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(野並皮膚科)
ダニのいる家は不潔なのですか?
患者さんを診察している時に
あなたの家には,ダニがいるかもしれない
と説明すると,多くの人は不愉快そうな顔をします。なかには
私の家は,ダニがいるほど不潔ではない!
とおこりだす人もいます。日本人は,ダニの存在は不潔と短絡的に考えているひとが多
いようです。しかし,日本の風土気候では清潔不潔に関係なく,大なり小なりダニが発
生しているのが現実です。ただし,ダニには種類があり,ダニという言葉で一括するの
は問題があります。
ダニの種類は約2万種あるとされていますが,臨床的に問題となるのはそのなかの一
部です。以下に書いてみます。
・ヒョウヒダニ 体長 0.2-0.5mm アトピー性皮膚炎のアレルゲンとして重要。
・ツメダニ 体長 0.1-0.8mm 人を刺すダニ。たたみ,じゅうたんに発生。
・イエダニ 体長 0.7mm ネズミの巣などで繁殖。人を刺す。
・シラミダニ 体長 0.1mm 昆虫に寄生して繁殖。人を刺す。
・ヒゼンダニ 体長 0.4mm 疥癬。人の皮膚に寄生して繁殖。かゆみ強い。
・ニキビダニ 体長 0.4mm 人の顔面の毛包内に生息する。
・ツツガムシの幼虫 体長 0.3-0.8mm 幼虫に刺されるとツツガムシ病が発生。
・マダニ 体長 数mm--1cm 人に寄生して吸血。感染症を媒介する。
重要なダニについてさらに詳しく述べてみます。
☆ヒョウヒダニ
アトピー性皮膚炎,鼻炎,喘息の重要なアレルゲンのひとつです。たたみ,じゅうた
ん,ふとんなどによく発生します。体長は,0.2-0.5mmで,ほこりのような色をしてい
ますので
肉眼的に確認することは,まず無理
と思われます。従って自分の家のダニの有無を自分で判断することは不可能と考えられ
ます。自分でほこりを集めて,顕微鏡で確認すれば可能ですが,そこまでやる人はめっ
たにいません。日本の通常の家のほこり集めて顕微鏡で調べると,ほとんどかならずヒ
ョウヒダニはみつかります。
日本の家でダニのいない家は存在しない
といっても言い過ぎではありません。また,ヒョウヒダニはダニ駆除剤で100%駆除
するのは不可能とされています。
ヒョウヒダニは人を刺したりはしません。従って,このダニによって,いわゆる虫さ
されのような症状は生じません。健常なひとの場合,
ヒョウヒダニがいても,全くなんの症状もでない
わけです。ところが,アトピー性皮膚炎の患者さんの場合は,ヒョウヒダニのアレルゲ
ンにより,症状が悪化するのです。
☆ツメダニ
ツメダニは都会に住む人が最もよく遭遇する害虫のひとつであるといえます。東京都
江戸川区内衛生害虫相談(江戸川保健所,昭和59ー61年)では,相談266例中,
181例(約68%)がツメダニによるものでした。ツメダニは,たたみ,じゅうたん,
ふとんに発生しやすいとされています。症状としては,腹部などにいわゆる虫さされ様
の皮疹が複数生じます。
新築したばかりだから,ダニなど発生するわけがない!!
と反論する人もいますが,調査によっては,ダニの発生は築1ー3年が最も多いという結果が報告されてい
ます。新築だからダニなどいないとは言えないわけです。臨床的に,ツメダニ虫刺症が疑われた時,不思議なのは
必ずしも家族全員に症状がででいるわけではない
ということです。総合病院の皮膚科に受診する患者さんは,内臓の病気の結果,皮疹が
生じているのではないかと考えて受診する人が結構多いように思われます。それらの患
者さんにとっては,「家族に同様の症状を持つ人がいない」ということは,「自分の症
状はダニなどの虫さされによるものではなく内臓の病気によるものだ」という主張の重
要な根拠になるようです。ダニアレルギー(ダニの存在を極度にきらう神経症)の人も
困りますが,逆にダニの存在を根拠もなく否定する人も大変困ります。「ツメダニ虫刺
症の場合,家族の1部の人間にのみ症状がでる場合がある」ということを,そのような
患者さんに納得してもらうのは,非常に困難な場合があります。皮膚科専門医テキスト
などの教科書には,それらのことについて何も書かれてないのです。
私なりにその原因を推理してみました。
(1)特定の個人が使用するふとん,たたみのみにダニが発生している。
(2)たたみ,じゅうたんに,じかによくねころがる人のみがダニに刺される。
(3)ツメダニにさされやすい人とさされにくい人がいる。皮膚の厚さ?しめりけ?
(4)ツメダニにさされた後,発赤して反応する人と,反応しない人がいる。
(5)そもそも虫刺症ではなく,他の病気である。
(4)について補足しておきます。ツメダニに刺されたあと,なぜ赤くなるのかについ
は,よくわかっていないようです。これに対して,蚊に刺された後に赤くなるメカニズ
ムについては研究されています。蚊に刺された場合は,蚊が何か毒物を人体に注入した
結果赤くなるのではなく,蚊が吸血した時に蚊の唾液が微量に人体に残り,この唾液に
人体がアレルギー反応をおこし赤くなるとされています。アレルギー反応ですから,蚊
に刺された場合の症状のでかたには,かなりの個人差が認められます。これと同じで,
ツメダニに刺された場合も,おそらく人体のアレルギー反応により赤くなるのだと推察
されます。従って,ツメダニに刺された場合,赤くなる人と,赤くならない人にわかれ
ることになるわけです。
なお,どうしても自分の症状がツメダニ虫刺症と納得できない人は,保健所で家のほ
こりを調べてもらうのがよいでしょう。顕微鏡で,ツメダニがたくさん見つかれば,納
得せざるをえないでしょう。
☆ヒゼンダニ(疥癬)
ヒゼンダニは,ツメダニのように人を刺すのではなく,人の皮膚に寄生して人体に害
を与えます。ヒョウヒダニやツメダニのように,たたみやじゅうたんで繁殖するのでは
なく,なんと人間の皮膚で増殖するのです。体長は 約0.4mmなので,肉眼で確認するこ
とはできません。症状としては,かゆみが非常に強く,外陰部の紅色丘疹,結節,指間
の線状疹などが特徴的です。感染力が比較的強く,家族も発症することが多いです。従
って
家族全員が同時に治療をうける
のが原則とされています。診断が確定すれば,特効薬が存在しますので,老人施設など
で大流行しないかぎり,治療は比較的容易です。湿疹,虫さされ,痒疹などと誤診され
て,ステロイド外用薬をぬっていては,いつまでたっても治りません。
間違っても漢方で治療したりしてはいけません
慢性痒疹などと称して,漢方で治療するのは,愚の骨頂です。疥癬の場合は,なにより
も診断が大切なのです。
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