しばらく管弦楽作品の話題がつづいたので、室内楽をとりあげてみます。ドヴォルジャークの12番「アメリカ」、ボロディンの2番、ベートーヴェンの15番、ハイドンの「5度」、「皇帝」を収録したコンコード弦楽四重奏団の演奏の2枚組。全部、弦楽四重奏曲ですね。クラシックに馴染まれる順序としては、オーケストラがまず入り口になるのが一般的でしょう。「ゲンガクシジュウソウキョクなんて、ツウになってから聴くもんでしょ」なんて遠ざけているかたに、私からお薦めしたいのがこのアルバムです。
また、「ハイドンとベートーヴェンはともかく、『アメリカ』やボロディンの2番なんて、俗っぽくていまさらですワ」と、フフンと鼻を鳴らすかたにも、まあ、このコンコード弦楽四重奏団の演奏で聴いてみてくださいと。アメリカの団体で、録音年はハイドンが1978年、ドヴォルジャークとボロディンが1979年、ベートーヴェンが1983年から翌年にかけてのものです。1972年にデビューした団体だそうですが、現在も活動しているのか否か、録音についても、これのほかにあるのかどうか、私は知りません。
この録音の年代になると、ヨーロッパの弦楽四重奏団は、そろそろ鋭利でモダンな感覚に洗練されてきて、それはそれとして味わいなのだけれど、アト・ホームな寛いだ気分が薄らいできて、寂しくもあるのですね。バリリ、ウィーン・コンツエルトハウスの風雅な芳しい香りがウェラーまでで終わって、ラサール、アルバン・ベルクのトーンの系譜が主流になってくる。チェコでもヴラフやヤナーチェクまで、スメタナ四重奏団になると、土臭さは希薄になります。いま、プラジャークが注目されていますが。
アメリカのこのコンコード弦楽四重奏団は、麦藁の匂いのフワンと立ちのぼるふうな、懐かしい歌い口が楽しめますよ。ドヴォルジャークがアメリカでホームシックにかかったとき、スピルヴィルという田舎を訪ねたところ、故郷を想わせて喜んだと伝えられていますが、そんな土地の農民が睦みあいながら奏でる風情があります。そのいわくの「アメリカ」もすてきですが、ボロディンの2番の人懐こい表情が絶妙です。無論、素人ぽい技巧の粗さはありません。ハイドン、ベートーヴェンもユニークです。
●参考CD
○ハイドン:弦楽四重奏曲第76番ニ短調作品76の2「5度」、同第77番ハ長調作品76の3「皇帝」、ベートーヴェン:同第15番イ短調作品132、ドヴォルジャーク:同第12番ヘ長調作品96「アメリカ」、ボロディン:同第2番ニ長調
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