5.戸梶圭太等

<私のヌーベルバーグ>
「悪漢刑事」
足立瑤/祥伝社文庫/\657
わるデカ。面白い。金や出世には興味なく犯罪者ややくざを食い物にし、女に執着するやり手刑事。部下を殺され、自分を陥れた警察上層部に強烈なカウンターを食らわす。きちんとしたストーリーが描かれていながら、エロチックな場面も容赦なく描写する。こえいう映画を作りたいなあ。
「いましめ」
睦月影郎/徳間文庫/\533
プロローグを読むとスリラーかと思うほど緊張感ある設定と文章だったが、本編が始まるとエロチックコメディだった。筆力があれば面白くなるネタなのに、いかんせん構成力と筆力に欠ける。まあそれなりに楽しいのだけれど。
「新妻DE狂騒曲」
矢神慎二/徳間文庫/\533
良いぞ良いぞ。良いんだけど、ちょっとテクニックに溺れて、エロチックに走り過ぎ。この作者は構成力があるのだから、安易にエロに走らず、プロットをきちんと書き込んで欲しい。エロはエロで楽しいのだけれど。
「情事接続マドンナ」
矢神慎二/徳間文庫/\590
エロチックコメディーというか、青春サラリーマン小説というか、面白い。麗熟女、美少女、極道との友愛、営業マンと来れば興味津々。ボケと突っ込みがあり、セックスシーンもたっぷり。ちょっと膨らませて、AVの脚本にピッタリ。売れるぞ。

<戸梶圭太>
「ドクター・ハンナ」
戸梶圭太/徳間書店/\1800
サディスティックな美貌の外科医、畔奈。彼女の性癖が周囲に影響を与え、お得意の血とドロドロのトカジックワールドが繰り広げられる。まずまずの作品。
「トカジャクソン」
戸梶圭太/光文社/\1600
外れだった。2003年発行の短編集だが、妄想的過激設定、残虐性、辻褄合わせなど筆者の悪い面だけが突出している。書き殴りになっている。
「湾岸リベンジャー」
戸梶圭太/祥伝社/\1700
まったくこの人の本は、途中で止められないので困る。読みたくて、次が知りたくてついトカジックワールドに引き込まれてしまう。今回は、湾岸道路の大事故で妻を事故死させた走り屋に対する復讐劇なのだが、そんな言葉ではまとめられない捻りの効いた面白さ。もう少し長編にして、人物描写を綿密にしてくれるともっと楽しかった。 特に復讐劇のスポンサーとなる美濃部氏とその愛人らしき高梨嬢のバックグラウンドは書き込んで欲しかった。愛妻の妹である頼子さんも良い雰囲気なのだが、ちょっとご都合主義の観があり、やや書き込み不足。でも面白かった。
「燃えよ! 刑務所」
戸梶圭太/双葉社/\1500
達者だねえ、この人は。刑務所の民営化を使って痛快娯楽小説を作ってしまった。警察OBのスーパーエネルギッシュ爺さんが、肉欲と愛とを絡めながら、囚人虐待も辞さない刑務所を作り、小泉首相を揶揄する。犬に化してゆくなんてまったく良く書くよ、たいしたものだ。バトルロワイヤル、障害者プロレス、落語の死神などからヒントを得たのだろうが、ファンタジーを上手く料理しているのでスンナリ読める。
「ギャングスタードライブ」
戸梶圭太/幻冬社文庫/\600
別れたヤクザの夫から11歳の娘を取り返して欲しい、と頼まれたダンサーくずれの敏子。幼馴染の一生を巻き込み、成功と思ったところが、誰が身代金を要求したのか、知らぬ間に誘拐事件に早変り。カーチェイスあり、乱射・爆破・火事あり、反吐と笑いの交錯する痛快コメディ。運悪く事件に巻き込まれたサラリーマンのオジサンが良い味を出しているので、もう少し書き込んで欲しかった。
「闇の楽園」
戸梶圭太/新潮文庫/\781
デビュー作だが完成度が高く、このままで映画の脚本になる。以後の作品の様々な萌芽が見られるが、残虐性もそれほど過激ではなく、ほのぼのとしたロマンスも散りばめられている。落ちこぼれの若いサラリーマンが、おぱけ屋敷のテーマパークを地方の過疎の町に提案、そこから始まる反対運動、住民投票。そこにカルト集団・産業廃棄物処理、そして地元の若者達の生活が絡み、様々な騒動が大団円へと結集される。手堅い、上手い、面白い。
「牛乳アンタッチャブル」
戸梶圭太/双葉社/\1500
面白いわあ。あの雪印事件をここまで面白く戸梶流に小説化出来るなんて才能だわ。それにしても人物、筋立て、行動すべてが戸梶流の小説。やはり自分の好みでしか文章は書けないものらしい。私の好きな井上靖、司馬遼太郎、浅田次郎でも、人は変わってもみんな人物像はワンパターンだ。まあそれも小説の面白さなのだが。
「ご近所探偵TOMOE episode 3」
戸梶圭太/幻冬社文庫/\495
TOMOE宅に転がり込んだ老婆は女スパイ。追い駆ける公安刑事もお爺さん。悪ガキを犬にかじらしたり、挙句の果ては撃ち殺す。セックスあり、残虐ありだけど突き抜ける軽快さと爽快感は著者独自の世界。これも映画になるなあ。
「ご近所探偵TOMOE episode 2」
戸梶圭太/幻冬社文庫/\495
今度はご近所の豪邸に住むパズラーが殺人犯。強引に関係が出来てしまい、ドタバタミステリーに発展。
「ご近所探偵TOMOE」
戸梶圭太/幻冬社文庫/\495
これもAVの脚本にぴったり。売れない女優とイラストレーターの新婚夫婦が覚醒剤の密売に巻き込まれるドタバタミステリー。枝葉の事件を簡略化して、セックスシーンを丁寧に描けば、 楽しいエロティックコメディが出来上がるはず。俺が監督をしたい。
「溺れる魚」
戸梶圭太/新潮文庫/\590
これが既に映画になっていたなんて知らなかった。ぜひ見たい。椎名桔平と窪塚洋介が主演だって、ピッタリだわ。
「なぎらツイスター」
戸梶圭太/角川書店/\1600
文章は達者で、構成も上手く、犯罪事件などの取り込みも適度で手慣れているのに、読後感が爽やかではない。安易に人を傷つけたり殺したりという部分がすんなりと心に入らない。ちょっと人情の機微を深めると一皮剥けそうなんだけど。もっと軽やかにもっとエロチックにもっと喜劇っぽくなるのを期待。

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