ホームへ 前ページ 次ページ
.

俳句の部屋

.

2004年

.

とまりたる枝のくらりと寒雀
モンローの如く恋猫登場す
ふるさとの訛りは抜けず木の芽和へ
鼻の先焦がして君と野に遊ぶ
桜蘂ふる婚礼の帰り道
夢醒めて老犬とゐるおぼろかな
母よりの白きうつはのさくらんぼ
一日を終へて色増す桐の花
うそかくす胸に花挿すころもがへ
幼子の臀を並べし夜店かな
みどりごを受けしタオルの火照りかな
蚊遣火の消えて闇夜となりにけり
島巡る旅の終わりの凌霄花
坂登り来て門前の心太
ままごとのやうに向き合ひ秋刀魚食ふ
忘れたきことありて立つ花野かな
包む手の中に風あり冬薔薇

.

2003年

.

福寿草雪の明かりを纏ひけり
ビル映す水の都や冬の月
春ショール平和の文字のビラ配る
むず痒き象の背中や春うれひ
雲ひとつ浮かんで居りし春の旅
思春期の卵抱く子や桃の花
風うけて酢の香をこぼす夏暖簾
をさな児を抱ゐて祭の中に入る
西日差す廊下の隅の古ミシン
親の名を一字もらひし墓洗ふ
小旗持つガイド離れず赤蜻蛉
天高し雲ふりはらふ伯耆富士
まぼろしの朱鷺となりけり島の秋
草屋根の煙ひとすぢ鰯雲
三辻を折れて秋澄む道の神
燈は秋の白壁映す水面かな
墨染の池に靄たつ浮寝鳥
人気なき畠に声聞く冬木立

.

2002年

.

春待つや母の便りの丸き文字
相寄りて祈るがごとき寒鴉
山深き里の日溜り蕗の薹
雨音の地に吸はれゆく焼野かな
月細き夜の鞦韆の揺れ止まず
波光る春の名残の佐田岬
一途なる鄙の暮らしや白牡丹
うす目してまた眠る子や聖五月
梅雨の夜や文字の欠けたる電光板
時計草遠く港の見える丘
ふるさとの空広かりき夏休み
あの雲の下がふるさと送り盆
時止めし湖底の村や曼珠紗華
十六夜の長き廊下を照らしけり
空掘りに茶の花こぼれこぼれゐる
凩や湖東の浜に来てゐたり
湯あがりの髪に星降るクリスマス
陽だまりの中に下り立つ冬の蝶

.

2001年

.

木洩れ日の中に音あり寒雀
眠る子のおしろい匂ふ雛祭り
すれちがふ猫の足音春寒し
春眠やみるくの海を漂うて
衣擦れの坂登り来る春の闇
石垣の影揺れ止まず花篝
遠足の列の乱れる河童沼
ぼうたんの漂うてゐる朝ぼらけ
髪赤き馬上の君よ風薫る
まつすぐに田を駆け上る夏嵐
炎天や異国の宙に月昇る
朝顔の庭より母の訪へり
背の子の寝息静けし天の川
うるはしき母さくさくと西瓜くふ
子供らの輪の欠けてゆく盆の月
妻の手をまた煩はせ秋刀魚焼く
並び来て肩に触れゆく赤蜻蛉
父の背のふといとほしき秋の風
父母の出会ひし村や星流る
コスモスや母となる子の白帽子
十月の風に見つけし蝶ひとつ
ふるさとの空のあをさや曼珠紗華
まだあをき檸檬を絞る君とゐる
山の端にあをぞら残す谿紅葉
煮凝や下駄の音する母の里
短日や吉備路の丘に塔の影
いづこより風の音する十二月

.

2000年

.

着メロや押しくら饅頭餡零れ
影深き光射すなり水仙花
我が影の土に消えゆく冬夕焼
島を縫ふ航跡淡き春茜
母知らぬ身にほろ苦き菜飯かな
亀鳴くや母より届くE−Mail
春光やショーウインドウの続く道
過ぎし日や兄の形見の桃の花
またたきて黒土ぬぐふ蛙の目
さいはての波のうねりの海市かな
春潮に足を濡らせし伊良湖岬
ふるさとの訛り行き交ふ宵祭り
差し伸べし掌におののくや蛍の火
地の底に海鳴り閉ざす蟻地獄
新涼や坂下りてくる猫のバス
母の手を包みて白き萩の花
色鳥や妻の紅茶のかをりたつ
剃傷を創りし頬に秋の風
のびすぎた髪切ってみる文化の日
暁の狭霧は島を被ひけり
カトレアの部屋お喋りな孫と居る
熱燗ややうやく馴れし妻の愚痴
皺深き顔撫でてゐる冬至の湯

.

1999年

.

元日や川面に風の道見えて
ふらここのすれちがふとき匂ふとき
下萌やゆらゆら縄文の道辿る
カリヨンが時告げてゐる遍路道
丸き山つらなり合うて春日和
啓蟄の庭掃く音に目覚めけり
手に取りて黒土匂ふ蕗の薹
春昼や窓開け放つ太子堂
ワープロの余白の広き春の燈
人混みの表参道花の冷え
ふらふらと妻の自転車夏来る
父の日や路地の奥より木遣り唄
色町の遅き朝餉や冷奴
夜の海や母の水着のほの白き
秋立つや淡き紅ひく観世音
稲妻や七堂伽藍立ち揃ふ
落人の谷の棚田の稲架高し
放たれし馬の眼の爽やかに
ハイといふ林檎受く手のふれにけり
塵と化すわれにこぼれよ寒昴
竜の玉弾けて眩し女坂
人の世を哀しと思ふ千年紀
ほのぼのと汐の香匂ふ百合鴎

.

1998年

.

蜜柑むく手を追ふ吾子のおちょぼ口
祖父の言ふ初恋のひと雪女郎
袖まくり顔洗ひけり春隣
ふらり出てけふも帰らず猫の恋
たんぽぽのゴマ和へだけどサラダ味
卒業を迎へて吾子の髪を切る
陽炎を踏み石橋をわたりけり
燕来る素顔の朝のジャスミン茶
春耕や青い帽子の研修生
走る娘の足の白さや柿若葉
スカートをふはり広げて蓬摘む
なりたての姉は世話好き子供の日
二の腕の黒子気にする更衣
掬ふ手のか細き指や恋蛍
揚げ花火見合ひ話もうはのそら
滝の音みどりの峪を治めけり
水打つや終の一杓足濯ぐ
あかあかと島の陽沈む合歓の花
ひとり居や丸く爪切る河童の忌
丸刈がスイカ頬張る古写真
送り火や手翳す母の頬朱し
ふるさとの校舎静けし天の川
ゆふぐれて帰る家なき案山子かな
けむり立つ吉備路の空や花芒
秋の灯や猫が寄り添ふ影法師
小鳥来て母の暮らしを告げ行けり
返り咲く焦土に赤き木瓜の花
潮騒のわづかにきこゆ今朝の冬
ぼやかれてのらりくらりの鮟鱇鍋

.

1997年

.

紫陽花や優しき雨を手に受ける
炎天や孤高の楡に雲生るる
五つ六つ藁焼く煙秋の風
曼珠沙華手折れば沁みる秋の空
秋暑し喫水高き巨大船
秋高し虚空に入るや鳩の群
煌々と予備校の窓根深汁
数へ日となりて故郷の文届く
山茶花のためらはず散る憎さかな
ゆきずりの犬と別れて冬の月
呼び合ひし声埋もるる火事の跡

.
.
先頭の行へ次ページ
.