●No.572 ドヴォルジャーク:ピアノ独奏曲全集(ヴェセルカ(pf))。(2004/08/12)

 ドヴォルジャークのピアノ独奏曲については、以前、インナ・ポロシナの弾いたものにふれながら、「もう少し知名度があってもよさそうな気もします」と、私の意見を書きました。ミニチュアの組曲の形式のものばかり、技巧的に平明な印象を与えるところから軽んじられているのかもしれません。ドヴォルジャークの研究家として著名なオタカル・ショウレックによる評伝のなかでも、「ピアノだけのためのドヴォルジャークの音楽は、絶対音楽の群への短い補遺としてだけ論じられるであろう」とあります。

 「それらは大体において、その成り立ちから偶然的なものであり、室内楽曲あるいは交響的作品におけるドヴォルジャークの作品の巨大な優位性とは全くくらべられないのである」ともある。「ドヴォルジャークの直接的表現の魅力をもったものがないとか、あるいはそれらがその領域においてチェコ音楽にまじめな寄興をなしていないなどと言おうとしているものではない」と、そのあとにショウレックは書き添えていますが、優先の度合いとしてかなり下位におく表現であることにはかわりありません。

 例えばシベリウスのピアノ小品に舘野泉さんが光を当てたように、ドヴォルジャークについても邦人ピアニストのなかでそんなかたが出てこられてもいいと、私は思います。懐かしくもあり幻想的でもある抒情を漂わせた楽想を持つ愛らしい小品群は、確かに指まわりの技巧を凝らしたものではないけれども、跳躍する民俗的なリズムの合間に内省に耽るその表情の機微に、繊細なタッチの彩りの変化を求めもします。外見はシンプルに見えて、奥の深い、彫り込み甲斐のある音楽だと思いますよ。

 そうは言っても、ドヴォルジャークのピアノ独奏曲全集のCDは、クヴァピルのものもポロシナのものも、一般に手に入りやすい状態と言えず、これらの曲を知らしめたい気持ちのありつつも口惜しく思っていたところ、ステファン・ヴェセルカの弾いた5枚組が廉価BOXで発売になりました。1995年から99年にかけての新しい録音です。民俗的な情趣を大切に、明瞭なピアノを聴かせます。「なるほど、もう少し知名度のあってしかるべき音楽だな」と、必ずや、共感いただけるものと思っております。

 追記(2006/10/14):米ESS.A.Yにあったポロシナのものが、米Brilliant Classicsから全集として箱物で発売になっています。価格も廉価です。下記に挙げておきます。

●参考CD

○ドヴォルジャーク:ピアノ独奏曲全集(2つのメヌエット 作品28 B.58/ドゥムカ ニ短調 作品35 B.64/主題と変奏 変イ長調 作品36 B.65/3つのアルバムのページ/8つのワルツ 作品54 B.101/2つのフリアント 作品42 B.85/4つの牧歌 作品56 B.103/題名のない作品(4曲)/6つの小品 作品52 B.110/ドゥムカとフリアント 作品12 B.136・137/2つの真珠 B.156/詩的な音画 作品85 B.161/8つのユモレスク 作品101 B.187/6つのマズルカ 作品56 B.111/影絵 作品8 B.98/ポルカ ホ長調 B.3: Tempo di polka/スコットランド舞曲集 ニ短調 作品 41 B.74: Vivace/ユモレスク 嬰ヘ長調 B.138: Vivace/即興曲 ニ短調 B.129: Allegro scherzando/組曲 イ長調 作品98 B.184/2つの小品 作品 posth. B.188)
・ヴェセルカ(ピアノ)(香港NAXOS 8.505205 5枚組) →♪amazon.co.jp
・ポロシナ(ピアノ)(米Brilliant Classics 5枚組) →♪amazon.co.jp

※参考文献:オタカル・ショウレック著、渡鏡子訳「ドヴォルジャーク 生涯と作品」(音楽之友社)

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Dvorak: Complete Solo Piano Music (Box Set)
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