29.ハードボイルド

<リンダ・ハワード>
「黄昏に生まれたから」
リンダ・ハワード/ヴィレッジブックス/\760
女流画家スウィーニーは幽霊が見え、夜には夢遊病にかかって一枚の絵を描くようになった。そこには殺人現場が描かれていていた。ブックオフで百円だったから、久しぶりに買ってみたら面白くて、朝四時過ぎまで読んでしまった。ストーリーは相変わらず上手いし面白いのだが、セックスシーンの描写が露骨で多いのには驚いた。エロチックサスペンスだね。 もちろん愛情表現としてきちんと描写されているし、大人の読み物なのだから、これは素晴らしい表現行為だ。こういう映画を作りたいものだ。
「夜を忘れたい」
リンダ・ハワード/二見文庫/\790
6年前に、他人の心を感知できる超能力を失った女性マーリー・キーンが、突如、殺人犯のビジョンを感知する。警察に協力を申し出たマーリーの前に現れたのは、男臭い刑事デーン・ホリスター。というところから得意の展開が始まるが、緻密な描写で飽きさせない。
「石の都に眠れ」
リンダ・ハワード/二見文庫/\790
亡父の跡を継いで考古学者となった聡明な女性ジリアンが、古代文明の遺跡を求めてアマゾンの奥地に旅立つ。パターンは同じで、最初は嫌味で下品なガイドが実は野性的な男性で、恋に落ちる。そこに敵対する殺し屋と嫌味なスポンサー。楽しく読ませてくれます。
「Mr.パーフェクト」
リンダ・ハワード/二見文庫/\790
OL4人が会社帰りのバーで、「完璧な男」の条件をリスト化。仲間内のつもりが社内報、新聞、テレビと拡大報道され、思わぬ事件が発生。殺人、恋愛を絡めたロマンティックサスペンスが読ませます。
「パーティガール」
リンダ・ハワード/二見文庫/\790
34歳の真面目な図書館司書が、一大決心をしていい女に変身し、夫と子供を得ようとするが、そこにマッチョの警察署長と犯罪組織が絡んでくる。手馴れた筆致で男女の気持ちを書き分け、スリルとセックスも振りかけて楽しく読める。ただ肝心な点で数ヶ所、翻訳がいい加減なため意味が通じない所がある。訳者が未経験なためかも。

<サラ・パレツキー>
「ゴースト・カントリー」
サラ・パレツキー/早川書房/\2000
「女探偵V・I・ウォーショースキー」が登場しない初めての作品。ホテルの壁から聖母マリアの血が流れ出るという聖跡モノで、愛と奇跡と感動が売り物らしいが、欲張りすぎ。主人公が明確に出来ずに、登場人物が多いので表現が類型的になり、感情移入しにくい。ストンズ家三代でも、落剥したオペラ歌手ルイーザ・モントクリーフでも、三人のハンドバッグ・レディでも、誰でも主人公に出来たのに中途半端になった。霊能者的なホームレスであるスターが出てくる中盤あたりから、文章も神がかり的になってくる。著者の高望みか、老齢による思い込みが強い。男性の描き方も単純すぎて不満。もちろんそれなりのレベル以上なのだが。
「バースディ・ブルー」
サラ・パレツキー/ハヤカワ文庫/\960
女探偵ウォーショースキーのシリーズ物。実は全巻読んでいるくらいのファンです。落ち込んでいる時などに最適。元気が出ます。文章力・構成力・娯楽性満点。病院のベッドで約700ページを延々読み切ってしまった。

<パトリシア・コーンウェル>
「真相」上下
パトリシア・コーンウェル/講談社文庫/\752
ヴィクトリア朝末期のロンドンで娼婦を惨殺し続けた切り裂きジャック。コーンウェルは、当時の著名な画家ウォルター・シッカートを切り裂きジャックと決め付け、その理由と当時の世相を延々と書き綴る。それらしくはあるが、ほとんどすべてが状況証拠と思い込みにすぎず、とにかく面白くない。時間の無駄だった。初期の作品には魅力が有ったけどなあ。
「痕跡」上下
パトリシア・コーンウェル/講談社文庫/各\714
「神の手」よりは面白いが、それにしても出来が悪い。痕跡の説明が無いし、新任局長との摩擦について書き漏れている。才能の枯渇か。
「神の手」上下
パトリシア・コーンウェル/講談社文庫/各\714
「検屍官ケイ・スカーペッタ」シリーズ。うーむ、面白くない。シリーズ最初の頃はそれなりだったのに、本作では奇を衒って失敗している。ニュージャーナリズム的に犯人の心理・独白に持って行ってるけれど独り善がりで、これは小説として禁じ手。結末も多重人格は安易。この人もお仕舞いかな。

<リー・チャイルド>
「キリング・フィールド」上下
リー・チャイルド/講談社文庫/\800
ジャック・リーチャーシリーズ第一弾。思いがけず過激な残酷表現があってやや驚くが、面白い。ジョージア州の片田舎マーグレイプ、リーチャーが突如逮捕される幕開きから最後まで息をつかせぬ展開。ハッピーエンドとは言えない結末が残念だが、ハードボイルドの宿命か。
リーチャーの行動信条「理由を云々する前に現状対策を考えろ」というのは身に染みる。若いころは特に、何故どうしてと堂々巡りをして対策が打てないものだ。
「反撃」上下
リー・チャイルド/講談社文庫/\876
民兵組織に誘拐された女性ととばっちりのリーチャー。麻原みたいなリーダーが特異で不気味。話としてはまだるっこしい。
「警鐘」上下
リー・チャイルド/講談社文庫/\733
元憲兵少佐で風来坊のジャック・リーチャーと、元上官の娘でバツイチのジョディ・ガーバー。清々しく良いカップルだ。続編が楽しみ。

<堂場瞬一>
「蒼の悔恨」
堂場瞬一/PHP文庫/\724
ずいぶん文章がこなれてきたし、ヒロイン奈津も魅力的でキャラが立って、上手くなったのかと思っていたら、やはり後半は息切れして、駆け足。書き続けるための頭脳の体力がなく、いつもこのパターンというのは、もしかして本人はこれで満足しているのかも。そろそろ読むのは打ち止めかな。
「神の領域」
堂場瞬一/中公文庫/\857
鳴沢了シリーズにチラッと出ていた城戸検事を独立させた「検事・城戸南シリーズ」。中年の検事の公私が上手く描かれていて身につまされる。ストーリーとしては良くできている。神、このアンチヒーローのキャラがやや弱いのが残念。
「雪虫」
堂場瞬一/中公文庫/\857
刑事になったのではなく、刑事に生まれたという鳴沢了シリーズ第一作。なかなか面白いのだが、文章・構成が勿体ぶり過ぎ。作者の体験が浅いのだな。もう少し刈りこめばグンと良くなるはず。良いものを持っているから。
「破弾」
堂場瞬一/中公文庫/\857
警視庁多摩署で現場復帰した鳴沢了が、所内で疎外されている女刑事小野寺冴とコンビを組む。単なるホームレスへの傷害事件が、かつての学生運動での殺人事件に繋がり、冴と了は捜査を進めていく過程で繋がり、悲劇的結末から離れていく。悪くないんだけれど、作者の人生経験が浅いんだろうなあ。
「熱欲」
堂場瞬一/中公文庫/\857
第三作。駄作じゃないか。もったいぶって引っ張って、最後は駆け足。書き続ける体力がないのだな。主人公鳴沢は青臭い若造だし、ヒロインは珍竹林で魅力なし。読むのは時間の無駄と思えてしまう。
「孤狼」
堂場瞬一/中公文庫/\857
あれ、面白いじゃないか。バディ小説の良さが出ている。相棒の今刑事、巨漢で坊主の息子が主人公鳴沢刑事と良い対比になっている。鳴沢と今、鳴沢と冴は上手く表現されているが、肝心の鳴沢と優美のラインが弱い。

<スティーヴン・ハンター>
「四十七人目の男」上下
スティーヴン・ハンター/扶桑社ミステリー/\819
還暦を迎えようとするスワガーが、父アル・スワガーの硫黄島での戦闘に導かれて日本にやってくる。アルと日本軍将校との関わりから、ある日本刀を巡ってスワガーの義と恩を重んずる活躍が始まる。ただ、読み物としての楽しさ、レベルは低いと思う。
「狩りのとき」上下
スティーヴン・ハンター/扶桑社ミステリー/\751
結果的には面白かった。最初はまだるっこしいし、主人公以外のストーリーが続く。やっとスワガーが出てきたら面白くて早く先を知りたくなる。
「ブラックライト」上下
スティーヴン・ハンター/扶桑社ミステリー/各\667
第三作。面白いけれど、最後に都合のよい謎解き、というパターンはちょっといただけないなあ。
「極大射程」上下
スティーヴン・ハンター/新潮文庫/各\667
「ザ・シューター/極大射程」の原作。これはこれでとても面白い。名スナイパー、ボブ・リー・スワガーの男らしさが圧巻。最後のどんでん返しの後、スワガーと彼女はどういう生活を送るのだろうか、興味津々。シリーズを読んでみよう。

<推理>
「魔術師の物語」
デイヴッド・ハント/新潮文庫/\895
色彩を判別できない女性写真家ケイが、男娼ティムの殺人事件と15年前に警官である父が関わった連続殺人事件を追及する。文章も達者でプロットも面白いのだが、最後の種明かしがちょっとしまらない。流れの中で盛り上げて欲しかった。
先日見た映画「ザ・マジックアワー」のマジックアワーがサンフランシスコの町で効果的に使われていたが、魔法の時間なんて約されているのが滑稽。
「点と線」
松本清張/新潮文庫/\438
今読むと作り物っぽくてあまり魅力は感じないが、当時としては物凄いインパクトが有ったんだろうなあ。
「不夜城」
馳星周/角川書店/\667
著者のデビュー作。すでにテクニックも作風も固まっていた。ここまで救いが無い読み物にしなくても、と思うが、著者にとってはこれが真実なんだろうなあ。歌舞伎町で過酷な運命に逆らって生きている日台混血の故買屋、劉健一が生き残るためのエネルギーは凄まじい。しばらくはこの著者の本は読みたくない、辛いから。
「夜光虫」
馳星周/角川書店/\1900
うーん、凄まじい本だ。ここまでおとろしく書かなくても良いんじゃないか。著者の力量は認めるが、読み終わって救いがない。暗い、つらい、元気が出ない。いくら小説は人間を描く、と言ってもここまで厳しく書かなくても、と思ってしまう。
日本球界で食い詰めて、台湾に流れてきた投手、加倉は八百長に手を染めていた。そこから始まる台湾やくざとの闘争、仲間との確執、両親の過去、親族との抗争、純愛などが手馴れた筆致で描かれている。文章が上手いだけに、人間の暗部が赤裸々に描かれていて、救いが無くなって来る。この人の描く明るい小説を読んでみたい。
「女彫刻家」
ミネット・ウォルターズ/東京創元社/\2600
面白いし文章も構成もしっかりしているのだが、結末を曖昧なままにするのはサスペンス物としての反則、禁じ手ではないかなあ。余韻とは言えないしちょっと安易過ぎて、作者の力量が息切れしたのではないか。もう少しラストスパートを掛ければ本物になるのに。
「探偵稼業はやめられない」
木村仁良/光文社文庫/\705
光文社のジャーロに訳載されたミステリー短編集から、男女各六人の探偵小説を集めたもの。私はサラ・パレツキーの新作かと勘違いして購入したので吃驚した。短編では物語世界に引き込まれる前に紙数が尽きてしまい、いつも物足りなさを感じるが、このアンソロジーは面白い。ここから気に入った作家の長編を読み込めば良いのだ。
「闇に問いかける男」
トマス・H・クック/文春文庫/\619
少女殺しを否認し続ける容疑者の拘留期限はあと11時間。二人の刑事と事件を取り巻く人間像を描くタイムリミット・サスペンス。良く出来ているのだけれど、読後感は暗い。山場の盛り上げが無く淡々としていて物足りない。人物の描写が甘いのでいまいち没入できなかった、面白いキャラクターが沢山あるのに。
「冷笑」
リンダ・フェアスタイン/早川書房/\940
女性検事補アレックス・クーパーシリーズの第三弾。美術界・画廊の内幕を紐解きながら、検察・刑事の奮闘を描く。もう少し主人公と仲間のキャラクターが描ければ、とても面白くなる。人間が生き生きと活動することが、面白さの源泉なんですよ。
「プラチナ・ビーズ」
五條瑛/集英社文庫/\1048
面白い、ということを前提に不満だけ書きます。題名が良くない、必然性がまったく無い。話がクライマックスに達しようとする時にあまりにもおざなりな場面設定が許せない。これから船を取り替えようとする時に、睡眠薬入りのワインを届けただけで、寝たかどうか確認しない犯人がいるか。全体としては上手く運んでいるのに、この抜かりのために興ざめ。葉山のエピソードを削ってサーシャの話を膨らませていれば面白いのに。
「バイク・ガールと野郎ども」
ダニエル・チャヴァリア/ハヤカワ文庫/\660
お色気ブリブリのキューバ娘アリシアが、知性と肉体を武器に金持ち男をゲットしようとして、やっと捕まえためメル・ギブソン似のヴィクター。ところが一転、という仕掛けなんだけれど、何ともまどろっこしくて疲れる。状況設定は面白いし、キャラクターも立っているのに話の展開が遅すぎ。三分の二に推敲するか、映画にすると面白いかも。あるいは翻訳が下手なのか。
「鋼鉄の騎士」上下
藤田宜永/新潮文庫/各\895
直木賞作家、レース小説ということで興味を持ったが、いまいち。小説というには、文体構成が雑で、引き込まれる魅力に欠ける。
「女性情報部員ダビナ」
E.アンソニー/新潮文庫/\
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「オールド・ディック」
L.A.モース/ハヤカワ文庫/\
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