つい先日まで暑い日がつづいていましたのに、雨が降るたびに涼しくなり、いまではすっかり秋も深まりました。そんなこのごろに、BGMのようにしっとり聴いていたい1枚が、ギレリスの弾くグリークの抒情小曲集です。ギレリスのタッチは、この前、ブラームスの協奏曲でふれた「ヌルッ」としたモラヴェツとは丁度対蹠的な、硬く切れ味の鋭い技巧を示します。「鋼鉄のタッチ」と呼ばれていました。実際、このグリークの小品集でも、そうした巨匠の芸風を、充分に楽しめる内容になっています。
作品自体に冷やっこさのあるグリークの音楽に、優しく上品に感傷的な輝きを示すギレリスの指使いは、ぴったりと来ます。響きに冷涼感を帯びながらも、音楽の芯には、ほっこりと温かなものが潜んでいる。そんな感じがします。選曲にも、最初の曲「アリエッタ」と終曲にそのワルツの変形である「余韻」を置いているなど、工夫を凝らしている。その間を各々の小品が作品番号順ながら個性的に際立つようにこの音楽のアンソロジーを編んでいます。ギレリスを知る大切な1枚でもあります。
●参考CD
○グリーク:抒情小曲集(抜粋)
・ギレリス(ピアノ)(Deutche Grammophon) →♪amazon.co.jp