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花咲町店のメニューは、未だに開発途中。
新たな料理を思いつく度にとりあえずメニューに加えてみます。
しかし全てが成功するとは限りません。「これは美味い!」と
自信マンマンでメニューに加えても、お客様に気に入ってもらえ
なければいつのまにか消えていくものあります。
ホットドック(3個入りで美味しかったのに・・・)、ドックパスタ
(ホットドックとナポリタンがのっててお得だったのに・・・)、
チートロ(メニューから外した途端、チートロを偲ぶ声が多数・・・)
そしてコンソメスープ。
しかし、このコンソメがメニューから消えたのには訳があります。
コンソメスープを始めた頃、あるご家族のお客様が足繁く通って
くれていました。
そのご家族の小学生の坊ちゃんは、かなりコンソメに惚れこんでいて
いつもメニューを見る前に「俺コンソメスープ〜!」と何よりも先
にご注文頂いていました。その頃のコンソメスープはまだ開発途中で、
市販のコンソメを少し入れていました。しかし、ボクはコンソメスープ
がやってくると、目を輝かせて一気に飲み干し、至福の表情を浮べて
「美味かった〜♪」と満足げ。マスターもその飲みっぷりを嬉しそうに
眺めて「やっぱり味のわかるお子さんは違うな」と頷いていました。
忙しくてブイヨンが底をつきそうな時でも、ボクの為にだけはコンソメ
を作ってあげる程、マスターの中ではお気に入りのお客様でした。
ある時、マスターは「あのボクの為に本当のコンソメスープを飲ませて
あげたい」と言い出し、今まで使っていた市販のコンソメをやめて、
天然スープにこだわったコンソメスープに作り方を変更しました。
私は「そこまで材料と手間のかかったスープにしちゃったんだから、少しは
値上げしないと『ウチは趣味の店じゃない!』ってママに怒られるよぉ〜」
と必死でマスターを説得しましたが、マスターはかたくなに「味は美味しく
値段はそのまま」という意見を曲げないため、しょうがなく今までどおり
の値段で続けることに。コンソメスープは売れば売るほど損するので、
私はなるべくこのオーダーが入らないことを祈りました。
それから間もなくして、マスターお気に入りのボクが来店。いつものように
「俺コンソメスープ〜!」とボクが言うのを確認すると、まるで恋人に料理
を作ってやっているような笑顔でコンソメスープを作り始めたマスター。
いつもは無愛想に私に料理を渡すくせに、何故か自分でボクの元にコンソメ
スープを運んで行きました。
ボクはいつものように目を輝かせて一気に飲み干しました。が、その直後
顔色が曇り、「ちがーう!これいつものと違うんだよ〜」と。
厨房から覗いていたマスターは「そうでしょー、今度のコンソメは今までより
も美味しいでしょ?オジサン頑張っちゃった」と得意げにボクに説明してま
した。説明を聞いた後、ボクは静かに一言「オレ、前のがいい」。
マスターは何度も「前の?」と確認した後、市販のコンソメ入りのスープに
わざわざ作りなおしてボクのところに持っていきました。
恐る恐る飲んでみるボク・・・とたんに顔を輝かせて「これこれ!これが美味い
んだなぁ〜!」マスターがとっても気の毒になりました。
「あの坊主・・・何もわかっちゃいねぇ・・・」。ものすごーく寂しい表情でこう
呟いたマスター。
マスターのコンソメスープに捧げる情熱はあっけなく消え、メニューに書かれた
コンソメスープという字に私が横線を引くまでに、時間はかかりませんでした。
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