが、母グマは本能的にそれらを食べてしまう。すなわち穴の中の仔の数は実際の産仔数とは限らない。
ヒグマの産仔数はふつう2仔であり、次いで多いのが1仔、3仔の順になっている。それ以外の多仔出産はほとんどない。クマの祖先がイヌに発しているのに産仔数が少ないのは、冬ごもり穴での過酷な環境での飼育、母体の体力の消耗などが理由に挙げられる。
■ヒグマの縄張り
ヒグマの縄張りを知るためには、まずヒグマの行動範囲を知る必要がある。これについてはヒグマを捕まえ、麻酔で眠らせている間に発信機をヒグマに装着させ、再び放すという追跡調査が行われており、かなりのことがわかってきている。それによるとヒグマの行動範囲は非常に広く、活発なヒグマで約150平方Km、時には1日で50Km ほど移動することもあるという。したがって大雪山に生息するヒグマが北見くらいまで移動することは十分に考えられる。最近になって、千歳近郊に生息する発信機をつけたあるヒグマが、その行動範囲において国道や高速自動車道をまたいでいたということもわかった。
ヒグマは群生せず、普段は単独で行動する。2頭以上のヒグマがそばにいるのは、たいていまだ親離れできない仔グマを連れた親子である。ただ、5月から7月にかけての発情期には雄グマが2〜3頭、雌グマを追って歩くことがある。また、ヒグマは同じ地域に2頭以上生息することはほとんどないと考えられている。その根拠としては、多数ヒグマが生息してもおかしくないほど食べ物が豊富な山でも1頭しか生息していない事実が挙げられる。
Last update: 97/10/14