(当たり前の技術も見る方向を変えれば、新たな発見が・・・)

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1.オームの法則とエジソン
   オームの法則をバカにしていはいけません。素心知困です。

2.コヒーラ
   絶滅種となったデバイスだが、現在でも甦る可能性が。

3.スイッチング電源装置(特許明細書もどき)
   枯れはじめた技術だが、新しく切り口を開けば瑞々しい。

4.TM・・・タグチメソッド(特許明細書もどき)
   会社で研修を受けた方も多いと思います。



 
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1.オームの法則とエジソン
 オームの法則は単純な乗除算式で表現されるので覚えやすい。このオームの法
則は、電気の分野ではきわめて初歩的な知識であり、ここで改めて説明するのも
憚られるほどである。鼻っ柱の強い電気屋さんにオームの法則のことを尋ねたら、
それこそ鼻からあしらわれるかも知れない。それほど今では初歩的な知識とされ
ている。

 しかし、初歩的な知識ほど重要である。オームの法則を頭で理解することはた
やすいかも知れないが、これを応用に結び付けられるように理解することは、意
外に難しい。

 オームの法則を良く理解し、それを見事に応用したのが、かの有名なエジソン
であった。エジソンの偉業の一つに電灯事業がある。電灯事業が成り立つために
は、不特定多数の需要家に対して電力を安定に供給できることが必要である。今
ならば、それが可能なことは疑う余地もないが、同時の学者たちは、その可能性
をこぞって否定していた。否定の論拠は2つあった。

 まず、発電機の発電電力は一定である。この発電機から供給される一定電力は、
すべての電球に分配される。このため、たとえば電球の数が2倍になれば、個々
の電球に分配される電力は半分に減ってしまう。これに伴って個々の電球の明る
さも半分になってしまう。電球の数が4倍になれば、個々の電球への分配電力は
1/4に減ってしまう。発電機からの供給電力が電球の数で分割されてしまうか
らである。そうでないと、エネルギー保存の法則にも反する。したがって、不特
定多数の需要家に対して電力を安定に供給することは不可能であるとされていた。

 次に、送電線にはその長さに応じた電気抵抗が介在する。オームの法則による
計算では、送電線の抵抗による電力の損失が非常に大きく、末端の需要家にたど
りつく途中で大半の電力が失われてしまう。仮に、送電線の抵抗による損失を支
障無きところまで低減させようとすれば、送電のために莫大な量の銅が必要にな
って、経済的にとても引き合わないとされていた。

 上の2つの論拠はいずれも理論的に正しく、オームの法則もそれを裏付ける。

 しかし、エジソンは、その否定の根拠となっていたオームの法則を逆手に取る
ことで、不可能を可能にした。すなわち、当時の学者たちの念頭にあったのは、
せいぜい10V程度の低い電圧であった。これに対し、エジソンは、当時として
は予想外の100Vという高電圧を使うことで、送電線の抵抗による電力損失の
問題を見事に克服した。

 また、発電機の発電電圧を一定に保つことで、その発電機に接続される電球の
数にかかわらず、個々の電球に供給される電圧が一定に保たれるようにし、これ
により個々の電球にて消費される電力も一定に保たれるようにした。こうして、
エジソンは、不可能とされていた電灯事業を見事に実現させたのである。

 エジソンが電灯事業を実現させるためにやったことは、今となって見れば、き
わめて当り前のことであって、大したことがないようにも思える。しかし、エジ
ソン以外は誰も不可能であると思い込んでいた当時のことを鑑みれば、やはり大
変な偉業であったと言わざるを得ない。その偉業を成した背景には、彼の類希な
発想力に加えて、彼のオームの法則に対する深い洞察があったことを認めざるを
得ない。


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2.コヒーラ

 コヒーラとは:
 コヒーラは、真空管もトランジスタもない、無線通信の黎明期に活躍した高周
波検出器である。当時使われていたコヒーラは、ガラス管の中に金属紛(ニッケ
ル紛)を充填して両端に電極を設けたものである。

 金属紛は2つの電極の間に閉じ込められている。ガラス管内の金属紛粒は互い
に接し合っているが、各金属紛粒の表面はそれぞれ電気絶縁性の薄い酸化皮膜で
覆われているため、両端の電極から直流電圧を印加しても電流は流れない。

 ところが、その電極から高周波電圧を加えると、金属紛粒間の絶縁が高周波電
界の刺激によって破られ、電極間で電流が通じるようになる。これを「コヒーラ
効果」と言う。

 このコヒーラ効果は高周波電圧を印加したときだけ生じる。つまり、コヒーラ
は高周波の有無によって電気を通したり通さなかったりする一種のスイッチとし
て動作する。したがって、コヒーラを使って高周波の有無を検出することができ
る。この高周波検出機能が無線電波の受信に利用されていた。

 比較的最近、と言っても1950年代の話であるが、コヒーラを使ったラジコ
ン(無線操縦)の玩具があった。ラジコンと言っても、今のように精巧なもので
はなく、玩具の自動車に仕組まれたモータと電池の間にコヒーラを直列に介在さ
せただけのものであった。
 リモコンには、ブザーを使った電気火花式の電波発信器が使われていた。今な
らば雑音電波発生器と言うべき代物である。この雑音発生器とも言えるリモコン
から放射された電波にコヒーラが感応すると、そのコヒーラを通して電池からモ
ータに電流が供給される。これにより、玩具の自動車を無線操縦で動かしたり止
めたりすることができる。
 このシステムで無線操縦できる範囲はせいぜい数mだが、当時は玩具の自動車
が電池で動くこと自体が珍しかったので、それは見たときは、子供ながらにも大
いに驚嘆させられ、後日何度も夢に見たほどである。

 コヒーラ効果の応用例:

 高周波検出器としてのコヒーラは使われなくなったが、その原理であるコヒー
ラ効果は今でも利用されることがある。たとえば、スイッチの接触不良をコヒー
ラ効果で防止するという技術がある。

 普通の手動スイッチ、たとえばスナップ型のスイッチでは、電流の導通路を開
閉操作する可動接点をバネの反発力で勢い良くパチンと動かして固定接点に当接
させている。このため、接点の表面に薄い酸化皮膜があっても、それを突き破っ
て電気的接触をなすことができる。スライド式のスイッチでは、可動接点を固定
接点に強く押し付けながらスライド(摺動)させることにより、接点表面の酸化
皮膜を強引に擦り取って電気的接触をなすことができる。また、たとえば100
Vといった比較的高い電圧の電流を開閉するスイッチでは、その高い電圧により
接点表面の薄い酸化皮膜を絶縁破壊して電気的接触をなすことができる。

 しかし、接点に加わる機械的な接触衝撃が小さいソフトタッチのスイッチで、
数ボルトの低電圧電流を開閉させるような場合は、接点表面の薄い酸化皮膜がそ
のまま絶縁皮膜として接点間に介在しまうことにより、しばしば接触不良を生じ
る。この接触不良は再現性が悪く、突発的に発生する。これが原因の故障は非常
に厄介である。調子が悪いということで修理に出しても、そのときには異常が現
れず、故障として発見できないことが多い。異常無しということで戻され、その
後しばらく鳴りを潜めていたかと思ったら、ここ一番という肝腎なときに再発し
たりする。使う側に取っては腹立たしいことこの上ない。修理屋泣かせでもある。
 厄介きわまる接触不良であるが、その問題の解決にコヒーラ効果がヒントとな
る場合がある。

 本来のコヒーラ効果は、ガラス管内に充填されている金属紛が高周波刺激によ
って導通化する現象である。ガラス管内の金属紛粒はそれぞれに電気絶縁性の薄
い酸化皮膜で覆われているため、通常は電気を通さないが、高周波電圧を加える
ことで金属紛粒間に電流が通じるようになる。

 この現象は紛粒でなくても生じる。つまり、見かけ上は接触しているが、その
間に薄い酸化皮膜が介在しているために電気的に絶縁状態にある一対の接点間に、
高周波電圧を印加すると、その高周波電圧の刺激により接点間の絶縁状態が破ら
れて電流が通じるようになる。すなわち、接点間にてコヒーラ効果による導通化
現象が生じる。
 こうしていったん電流が通じた後は、高周波電圧を取り去っても、その通じた
電流の勢いで通電状態が維持される。したがって、高周波電圧は接点の接触時に
瞬間的に与えるだけでよい。高周波を印加するということで使いにくい面もある
が、厄介な接触不良の防止策として捨て難い技術である。電子楽器のキーボード
で実際に使われたことがある。


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3.スイッチング電源装置(特許明細書もどき)

   目的および作用効果・・・パワートランスを小さくする
   構成ヒント・・・バケツとスプーン
【発明の名称】スイッチング電源装置

【特許請求の範囲】
 電力を水に見立てた場合に、その水をサーバーから負荷へ移す容器として、
バケツよりも十分に小さなスプーンを用いるとともに、そのスプーンによる水の
搬送ピッチを大幅に速めるようにしたことを特徴とするスイッチング電源装置。

【技術分野】
 スイッチング電源装置は、たとえば、テレビ受像機やパソコン(パーナルコン
ピュータ)の組込電源、ACアダプターの外付け電源、さらにはモータ電源やバ
ッテリ充電器など、広範囲に使用されるにいたっている。このスイッチング電源
装置の技術的な背景とポイントを切り口を変えて解説する。

【技術的背景】
 テレビやパソコンなどの電子応用機器は、その主要部がIC(集積回路)化さ
れた半導体電子回路で構成されている。半導体電子回路の多くは、たとえばDC
5Vといった低い電圧の直流電源で動作する。VTR(ビデオ・テープ・レコー
ダ)やCD(コンパクト・ディスク)再生装置では記録媒体の駆動にモータ類を
使用するが、このモータ類も半導体電子回路に合わせて、たとえばDC5Vとい
った比較的低圧の直流電源で動作するものが使用されている。

 一方、一般家庭のACコンセントに配電されている商用電源は、周波数50H
zまたは60Hzの交流(AC)で、その電圧は100V(あるいは200V)
と高い。このAC電源(AC100V/200V)でテレビなどの電子応用機器
を動作させるためには、そのAC電源から所定電圧(たとえばDC5V)の直流
電源を作り出す電源装置が必要である。

 この電源装置として、従来は、パワートランス、整流器、平滑コンデンサ、お
よび電圧安定化回路よりなる直流電源装置が一般に使用されていた。この装置は、
50Hz/60HzのAC100V電源をトランスで所定電圧に変圧(降圧)し
たのち、整流器で直流に整流し、平滑コンデンサでリップル(脈動波形)を低減
させる。これを電圧安定化回路を通して負荷(電子回路)に供給する。

 電圧安定化回路は直流出力電圧を安定化させるためであって、通常は、直流出
力経路にパワートランジスタを直列に介在させるとともに、そのトランジスタを
介して出力される直流電圧が所定の基準電圧となるように、そのトランジスタの
導通状態をフィードバック制御するように構成されている。この安定化回路は、
電圧変動であるリップルの除去にも有効である。

【解決すべき課題】
 しかし、上述した電源装置では、その構成部品の中で、パワートランスと平滑
コンデンサの占める割合が異常に大きくなってしまうという問題があった。とく
にパワートランスは重量および体積が大きく、しかも他の部品に比べてかなり高
価であり、このことが電源装置の軽量化、小形化、低コスト化を阻んでいた。

【解決手段】
 上記問題の解決手段として登場したのが、以下に述べるスイッチング電源装置
の技術である。
 この技術のポイントは高周波パワートランスの使用にある。装置全体の動作概
要は、交流電源をいったん直流に変換したのち、高速スイッチング処理によって
高周波パルス電流を生成する。この高周波パルス電流を高周波パワートランスの
一次コイルに通電させると、二次コイルに高周波起電力が誘導される。この高周
波起電力を整流および平滑して直流出力電圧を得るとともに、この直流出力電圧
が所定の目標電圧となるように、上記高周波パルス電流のパルス幅をフィードバ
ック制御する。

【構成例】
 典型的なスイッチング電源回路の主要部分は、入力側整流器、出力側整流器、
入力側平滑コンデンサ、高周波パワートランス、パワーMOSトランジスタ、P
WM回路(パルス幅変調回路)、フォトカプラなどで構成される。

 入力側整流器はAC100V電源を直流に整流する。この直流は入力側コンデ
ンサで平滑されたのち、高周波パワートランスの一次コイルに供給される。この
一次コイルにはパワーMOSトランジスタがスイッチング素子として直列に介在
させられている。このパワーMOSトランジスタは、PWM回路から与えられる
一定周波数(たとえば100kHz)の高周波パルス信号 により、高速でオン
/オフ動作させられる。これにより、高周波パワートランスの一次コイルに高周
波パルス電流が通電されて、その二次コイルに高周波起電力が誘導される。この
高周波誘導起電力が二次側整流器で直流に整流され、さらに二次側コンデンサで
平滑されのち、直流出力電圧として負荷に供給される。

 このとき、その直流出力電圧はフォトカプラを介してPWM回路に、電圧検出
信号としてフィードバックされる。PWM回路は、その電圧検出信号が所定の目
標値となるように、高周波パルス信号のパルス幅を変化させる。このパルス幅変
化は、パワーMOSトランジスタのオン期間とオフ期間の比いわゆるデューティ
比の変化となり、このデューティ比変化は一次コイルの通電率の変化となり、こ
の通電率変化は二次コイルに誘起される高周波起電力の大きさの変化となって現
れ、最終的に直流出力電圧の大きさに反映する。これにより、直流出力電圧は、
PWM回路にフィードバックされる電圧検出信号が所定の目標値となるように安
定化させられる。

 PWM回路を動作させるためには直流電源が必要である。この直流電源は、高
周波パワートランスの磁性コア(鉄心)に上記二次コイルとは別に第2の二次コ
イルを巻き、この第2の二次コイルに誘導される高周波起電力を整流器とコンデ
ンサで整流・平滑して得る。ただし、二次コイルに高周波起電力が誘導されるの
はPWM回路が動作を開始してからである。したがって、AC100V電源を投
入した直後は、まず、PWM回路の動作を開始させるための起動電流が必要とな
る。この起動電流を得るために、AC100Vから整流・平滑される直流電流(
DC140V)の一部を、抵抗(起動抵抗)で電圧ドロップ(降下)させながら
PWM回路に与えるようにしている。

【作用効果】
 このスイッチング電源装置の技術的ポイントは、前述したように、高周波パワ
ートランスの使用にあるが、これが電源装置の小形・軽量化と低コスト化にどの
ような理由で有効なのかを説明する。

 パワートランスは、一次コイル、磁性コア(鉄心)、二次コイルの3要素で構
成される。一次コイルに電流(励磁電流)を流すと磁界が生じる。この磁界は磁
性コアで二次コイルに導かれる。これだけでは何も起きないが、一次コイルの電
流が変化すると、二次コイルに導かれる磁界が変化する。この磁界変化が二次コ
イルに起電力を誘導する。

 50Hz用の低周波パワートランスの場合、一次コイルに周波数50Hzの励
磁電流を流すことにより、毎秒50周期で変化する交番磁界が生成される。この
交番磁界が磁性コアで二次コイルに導かれることにより、その二次コイルに毎秒
50周期で変化する交流起電力が誘導される。

 ここで、仮に毎秒100Wの電力を一次コイルから二次コイルへ伝達させる場
合を考えてみる。50Hzの低周波パワートランスの場合、100Wの電力は、
毎秒50回の磁界変化による電磁誘導によって伝達される。これを1回あたりの
伝達量に換算すると、2W(=100W/50Hz)になる。この場合、トラン
スは、毎秒100Wの電力を伝達させるために、1回の磁界変化で2Wの誘導起
電力を生じさせるだけのパワー伝達容量が必要となる。

 一方、100KHzの高周波パワートランスだと、100Wの電力は、毎秒1
0万回の磁界変化による電磁誘導によって伝達される。これを1回あたりの伝達
量に換算すると、わずか0.001W(=100W/100KHz)にしかなら
ない。この場合、トランスは、毎秒100Wの電力を伝達させるために、1回の
磁界変化で0.001Wの誘導起電力を生じさせるだけのパワー伝達容量があれ
ばよい。これは、50Hzの低周波パワートランスと単純に比較した場合、20
00分の1の大きさにしかならない。実際には、発熱や効率等も考慮しなければ
ならず、計算通りには行かないが、少なくとも、同じ電力を伝達させる場合では、
高周波パワートランスの方が、低周波パワートランスよりも、小形・軽量化およ
び低コスト化の面で大幅に有利となる。

 この低周波パワートランスと高周波パワートランスの違いは、バケツとスプー
ンの違いにたとえることができる。すなわち、低周波パワートランスでは、定量
の水を定時間で移すために、大きなバケツで一度にたくさんの水(電力)を運ぶ。

これにより、比較的少ない運搬回数(たとえば50回/秒)で水を移すことがで
きる。これに対し、高周波パワートランスでは、スプーンで少しずつ水を運ぶ。
その代わりに、単位時間当たりの運搬回数(たとえば10万回/秒)を多くする
ことで、同じ量の水を定時間で移す。ここで、トランスのパワー伝達容量に相当
する運搬容器の大きさに着目するならば、バケツよりもスプーンの方がはるかに
小さくてすむ。

 このように、高周波パワートランスを使用したスイッチング電源装置は、主要
部品であるパワートランスの大幅な小形・軽量化と低コスト化が可能である。こ
れゆえに、高周波パルス電流をいったん生成しなければならないといった諸々の
面倒があるにもかかわらず、現在広く普及するにいたっている。

・補足(ヒント)

・・スプーンよりも小さな耳かきは使えるか?
 高周波パルス電流の周波数をもっと高くして、たとえば10MHz(=10,
000KHz)くらいにしたら、スプーンを耳かきに変えるように、トランスを
さらに小さくすることができるか?

 理論的にはできる。しかし、理論は必ずしも現実とはならず、いろいろな制約
が出てくる。たとえば、パワーMOSトランジスタのスイッチング動作が追いつ
かなくなる、電流をオン/オフする度に生じるスイッチング損失が目立ってくる、
高速スイッチングにともなう電磁波ノイズが多くなる、などの弊害が現れてくる。
こういった弊害は徐々に改善されつつあるが、上述した形式のスイッチング電源
装置では、せいぜい1MHz(1,000KHz)くらいまでが、実用的に可能
な範囲である。それ以上はまた新たな技術が必要となる。この新技術としては、
ここでは説明しないが、たとえば電圧共振制御の技術がある。

   ・・・「バケツとスプーン」の比較は多少誇大で、厳密に定量すれば「バ
       ケツと柄杓」あるいは「柄杓とスプーン」くらいになるかも知れ
       ない。でも、この辺りは比喩としてご理解願いたい。最近は「柄
       杓」をご存知ない方もおられるようだし。

・・トランスについて
 トランスの二次コイルには磁界変化による誘導起電力が生じるが、この起電力
の電圧/電流比は、一次コイルと二次コイルの巻数比で定まる。これにより、両
コイルの巻数でトランスの変圧比を設定することができる。このように、トラン
スは変圧器とも呼ばれているように、電圧を高くしたり低くしたりする変圧装置
(電圧変換装置)としての機能を有する。

 しかし、トランスには今一つ重要な機能がある。それは、入力側(一次コイル)
と出力側(二次コイル)間を電気的に絶縁して分離させるという機能である。こ
れをアイソレーション(isolation)と呼んでいるが、このアイソレーションが確保
されないと、感電や漏電の危険を生じる場合がある。たとえば、AC100Vを
DC5Vに変換して出力する電源装置において、AC100Vの入力ラインとD
C5Vの出力ライン間でアイソレーションが確保されていないと、DC5Vの出
力ラインおよびこの出力ラインに接続されている電子回路や配線のどこかに人体
が触れたときに、DC5Vではなく、AC100Vに感電してしまう。

 トランスでは、電力伝達が磁気を媒体にして行われるので、一次コイルと二次
コイル間を電気的に絶縁・分離させるアイソレーションを簡単に行うことができ
る。このトランスのアイソレーション機能は、変圧の機能に劣らず重要である。
最近は、そのアイソレーションを主目的にしてトランスを使う場合も多い。

 上述したスイッチング電源装置にて、電圧検出信号をPWM回路にフィードバ
ックさせるのにフォトカプラを使っているが、これもアイソレーションを確保す
るためである。


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4.TM・・・タグチメソッド(特許明細書もどき)

 TMとは元青山学院大学教授の田口玄一氏が発明した新製品開発の「考え方」
である。
【発明の名称】TM・タグチメソットヘ

【特許請求の範囲】
 開発目的とする製品の機能を実現させるのに必要な基本機能を抽出し、
 この基本機能について耐ノイズ性を確立する第1段階と、
 耐ノイズ性が確立された基本機能を特定の製品に適合化させる第2段階とを、
 それぞれ独立して行なう。

【技術分野】
 新製品開発の考え方に関し、主に形の有るモノが対象となるが、ソフトウェア
などの無体物も対象となり得る。

【従来の技術】
 従来の新製品開発方法では、まず、目的とする新製品を理論に基づいて設計し
試作する。この試作品を試験動作させて不具合の有無を検証する。試験動作は実
際の使用状態を想定し、それにできるだけ近い条件を与えながら行なう。このた
め、試作品もできるだけ実物の製品に近付けて作る。

 検証の結果、何の不具合も見つからなければ、そこで開発は完成ということに
なって、たいへんにめでたいことであるが、通常はなにがしかの不具合が見つか
る。不具合が見つかったら、その原因を特定して試作品を修正する。そして、こ
の修正した試作品を再び試験動作にかけて、不具合が是正されたか、あるいは別
の不具合が生じていないかを、再度検証する。

 このように、従来方法では、理論に基づいて設計した試作品について、試験動
作→不具合検証→原因特定→修正といったフィードバックを繰り返しながら、最
終的に安定な製品に収束(チューニング)させることを行なっていた。

【発明が解決しようとする課題】
 しかしながら、上述した技術には、次のような問題のあることが本発明者(T
M)によってあきらかとされた。

 すなわち、試作品には多くのパラメータ要素が集積されており、しかも各パラ
メータ要素は相互に作用し合っている。試作品に現れる不具合は、多くのパラメー
タ要素が複雑に絡み合って生じることが多く、このことが不具合の原因特定を著
しく困難していた。なんとか原因を特定して是正のための修正を施しても、今度
はその修正によって別の不具合が現れる。このような不具合でも、それを次々に
是正して行くことで、最終的に安定な製品への収束に至ればよい。

 しかし、現実は、いつになっても収束しない無限ループの罠にはまって抜けら
れなくなることが多い。このような事態を「悪魔のチューニング」とも呼んでい
るが、この「悪魔のチューニング」は質が悪く、たとえば耐久試験のように、開
発の最終段階で待ちかまえていることが多い。これのおかげで、ゴールを目前に
撤退の涙を呑まされたり、あるいは大きな回り道を強いられたりする例は、あと
を絶たない。

 また、試験動作は試作品を使って行なわれるが、その試作品の製作には多大の
コストがかかる。特定された不具合の原因を是正するための修正が部分的な手直
しだけで済めば良いが、最初の設計に遡ってやりなおさなければならなくなる場
合も少なくなく、これが繰り返されると、開発室は試作品の残骸で死屍累々の修
羅場と化す。

 不具合の検証は試作品を色々な条件下で試験動作させて行なうが、製品が市場
に出回ってからのありとあらゆる条件を、開発の時点であらかじめすべて検証す
ることは、現実に不可能である。このため、従来方法にて、市場への不具合の漏
出を確実に抑えることは、構造的に不可避であった。初期ロットに不具合が多い
という統計的事実も、それを裏付ける。

 それと、次のような問題もある。一般に、製品は複数の要素で構成される。こ
の場合、各要素は単に集まるだけではなく、相互に作用する連係状態で製品を構
成している。したがって、その製品を試験動作させて見ることができる不具合は、
その製品を構成する「要素」の不具合ではなく、その要素が集まって構成される
「製品」の不具合である。つまり、試作品についての検証が主の従来方法では、
その試作品の性能を評価することはできるが、その試作品を構成する各要素の性
能を適切に評価することは、必ずしもできない。場合によっては、製品の中に組
み込まれることで、不具合が隠されてしまう要素もある。

 たとえば、要素としてフィードバック制御ループを含む製品の場合、その制御
ループの中に組み込まれた別の要素に不具合があっても、製品の試験動作では、
その不具合がフィードバック制御の補償動作によって隠されてしまうことがある。
この隠された不具合があらかじめ見込まれた上で設計がなされていれば問題ない
が、そうではなく、かつ製品の基本性能に本質的な影響を及ぼすような類の不具
合であった場合、その不具合を抱えたままの製品が市場へ流出してしまうことに
なる。

 そして、従来方法により開発された製品は、開発目的とする実物製品にできる
だけ近づけて作られた試作品をベースにして開発された製品であって、その開発
目的外の製品には必ずしも対応してしない。このため、当初の開発目的の範囲か
らはみ出すような仕様変更の必要が生じた場合、元の製品に対する部分的な手直
しだけでは対応できず、基本設計から変更して開発をやり直さなければならない
場合が多い。

【発明の目的】
 本発明(TM)の目的は、新製品開発の期間とコストの大幅な圧縮を可能にし、
不具合の市場への流出を確実に防止できるようにし、さらに製品の仕様変更にも
柔軟に対応できるようにする、という技術を提供することにある。

【課題を解決するための手段】
 本発明による解決手段とは、開発目的とする製品の機能を実現させるのに必要
な基本機能を抽出し、この基本機能について耐ノイズ性を確立する第1段階と、
耐ノイズ性が確立された基本機能を特定の製品に適合化させる第2段階とを、そ
れぞれ独立して行なうことである。

 上述した手段によれば、短縮された試行錯誤ループおよび簡略化された実験手
順でもって、目的とする製品に対して所定の機能を付与させることができるとと
もに、製造段階および市場流出後の不具合防止に効果的な安定性を付与させるこ
とができる。

 これにより、新製品開発の期間とコストの大幅な圧縮を可能にするとともに、
不具合の市場への流出を確実に防止できるようにし、さらに製品の仕様変更にも
柔軟に対応できるようにする、という目的が達成される。

 ここで、TMで言うところの基本機能は抽象的な概念であって、製品の構成部
品そのものではなく、製品が持つべき機能を実現させるのに必要な前段階での技
術手段を指す。

 たとえば、開発目的とする製品が光学レンズだとすると、このレンズの光学機
能は製品の目的機能だが、ここで言うところの基本機能ではない。そのレンズに
所定の光学機能を付与させるのに必要な前提技術が基本機能となる。たとえば、
光屈折材料に曲面形状を付与するための成型技術や研磨技術などが、基本機能と
して考えられる。

 電気信号を音響信号に変換するスピーカならば、そのスピーカの電気音響変換
特性は製品機能であり、その変換特性に関与する機械特性や電気特性が基本機能
となる。ハード・ディスク・ドライブ(HDD)の場合、記憶容量や平均アクセ
ス速度などは製品機能であり、磁気ヘッドの読取分解性能やヘッドアームの運動
性能などが基本機能となる。

 このように、基本機能とは、ユーザーが製品に対して要求する表向きの機能の
ことではなく、その表向きの機能を実現させるための前段階にて必要とされる機
能のことを指す。

 耐ノイズ性は、安定性あるいはロバスト性(robust=頑健)などとも呼ばれて
いる。電圧変動や寸法バラツキ等の様々な外乱条件(誤差因子)の下で、目的と
する機能の性能をいかにして再現性良く実現させられるか、これが耐ノイズ性で
ある。TMでは、その耐ノイズ性の追及を、製品の機能ではなく、基本機能に対
して行なう。また、その耐ノイズ性を評価するために、TMでは、SN比(信号
対ノイズ比)という概念を導入している。

 SN比というのは、主に通信関係の分野で良く用いられる概念であって、本来
は、ノイズ(N)の大きさに対する信号(S)の大きさの比(S/N)を表わす
指標として使われていた。TMでは、その信号(S)を目的とする機能の性能に
見立て、電圧変動や寸法バラツキなどの外乱(誤差)をノイズ(N)に見立てる
ことにより、外乱に対する安定性すなわち耐ノイズ性をSN比という概念でとら
える。

 TMの第1段階では、基本機能の耐ノイズ性すなわち十分なSN比を確立する
ところまで行なう。

 耐ノイズ性の確立に際しては実験計画法が使われる。ここでは実験計画法につ
いての説明は省くが、実験計画法を用いることにより実験手順が最適化され、最
小限の実験回数でもって、偏りのない広範な試験条件による、基本機能の耐ノイ
ズ性試験を実施することができる。

 基本機能の性能に影響するノイズ(外乱)は、たとえば温度、湿度、圧力といっ
たように、複数種類のノイズ要因を含んでおり、しかも各ノイズ要因は互いに複
雑に関係し合っていることが多い。こういった複雑なノイズに対しての安定性
(ロバスト性)を広い範囲にわたって満遍なく試験し評価するためには、各ノイ
ズ要因のそれぞれの与え方の組み合せをあらかじめ十分に最適化しておくこと
が不可欠である。その最適化を行なうために実験計画法が使われる。

 TMの第2段階では、第1段階にて耐ノイズ性が確立された基本機能を、開発
目的とする特定の製品に適合させること、いわゆる基本機能の個別化を行なう。

 たとえば、前述した光学レンズの場合、第1段階では、光屈折材料に曲面形状
を再現性良く付与するための成型や研磨等の基本的技術を確立し、第2段階では、
第1段階にて確立した技術を実際のレンズ加工に適合させるための条件選定(チ
ューニング)を行なう。このとき、第1段階では、光屈折材料に曲面形状を再現
性良く付与するといったような基本機能だけに着眼し、製品のレンズの光学機能
については考慮しない。というよりも、第1段階にて製品の機能まで考慮するこ
とは、TMの効果を得る上で妨げにさえなる。

 TMの目的は、前述したように、
 (1)新製品開発の期間とコストの大幅な圧縮を可能にする、
 (2)不具合の市場への流出を確実に防止できるようにする、
 (3)さらに製品の仕様変更にも柔軟に対応できるようにする、
 ことにある。
 これらの目的について、TMでは次のようにして達成することができる。

 すなわち、従来は試作品に対して一括的に行なわれていた開発のフィードバッ
ク・ループを、TMでは、基本機能の耐ノイズ性を確立する第1段階と、耐ノイ
ズ性が確立された基本機能を製品に適合させる第2段階とに分割するとともに、
各段階をそれぞれ独立させる。つまり、開発のフィードバック・ループを2つに
分割するとともに、各分割ループを互いに独立させる。

 新製品開発を第1,第2の2つの段階に分割して互いに独立させることで、各
ループでの試行錯誤の往復行程をそれぞれに短縮することができる。試行錯誤の
往復行程が短縮されるので、たとえば基本機能の選定に誤りがあって最初からの
やり直しの必要が生じたような場合でも、それによる損失は最小限にとどめるこ
とができる。これに加えて、各ループをそれぞれ独立させることで、各ループで
の試行錯誤を同時並行で行なうことができるようになり、これにより全体の開発
期間を大幅に短縮させることが可能となる。

 また、試作品(製品)と基本機能とでは、それを構成するパラメータ要素の数
が異なる。試作品にはすべてのパラメータ要素が集合する。試験条件の組み合せ
はパラメータ要素の増加に対して級数(階乗)的に激増する。したがって、試作
品では、不具合を検証するための試験条件に非常に多くの組み合せが生じる。そ
のすべての組み合せについて試験を行なうことは、仮に実験計画法による手順の
最適化をはかったとしても、膨大な実験作業が必要となる。実験には高価な試作
品を使うため、コストも膨大になる。かといって、実験を省くようなことがあれ
ば、その省いた部分の不具合は検証されぬまま残ってしまうことになる。

 他方、基本機能に着目した場合は、その基本機能についてのパラメータ要素だ
けを対象とすればよく、不具合を検証するための試験条件の組み合せは、試作品
に比べると、大幅に少なくすることができる。実験計画法による手順の最適化も
きれいに行なうことができる。これにより、少ない実験回数でもって、基本機能
の耐ノイズ性を確実に検証することができる。しかも、基本機能の試験なので、
実験に高価な試作品を使う必要はなく、したがって時間とコストのどちらも大幅
に節約することができるようになる。

 また、前述したように、試作品の場合は、製品の基本性能に影響する重要なパ
ラメータ要素であっても、それが製品の中に組み込まれることによって不具合が
隠されてしまうことがある。たとえば、要素としてフィードバック制御ループを
含む製品の場合、その制御ループの中に組み込まれた別の要素に不具合があって
も、製品の試験動作では、その不具合がフィードバック制御の補償動作によって
隠されてしまうことがある。しかし、基本機能に着目すれば、それが製品の中に
隠されてしまうような機能であるかどうかに関係なく、その基本機能についての
耐ノイズ性を確実に検証することができる。これにより、不具合が隠されたまま
市場へ流出してしまうことも確実に防止できるようになる。

 そして、耐ノイズ性が確立された基本機能は、それ自体が製品の不具合を防止
する機能を備えている。耐ノイズ性とは、前述したように、電圧変動や寸法バラ
ツキ等の様々なノイズ環境下で目的とする機能の性能を再現性良く発揮すること
ができる性能(ロバスト性)のことである。

 ここで、製品という形態は、基本機能から見れば、一種のノイズ環境と言うこ
とができる。基本機能は、製品に組み込まれることによって様々な条件変更を受
ける。この条件変更は一種のノイズ(外乱)と見ることができる。単独での耐ノ
イズ性が十分に確立された基本機能は、その製品というノイズ環境下でも良好な
SN比を維持することができる。これが製品の不具合防止に非常に有効に作用す
することになる。

 同様に、製品の仕様変更についても、一種のノイズ環境の変化としてとらえる
ことができる。十分に広い範囲での耐ノイズ性が確立されている基本機能は、製
品の仕様変更というノイズ環境変化にも、比較的簡単な合わせ込み作業(チュー
ニング)でもって、柔軟に対応することができる。つまり、広い範囲での耐ノイ
ズ性が確立された基本機能には汎用性がある。したがって、基本性能の耐ノイズ
性を確立することは、新製品開発の期間およびコストの大幅な短縮という効果に
加えて、将来の開発に備えての技術資産の蓄積という利益ももたらす。


 以上、TMの概略について、自説を交えながら一通り紹介してきました。しか
し、今まで述べたのは、TMの表の部分です。TMの発明者、田口玄一氏も言っ
ているように、ものごとはなにもかも理屈どおりには行きません。この理想と現
実の格差は、TMにおいても例外ではありません。TMを理解するためには、い
ろいろと角度を変えた見方が必要です。実際にTMを導入した開発現場ではどの
ような問題が起きているのか、たとえばデータの統計処理結果に一喜一憂するう
ちに数値ゲームに陥ってはいないかなど、裏の部分の検討も必要です。

 TMでは、基本機能やノイズ(外乱)をどうやって決めるかといった具体的な
手法には触れません。それを考えるのは開発技術者です。開発を行なうのはTM
ではなく、技術者です。TMが教えるのは、技術者が持っている力を最大限に引
き出すための”考え方”です。

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