●No.586 スッペ:序曲集(カラヤン/BPO)。(2005/01/01)

 新年の音楽といえば、ウィーン・フィルのワルツが思い出されますが、私の聴き初めは、スッペの序曲集でした。最近、廉価で再発売されたカラヤン指揮、ベルリン・フィルのものです。私はこの盤、LP期にも持っていなくて、CDでも今回、初めて買ったのですが、これは楽しい。1969年という、この指揮者とオーケストラのコンビが豊麗ながらも、引き締まった音色を出していた時期の録音で、見てくれは軽い小品であっても磨き抜かれた極上のエンターテイメントに仕上がっています。すこぶる、おもしろい。

 スッペ(Franz Suppe 1819〜1895)は、オッフェンバックの影響を受けて、初のウィンナ・オペレッタを書いたオーストリアの作曲家で、このジャンルで名を馳せるJ.シュトラウス2世の先駆けとなる存在なのですが、いまでは、その喜歌劇全曲を聴く機会は多くないようです。主に、「軽騎兵」や「詩人と農夫」序曲などが、コンサートの前菜に添えられるくらいでしょう。いや、カラヤン盤のような序曲を集めたものですら、現役の指揮者のなかでも、録音しているひとの名を、私は思い出すことができません。

 ライト・クラシックとして、軽くあしらわれているのでしょうかね。けど、こうした軽い曲こそ、何度繰り返しても飽きを来させない風格のある演奏に仕上げるのには、指揮者、オーケストラともに名人の腕前と懐の深さが求められると思います。単に巧みなだけでは、こうした機知のある味わいは出てこない。カラヤンとベルリン・フィルのコンビは、完璧な機能美を誇るものというのではなくて、ときに意気軒昂と華々しく、ときに妖艶なしなりを示しながら、まろやかにブレンドされた粋な響きを堪能させてくれます。

 しかし、序曲ばかりが有名で、というのは、考えてみるとゲン担ぎとしては、どうかというところもあるかもしれませんな。元旦、「軽騎兵」序曲のファンファーレでケイキよく始まってみたものの、年始の抱負も数日で萎えてしまい……ああ、いけません。また、正月からネガティヴな含みのオチを持ってこようとしてしまう。このCDは、毎月、気にとめて聴きかえしてみたいものと思います。少し気分の萎えたときのカンフル注射のように。車のなかで聴くのにも、なかなかノリもよくて、楽しい1枚かもしれません。

●参考CD

○スッペ:序曲集[「軽騎兵」、「ウィーンの朝、昼、晩」、「スペードの女王」、「美しきガラテア」、「怪盗団」、「詩人と農夫」]
・カラヤン指揮、ベルリン・フィル(日ユニバーサル(原盤Deutche Grammophon) UCCG-9554) →♪amazon.co.jp

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スッペ:序曲集 [LIMITED EDITION]
スッペ:序曲集 [LIMITED EDITION]