●No.564 ドヴォルジャーク:チェロ協奏曲(デュ・プレ(vc)/バレンボイム/CSO)。(2004/07/01)

 ハイドンとドヴォルジャークには、奇妙な符合がありますよね。芸術家といえば、まず、奇人変人、一般社会とはどこか馴染まない性格が箔になるふうに思われるイメージのある、実際、著名な作曲家にあってもそうした人物の多いなかで、このふたりは陽気で社交的、屈託のない穏やかな、気のいい親爺のイメージがある。ハイドンは吝嗇家で、ドヴォルジャークはSLマニアであったという話も伝わっていますが、この程度のことは他愛のないものでしょう。それからあとひとつは、結婚に関すること。

 ハイドンは、最初、惚れていた床屋の娘が修道院に入ってしまい、その姉と結婚しました。相当な悪妻であったふうな伝が残っています。ドヴォルジャークは、最初、ある女優に惚れて歌曲集「糸杉」(交響曲第1、2番のころの作、まだ無名の田舎の楽士です)を献呈しようとしたけれどもフラれてしまい、その妹と結婚しています。姉は貴族の政治家に嫁ぎました。しかし、奥さんとなった妹は良妻賢母となり、将来、名を成すこの作曲家もまた、優しい夫であったとドヴォルジャークの伝記に見られます。

 さて、ここにそのハイドンとドヴォルジャークのチェロ協奏曲を収めた1枚のCDがあります。ハイドンは同種の作品の複数あるうち、ハ長調のものです。英国の女流名チェリスト、ジャクリーヌ・デュ・プレの独奏、指揮は夫君であったバレンボイム。ふたりの結婚が1967年でハイドンの録音は同年、ドヴォルジャークは1970年とありますから、熱い時期ですね。特にドヴォルジャークでは、デュ・プレの情熱的な独奏を、バレンボイムがシカゴ響をたっぷりと鳴らし支えながら、音楽が昂揚していきます。

 デュ・プレはその後、28歳で多発性硬化症にかかり、闘病の末42歳で亡くなりました。バレンボイムのその間の事情は書きますまい。因縁めいた録音ですね。ふたりの作曲家、チェリスト、指揮者。才能溢れる個性が結びついて、見事な音楽を生んでいるけれど、良き夫か良き妻かという統計は凡庸な者と変わらないという集約のようです。ちなみに、ドヴォルジャークは晩年のこの協奏曲のなかで、かつての歌曲の一節を用いています。バレンボイムは、妻の棺の上に花をひとつおいたそうです。

●参考CD

○ドヴォルジャーク:チェロ協奏曲ロ短調 作品104、ハイドン:同 ハ長調 Hob.VIIb:1※
・デュ・プレ(チェロ)、バレンボイム指揮、シカゴ響、イギリス室内管※(EMI) →♪amazon.co.jp→♪amazon.co.jp(4枚組)

Home
Dvorak & Haydn:Cello Conccertos [FROM US] [IMPORT]
Dvorak & Haydn:Cello Conccertos [FROM US] [IMPORT]
Jacqueline du Pre Concerto Collection [FROM US] [IMPORT]
Jacqueline du Pre Concerto Collection [FROM US] [IMPORT]