巨匠、カルロ・マリア・ジュリーニが、つい先日、91歳で亡くなりました。その追悼の意を込めて、この2、3日、この指揮者の録音を棚から取り出して、聴き返しています。マーラー、ブルックナー、それぞれにジュリーニらしい悠然としたスケールの大きな演奏が聴かれ、深い感動を得ることができますが、私はそのモーツァルトの解釈も好みます。「ドン・ジョヴァンニ」、「フィガロの結婚」などの歌劇もよし、レクイエムも、特に1978年のEMIのものは、峻厳な風格でゆったりと聴かせる傑作でありました。
そうしたなかかで、モーツァルトの最後の交響曲を2つ収めたDeccaにある1965年の、ジュリーニの壮年期の録音は、案外、聴き漏らされているものではないでしょうか。この指揮者らしい、生真面目で厳格な造形、殊更にモーツァルトの憂いを強調しない、しかし武骨にならず、気品の漂う演奏に仕上がっています。優美というのとも少し違うけれども、しなやかな歌い口を具えた佳演だと思います。ベートーヴェン以降、ドイツ・オーストリアの交響曲に連なる、その系譜の初めを感じさせもしました。
ジュリーニの録音を聴き始めたのは、私はそんなにむかしのことではありません。イタリアの指揮者なのに、カリッとしたリズムのキレがなく、華やかさもない、ドイツ人のやるよりも、荘重なその音楽作りが、若いころの私には少々、苦手でした。いまでも、晩年のSONYに入れた録音群は遠ざけていますが、これらもそろそろ聴きなおしてみないといけないと感じ始めています。そうした前に、ジュリーニの逝ってしまったこと、偉大であったこの巨匠に対して、礼を欠いたことであったと思っております。
ジュリーニの録音で、好きなものをほかに挙げていくと、DGにあるシカゴ響とのドヴォルジャークの8番の交響曲、ウィーン・フィルとのブラームスの交響曲全集などがあります。たっぷりと歌い込む、ドヴォルジャークのその解釈は、数多くある同曲の録音群のなかでも、一際、私のお気に入りのものなのですが、ウェブ上の店で調べても見あたらず、廃盤の様子です。EMI、SONYにも、ジュリーニはこの前後に同じ交響曲を録音していますが、このDGの録音も追悼盤として復活を願いたいものです。
追記(2005/10/05):Deutche Grammophonのジュリーニ/シカゴ響のドヴォルジャークの交響曲第8番が国内盤にて再発売になっているとの情報をいただきました。下記にamazon.co.jpでの商品をリンクします。
●参考CD
○モーツァルト:交響曲第40番ト短調K.550、41番ハ長調K.551「ジュピター」
・ジュリーニ指揮、ニュー・フィルハーモニア管(Decca) →♪amazon.co.jp
○モーツァルト:レクイエム ニ短調K.626
・ジュリーニ指揮、フィルハーモニア管、同合唱団、ドナート(ソプラノ)、ルートヴィッヒ(メゾ・ソプラノ)、ティアー(テノール)、ロイド(バス)(EMI) →♪amazon.co.jp
○ドヴォルジャーク:交響曲第8番ト長調作品88、シューベルト:交響曲第4番ハ短調D.417「悲劇的」
・ジュリーニ指揮、シカゴ響(日ユニバーサル(原盤Deutche Grammophon)) →♪amazon.co.jp