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以前カレーのお客様のお話をしましたが、それに匹敵する位、
なんとなく憎めなくて、未だに忘れられない方です。
その日は、団体のお客様が1階で楽しく会食されていました。
その楽しげな雰囲気が窓に映り、引き込まれてしまったのか、
1人の一見普通の中年の男性のお客様が入店。
お1人なので、その団体様のお隣のちょっと小さめの席にご案
内して、オーダーもすんなり頂いて、調理にかかった時です。
なにやら客席から、大きい声で誰か歌いだしたのです。
私は、団体様の歌かなぁと気にとめていませんでしたが、
料理を出しに行った時びっくり。歌っていたのは1人でお越し
の、先ほどのお客様だったのです。
立ち上がって、誰に向かって歌っているのか分からない方向に
向かって熱唱。しかもちょっと涙目。すっかり歌に入り込んでる。
私は隣の団体様にお詫びをし、そのお客様に話し掛けました。
私:「お父さん、御飯できましたよ。座ってください」
(食べていれば静かになると思ったので)
お父さん:「ぃや〜だ!」
その返答に、私は一瞬たじろぎました。再びお父さん熱唱。
私は優しく肩を叩き、無理やり座らせようとしたのですが、
その手を振りほどき、ますますお父さんの歌はヒートアップ。
しょうがなくマスターを呼びましたが、マスターはチッと舌打ち。
お前がなんとかしろっていう意味です。
私はマスターに心の中で「くそジジイ」と悪態をつき、再びトライ。
私:「御飯冷めちゃいますから、先に食べちゃいましょう」
するとお父さんは、急に涙を浮かべて、私の手を握ってきました。
お父さん:「ア、アイコ〜!」
そう絶叫すると、私にしがみついて来ました。これにはさすがに
私もびっくりして、振りほどこうとしましたが、お父さんは
「アイコ〜!」を連発し、全然離れてくれません。
そこでやっとマスター登場。マスターはしっかりお代を頂いた後、
出口までご案内というか、押し出しって感じでお送りしました。
その間もそのお父さんは、私に向かって「アイコ〜!」と絶叫。
アイコと言う人とお父さんがどういう関係か分かりませんが、その
後、そのお父さんがアイコさんと出会えたらいいなぁと思いました。
好きな人にあそこまで呼ばれたら、私もまんざらじゃないのですが、
私はアイコじゃないので、嬉しくなかったです。
ちなみに、そのお父さんの歌っていた歌は演歌っぽかったのですが、
曲目は不明です。演歌は知らない方じゃないので、自作なのかな。