49.藤沢周平

<藤沢周平>
「ふるさとへ廻る六部は」
藤沢周平/新潮文庫/各\552
エッセイ集。筆者の生活や思いが分って面白いが、自律神経失調症だとか閉所恐怖症だとか言われると小説の面白さがやや減滅される。やはり小説家は小説で勝負したほうが良い。バラエティで馬鹿やっているスマップがマジな映画に出てもアホ臭いし、何とか真理子の顔を知った上では彼女の恋愛小説は読みにくい。
「春秋山伏記」
藤沢周平/新潮文庫/各\514
目茶苦茶面白いじゃないの。江戸時代の庄内地方を舞台に、山伏と村人の生活を活写していて興味深い。会話を荘内弁にしているのが新鮮で真実味を感じる。山伏となった若者の英雄譚にも、江戸農民の生活記録にもなる。エロチックコメディにも、サンカとの交流史にも出来る。映画の原作として最高のネタだ。
「天保悪党伝」
藤沢周平/新潮文庫/各\476
講談「天保六花撰」を下敷きに、悪党六人を再構築。悪人も書けるのか。六編を上手くつないでゆく手腕もさすが。もっともっとワルを書いて長編にすればよいのに。
「龍を見た男」
藤沢周平/新潮文庫/各\476
九編の短編。「帰って来た女」「おつぎ」「女下駄」の三編は文章、プロット、構成が整い情感も篭っているが、他のモノは唐突な文章の羅列で説得力が無い。読み終わってから、何が言いたいんだ、と思ってしまう。やはり彼でも出来不出来が有る。
「三屋清左衛門残日録」
藤沢周平/文春文庫/各\552
用人の職を辞し、家督を譲り、悠々自適の隠居生活、と思ったら意外の寂寥感。頼られて生きがいを感じる老年の日々が淡々と描かれていて心地よい。これを原作にすると良い映画が出来そうだ。
「よろずや平四郎活人剣」上下
藤沢周平/新潮文庫/各\629
妾腹の次男坊、神名平四郎がよろず仲裁人として江戸の町で生活する。実家の当主は義兄、千石の旗本で目付けという立場上、平四郎にも様々な危難が降り掛かる。藤沢作品としてはユーモアもあり、面白い。テレビの原作として知ったが、映画にするのも面白いだろうなあ。
「本所しぐれ町物語」
藤沢周平/新潮文庫/\466
しぐれ町自身番の清兵衛と万平が狂言回しとなって、町内の12の話しが進行する。普通の男と女、親と子がそれぞれの人生をあくせくと生きていく。良い話なのだが、もう少し明るく描いて欲しかった。作者としては明るく書いたつもりなのだろうが。映画の脚本として良い。
「秘太刀馬の骨」
藤沢周平/文春文庫/\514
NHKのドラマになっていたのをチラリと見て、文庫を買ってみたが、面白い。今まで藤沢作品を読まなかったのが勿体無いくらいだ。これもよい映画になりそうだ。出久根達郎の解説は余計で、見当違い。
「蝉しぐれ」
藤沢周平/文春文庫/\629
あれー、藤沢周平も明るい長編が書けるんだ。面白いよ。映画がちょっと変だったので、原作を読んでみたら断然こっちの出来が良い。映画を見ていて、変だなあ、整合性が無いなあ、と感じたところはすべて監督が原作を離れて創作した部分だった。原作はきちんとストーリーに整合性があり、面白かった。原作に忠実に脚本を書けば、素晴らしい映画になったはずだ。ひでえ監督。
「時雨のあと」
藤沢周平/新潮文庫/\476
やはり藤沢モノはこの程度の明るさが無いと読み疲れる。人情と道理に命を張る武士の生き様は心地よい。
「隠し剣秋風抄」
藤沢周平/文春文庫/\590
こちらは多少明るく、結末も救いが有るストーリーが多いので何とか読める。文体とストーリーは、やはり著者の性格だろうなあ。藤沢さんの主人公は、私も性格が似ているので良く理解できるが、もっと明るく落ちを楽しくして欲しいものだ。そういう意味では、山田監督は上手く脚本を作って愛すべき主人公を作っている。逆に奇麗事過ぎて軽いという面も出てくるが。
「隠し剣孤影抄」
藤沢周平/文春文庫/\590
映画「隠し剣鬼の爪」が面白かったので読んでみた。映画は「時雨のあと」の中の「雪明かり」と、「隠し剣孤影抄」の中の「邪剣竜尾返し」「隠し剣鬼の爪」の三作を上手く使って居る。この短編集は、暗い進行と悲しい結末の物が多く、読み終わって疲れるが、さすがに山田洋二は感情移入できるようにハッピーエンドに置き換えて居る。
「たそがれ清兵衛」
藤沢周平/新潮文庫/\514
映画が面白かったので原作を読みたいと思ったのだが、藤沢ワールドは淡々として面白かった。表題作を含む八本の短編小説から成る大衆武士道小説。映画は、「たそがれ清兵衛」と「祝い人助八」の二本を上手くつなぎ合わせて脚本を作っている。

<彫師伊之助捕物覚え・用心棒日月抄>
「ささやく河」
藤沢周平/新潮文庫/各\667
三弾。じっくり書いた長編だが、ストーリーに時間を割きすぎていて、軽快さワクワク感がやや薄い。もう少し伊之助の活躍やおまさとの交情を書き込んでくれれば。
「漆黒の霧の中で」
藤沢周平/新潮文庫/各\514
二弾。耳の後ろの急所、独古を刺されていた水死人の捜査から始まり、巨悪の寺僧、大店主をあぶりだす伊之助のハードボイルドな活躍。この巻の出来が一番良いかも。おまさとの逢瀬、同心石塚とのやり取りなどをもう少し書き込んでくれると良いが。
「消えた女」
藤沢周平/新潮文庫/各\590
彫師伊之助捕物覚えシリーズ。元凄腕の岡っ引きで版木彫り職人の伊之助が、止むに止まれず捕物騒ぎへ。やや暗いけれど面白い。これも映画の原作になるなあ。
「凶刃 用心棒日月抄」
藤沢周平/新潮文庫/各\590
四弾。十六年の年を隔てて、再び青江又八郎は江戸へ出て、旧友細谷と愛する同志佐知と再会する。上手いよなあ、藤沢周平は。やはりここまで描かなくちゃ。
「刺客 用心棒日月抄」
藤沢周平/新潮文庫/各\590
三弾。嗅足組頭領で、愛する同志佐知を救うため青江はまたも脱藩し上京する。交情がさわやかで心地よい。
「孤剣 用心棒日月抄」
藤沢周平/新潮文庫/各\629
二弾。藩主毒殺の証拠書類を追って、青江は再び脱藩、上京する。不本意ながら用心棒家業と探索の日々を送る。
「用心棒日月抄」
藤沢周平/新潮文庫/各\705
用心棒日月抄シリーズ。面白い。こりゃあ映画の原作にぴったり。構成、文体、性格描写など藤沢周平は上手い。

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