このごろ、グールドのCDをよく聴いています。定評あるバッハの録音群ではなくて、私の好きなのは、ブラームスの間奏曲集と、ベートーヴェンのバガテル集、それからバード&ギボンズの作品集の3枚です。なかでもブラームスは、作曲者の晩年の小品を中心に集めたものなのに、グールドの解釈は韜晦さのない、むしろ艶っぽさを具えたロマンティックなもので、親しみやすい内容です。孤独に酔い痴れる、うっとりとした表情があるのに、臭みにならないところもグールドの奇才ぶりとも思う。
ベートーヴェンの、作品33と作品126のバガテル集は、愉悦の漲る明るい解釈です。先のブラームスとは、作品自身のそもそもの性格が大いに異なることもありますが、このピアニストによるそれぞれに個性的な演奏も、その対照を際立たせてもいましょう。しかし、いずれにも孤独を愉しむ情趣のあるのは、グールドらしいなと思います。それと、バード&ギボンズ。この、バッハ以前の音楽も心地よい。物悲しくも機知に富む味わいがある。モダンなピアノを、グールドが操ってこその魅力でしょう。
これら3枚は、いずれも小品群を味わい深くまとめあげたもので、気軽に聴けます。グールドと言えば、バッハの重要な録音群はどうしても落とせないのですが、聴き通すのに少し根気がいる。それに、バッハに関してモダンのピアノで弾かれたものなら、バックハウスやケンプ、アラウといったひとたちの録音に、より私には惹かれるものがあります。グールドの偉大な録音群が定盤的な位置を占めてしまっているので、そういうことへの天邪鬼のような気持ちも、私のなかにあるのかもしれません。
ちなみに、グールドの録音群は、SONYの"THE GLENN GOULD EDITION"の企画で大方揃いますが、ブラームスの間奏曲集に関しては、下記に紹介した盤をお薦めしたく思います。4つのバラード作品10を併録。LPのオリジナルによったジャケットがカッコイイから。紙製のケースで畳む形になっています。私はEDITIONの盤を持っていながら(2枚組で更に2つのラプソディ作品79を収録)、後発のこれも買った。いずれもオーストリア製のSBMリマスタ盤で、音質上の差異は感じられません。
●参考CD
○ブラームス:間奏曲集(10曲)、4つのバラード 作品10
・グールド(ピアノ)(SONY SMK87859) →♪amazon.co.jp
○ベートーヴェン:バガテル集 作品33&126、他
・グールド(ピアノ)(SONY SM2K52646 2枚組) →♪amazon.co.jp
○バード&ギボンズ 作品集、他
・グールド(ピアノ)(SONY SMK52589) →♪amazon.co.jp