●No.542 チャイコフスキー:交響曲第1番「冬の日の幻想」(ティルソン=トーマス/ボストン響)。(2004/01/24)

 「むかしはもっと雪が降ったもんや」「地球温暖化、ゆうことやな」というのが、近年のこの時季に聞きなれた街中の会話でしたが、この冬は厳しいですね。雪も多く降ります。まだしばらく、この季候はつづきそうです。先ほども私は、犬を連れて裏の畦道を歩いておりました。マフラーで覆っても刺すような痛みが顔を襲い、「この雪が融けて、野草の育つ日が早く来ればいいのに」と、憂鬱な気分でした。そうしていま自宅に戻り、チャイコフスキーの交響曲第1番「冬の日の幻想」のCDを聴いています。

 ティルソン=トーマスがボストン響を振った1970年の録音で、この指揮者のデビュー盤でもありました。若々しい才気煥発、効果的なテンポの振幅を織り込みながらも粘らず、鋭く明快な音楽を愉しませます。曲想の演出のためか、録音に若干のエコーを施してもいますが、音像の輪郭が甘くなることはありません。有名な後期の3曲ではなく、第1番という知名度では一段落ちる作品をデビュー盤に取り上げるあたりも、この指揮者のヤンチャクレな性格を示しているようで、おもしろくもありますね。

 この交響曲は、作曲者、チャイコフスキーにとっても、ぺテルブルグ音楽院終了後、いよいよ本格的に世に問おうとした、大作としてはデビュー作品であったろうと思います。しかし、後に大作曲家と呼ばれる者にありがちな逸話として、やはりこの曲も、音楽院の恩師から厳しい批判を受けました。第2楽章の夢見るふうな楽想や、終楽章に現われるロシア民謡「トロイカ」風の主題など、一度聴けば記憶に残る親しみ易さを持ち、むしろ、後期の3曲よりも入りやすい音楽だと私は思うのですけれども。

 凍てた畦道を踏みしめ、第1交響曲の旋律を口ずさみ、「幼い自分の身の丈からは、同じかさでも、いまよりむかしの雪が多く見えたというのもあるやろな」とも考えました。私の膝の高さもない、前を歩く犬が−彼女も相当な歳ですが−残雪を食みながら、私の取る紐を引きます。かまくらや雪だるまに、むかしは私も興じたものです。毎日がデビューの気持ちでありたいと思いつつも「しかし、雪は食えん」と、幼年期の「冬の日の幻想」に遊ぶ散歩道でした。吠える犬に急かされ、ついていきました。

●参考CD

○チャイコフスキー:交響曲第1番「冬の日の幻想」ト短調作品13、ドビュッシー:管弦楽のための「映像」
・ティルソン=トーマス指揮、ボストン響(独Deutche Grammophon 463 615-2) ♪amazon.co.jp

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Tchaikovsky: Symphony No 1; Debussy: Images / Michael Tilson Thomas [FROM US] [IMPORT]
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