本日の独り言

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2008.6.22
燃え尽き
5月27日夕方6時からのNHKラジオ第一放送の夕方ニュースで、アスク・ヒューマン・ケア研修相談センター所長の水澤都加佐さんの燃え尽きの話がありました。そのなかでたい
へん印象的な言葉がありました。
「仕事というのはあくまで仕事の対象になる方のためにすることなので、自分を満たすためにすることではありません、間違っても仕事の対象になった方からの感謝や賞賛や
評価で自分を満たそうとしないこと、言い換えれば自分を満たすことを仕事を離れた場所で常に取り組んでいることはとても重要なことです。」
この言葉は意味深いと思います。

2008.5.23
手足口病
 夏になると手足口病が多く診られます。手のひら、足の裏、口の中に発疹と水疱ができることが特徴で、発熱を伴うこともあります。原因はウイルスですから抗生物質はききません。休んでいれば数日で治る風邪です。
 最近、この手足口病が中国で流行して死亡例もでています。中国では昨年は手足口病に8万人が罹り17人が死亡しました。今年は既に26人が死亡しています。中国でこのように手足口病が流行するのは、手洗いなどの基本的な衛生意識の低くさが一因と考えられています。中国政府は、手足口病を法定伝染病に指定して唯一の予防対策である衛生意識の向上を図っています。これまで中国についての報道はチベット問題から聖火リレー妨害、四川大地震に占められて、手足口病の報道はありません。しかしこれは幸いなことかもしれません。不安を煽る報道はないほうがありがたいです。
 手足口病の原因となるウイルスは一つではありません。主な病因ウイルスは、エンテロウイルスであるコクサッキ−A16、あるいはエンテロウイルス71 ですが、その他のエンテロウイルスの仲間も手足口病という症状をおこします。そのなかで、エンテロウイルス71というウイルスがまれに髄膜炎、脳炎をおこすことがあります。日本でも、約10年前に手足口病の経過中に死亡あるいは重篤な神経症状を合併した症例が複数の医療機関で経験されました。
 手足口病は基本的には軽症の病気です。重症合併症はきわめて稀なことであり、手足口病になったすべての患者さんに厳重な警戒を呼びかける必要はありません。しかし、初期の症状の変化には注意すべきで、とくに、元気がなく、頭痛・嘔吐、高熱を伴う、などが見られた場合は慎重に対処する必要があります。
 また手足口病は登校・登園禁止の病気ではありません。この件については、1993年に小児科学会が見解を発表しています。手足口病のウイルスは、喉からは1から2週間、便からは3から5週間排泄されます。発症後のウイルス排泄期間が長く、実質的に登校停止で感染を予防することは困難です。そのため発疹だけのこどもを登園禁止を強いる必要はありません。いまだに手足の発疹が出ている間は登園禁止にしている幼稚園・保育園がありますが考え直していただきたいと思います。ましてや登園許可証を要求するなど非現実的です。

手足口病についての詳しい情報は、国立感染症研究所 感染症情報センターのサイトをご覧ください。
手足口病とは?
http://idsc.nih.go.jp/disease/hfmd/about.html
東アジア地域で分離されるエンテロウイルス71型の分子疫学
http://idsc.nih.go.jp/iasr/25/295/dj2952.html

手足口病」の登校(園)停止に関する見解 (日本小児科学会雑誌 97:1875−1876,1993)
手足口病はエンテロウイルスの感染であり、コクサッキーウイルスA16型、エンテロウイルス71型による報告がほとんどである。コクサッキーウイルスA4、5、6、10型の報告もある。口腔内の粘膜疹(アフタ様)と手のひら、足の裏、膝、臀部の米粒大の水疱が特徴である。特記すぺきは中枢神経系合併症で、髄膜炎が主であるが、きわめてまれに弛緩性麻痺をおこす。ウイルスは口腔内、便中に排泄され、飛沫感染、経口感染をおこす。不顕性感染が多い。潜伏期間は3−6日でウイルスの排泄期間は長く、咽頭からl一2週間、便から3−5週間排泄される。本症の場合は、発症後のウイルス排泄期間が長く、実質的に登校停止で感染を予防することは困難である。また全体的にみて不顕性感染も多く症状も軽微のため、本症をもって他のエンテロウイルスと分けた特別の扱いは不要である。したがって本症の発疹期にある患児でも、他への感染のみを理由にして登校(園)を停止する積極的意味はないと考える。ただし、本症には合併も見られることがあり、個々の症例の最終判断は主治医が決めることになる。以上の考えに基づいて地域の学校医(または医師会)で見解を統一しておくことが望ましい。

2008.4.20
多種類ウイルス同時検出キット
 呼吸器感染(症状としては咳、鼻汁、熱)をおこす代表的なウイルス12種類を同時に検出する検査キットができて、米国では使用が承認されたそうです。高熱が続いた時には、以前は熱の高い風邪ですとか、根拠は曖昧なのに、インフルエンザですと言い切っていました。しかし現在はそういうあやふやな診断では患者さんは納得されません。またインフルエンザの治療薬のタミフルは診断キットで陽性の患者さんにしか処方が原則としてできません。日本では外来で迅速検査ができるのは大きく3種のウイルス(インフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルス)だけですが、風邪症状や高熱をともなうウイルスは他にもあります。迅速検査の対象となるウイルスの数が増えて、しかも同時にできれば、診断もより確実になり、患者さんの負担も軽くなります。インフルエンザの検査のための綿棒を鼻に入れられるのは痛いのですから、それを何回もする必要がなくなり、痛い検査も1回ですむわけです。
12種のウイルスは、以下の通りです。
インフルエンザA型 H1 (ソ連型)
インフルエンザA型 H3 (香港型)
インフルエンザウイルスA型 (上記以外のA型)
インフルエンザB型
RSウイルスA型
RSウイルスB型
パラインフルエンザ1型
パラインフルエンザ2型
パラインフルエンザ3型
ライノウイルス
アデノウイルス
メタニューモウイルス
 ヨーロッパではこれより7種類多い、19種類のウイルスを同時検出できるキットが承認されたそうです。
これからはますます、「○○ウイルスによる熱です」とか「○○ウイルスによる咳です」という診断を求められるようになるでしょう。

2008.3.16
妊婦さんとシートベルト
 お腹の大きな妊婦さんはシートベルトをしないで車に乗ることが多いのではないでしょうか。それは妊婦さんたちが、道路交通法ではシートベルトの装着を義務付けていますが、妊婦については「健康保持上適当でない場合」は免除する規定があるのを知っているからかもしれません。
 ところで日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会は妊婦さんにシートベルト装着を推奨することを発表しました。近く公表する医師向けの診療指針に盛り込むようです。この2団体では交通事故で年間最大約1万件の流・早産が起き、約40人の妊婦が死亡していると推計しています。装着の注意点は、ベルトが肩と腰の両方にかかり、おなかの膨らんだ部分(子宮)にかからないようにすることです。腰だけを固定する2点固定式ベルトではなく、肩にもかかる3点固定式ならお腹への影響はないようです。
 海外ではシートベルトをしない方が妊婦、胎児とも死亡率が高いことが示されていて、今回の2団体の提言に警察庁も「非常に意義深い。警察も啓発に取り組みたい」と歓迎しているようです。
 WEBには「妊婦のシートベルト着用を推進する会」http://www.maternity-seatbelt.jp/というサイトもあります。

2008.2.17
地域医療崩壊 何が医師を追いつめるのか?
病院に勤務する小児科医の不足が問題になっています。その背景には何があるのか。そして医師を地域で守るために立ち上がった人々のレポートが放送されました。再放送がありますのでぜひご覧ください。

NHK教育テレビ 福祉ネットワーク

地域医療崩壊 何が医師を追いつめるのか?
再放送:2月21日(木)午後1時20分から1時49分

 いま全国の病院で医師が次々と辞めていき、地域医療が崩壊の危機にさらされている。従来あまり語られてこなかったが、背景のひとつにあるのが患者の安易な「コンビニ受診」。「待ち時間が昼に比べ少なくてすむ」「会社を休まなくてすむ」「どうにも不安でならない」などの理由で、深夜などの時間外に受診する人が増えている。なかには救急車をタクシー代わりに使う悪質なケースもあって、問題となっている。番組は、北海道苫小牧のある病院の夜間救急に密着。医師の苦闘ぶりを描くとともに、地域のお母さんたちが「子どもを守ろう、お医者さんを守ろう」をスローガンに「脱コンビニ受診」の取り組みを始めた兵庫県丹波市の事例を紹介する。
「NHKオンライン」より

「県立柏原病院の小児科を守る会」のホームページが開設されました。
http://www.mamorusyounika.com/

2008.1.28.
C型インフルエンザ
 インフルンザはA型の香港型とソ連型それにB型が毎年冬に流行します。ところでインフルエンザにはC型があります。今までC型インフルンザは罹っても軽症と言われてきました。しかし最近の研究では「発熱(38.5℃以上、2日間以上)、咳、鼻汁を主訴としていた。A型インフルエンザと症状が類似し、鑑別が難しい」ことがわかってきました。C型インフルエンザの診断は患者さんからウイルスを採取して分析するしかありません。A型、B型のような迅速診断キットはありません。一般外来での確定診断は難しいのが現状です。インフルエンザの流行する時期に、インフルエンザのように高熱と倦怠感があるのに、迅速検査を行っても陰性反応しかでない症例があります。もしかしたらC型インフルエンザを診ているのかもしれません。

2008.1.7
あけましておめでとうございます
 この冬は昨年ほどの暖冬ではありませんが、昼間は寒さも和らいでいるようです。まだ冬休みで病気の子どもも少ないようです。

2007.12.28
この1年を振り返って
 暖冬のため2007年は静かに年があけました。ところが3月になるとインフルエンザが爆発的に流行し一冬分のインフルエンザを一月で診ることになりました。そのさなかに厚労省が突然、タミフルの10代での使用を事実上禁止する通達をだしました。科学的裏付けや統計的データもないままに、厚労省がマスコミ報道に押し切られたかたちの通達に思えました。現場は患者さんへの説明に混乱しました。この年末に厚労省の調査会が、全国で17歳以下の患者約約1万人の調査で、タミフルを服用しない患者群が、服用した患者群より約2倍の頻度で異常行動が起こるという統計調査の暫定的結果を発表しました。飛び降りなど生命にかかわる異常行動でも発生率に大きな差はありませんでしたが、まだ解析の余地があるということで因果関係の判定は先送りとなりました。この発表を報道したマスコミはわずかでした。
 春は首都圏の大学生を中心にはしかが流行しました。今の時代に先進国ではしかが流行するなど世界の常識では考えられないことです。カナダへ修学旅行に行った高校生がはしかを発病したため隔離され、同行の高校生にはしかワクチンが強制的に接種されてしまいました。カナダの保健当局ははしかの発生にバイオテロ並みの危機感を覚えたようです。日本国内ではパニック状態になり、はしかワクチンが不足し、定期接種しなければならない幼児にできなくなりました。ここ数年、春には、関東ではしかの発生が続いているので来春も同じようなことになるでしょう。しかも来春から中高生にもはしかワクチンの定期接種が始まります。またワクチン不足がおこると心配されます。
 秋には日本脳炎ワクチンが日本からなくなってしまいました。製薬会社は新型の日本脳炎ワクチンを製造するために旧型ワクチンの生産ラインを壊していました。ところが新型ワクチンの認可が下りなくなったため、旧型の在庫が底をつき、新型も供給できなくなってしまいました。新型ワクチン認可がでなかったのは、治験の結果、接種した部位の腫れが、旧型より強かったためでした。治験はやり直しとなりました。ワクチンの接種が受けれずに免疫をもたない子どもたちが数年、数十年先には、今春のはしかの大学生のように、日本脳炎の患者になってしまう不安が残ります。
 あまり知られていませんが、実は二種混合ワクチンも一時供給不足になりました。
 1月に、日本の小児科医が切実に望んでいたインフルエンザ桿菌タイプb型(Hib)ワクチンの認可がでました。世界に遅れること10年、ようやくこれで髄膜炎、口頭蓋炎などの生命に係る病気からこども達を救えると喜んだのもつかの間でした。Hibワクチンはフランスの製薬大手サノフィ・アベンティスから輸入するのですが、ワクチンに微量の沈殿物があるという理由で輸入がストップされています。サノフィは問題ないとしていますし、実際世界で使われているワクチンですが、厚労省はダメだといっているようです。サノフィも日本のためだけに製造行程を変えるつもりはないようです。そのため日本では当分の間使えそうもありません。その間にも年間数十人のこどもたちの命がHibにより奪われ、その何倍ものこどもたちがHibの後遺症に苦しむことになってしまうのに!
 1998年、世界保健機関(WHO)がHibワクチンの乳児への定期接種を推奨する声明を出したことから、Hibワクチンは現在では世界100カ国以上で使用されるようになり、世界的に見ればHib感染症はまれな疾患となっています。
 こどもの重症細菌感染症のほとんどはHibまたは肺炎球菌が原因です。世界のほとんどの国はこの二つのワクチンを接種して劇的な効果をあげています。日本だけが接種できずに毎年多くのこどもたちがこれらの菌により亡くなったり後遺症に苦しんだりしています。今年、私は肺炎球菌ワクチンの治験に係ることができました。肺炎球菌ワクチンの早期の認可に少しでも貢献できたかと思います。
 今年はタミフルとワクチンに振り回された1年でした。そして現場では患者さんや保護者への説明に多くの時間をさきました。日本の薬事行政は迅速に問題対応のできるシステム変わってほしいものです。来年には問題が少しでも解決することを切に願います。
 今日は2007年最後の「本日の独り言」です。みなさん良い年をお迎えください。

2007.12.6
ベビーカー専用エレベーター
福岡市の天神地区で私は初めてベビカー専用エレベーターを見つけました。それは11月にオープンしたLoftにありました。エレベーターの扉の掲示には、
お客様へ
こちらのエレベーターは、車・ベビーカーでのお客さま専用とさせていただきますので、ご理解とご協力をお願いいたします。
とありました。
今まで、ベビーカー優先のエレベーターは多くありましたが、専用としたものはなかったように思います。これは東京の文化なのでしょうか。九州のサービス業界にはなっかたものです。この一点だけでもLoftは賞賛される店舗といえるでしょう。

2007.11.27
安全で楽しい遊具を作るために 1
 10月11日のNHKラジオ夕刊で、独立行政法人、産業技術総合研究所、デジタルヒューマン研究センター、人間構造理解チーム、チーム長の西田佳史さんの「安全で楽しい遊具を作るために」についての話がありました。興味ある内容でしたのでまとめてみました。
 最近は公園に設置した遊具で事故が起きるとその遊具が撤去されることが多く、そうなるとこども達の遊ぶ場がなくなってよくありません。そこで安全な遊具を設計するにはどうしたらよいか西田さんたちは研究してきました。
 まずどのような事故がおきているか調べてみると、半分以上が落下(転落)による事故でした。そのなかで24%が登る場所でおきていました。
 こどもが遊具でどのように遊んでいるのかというデータはありません。そこで科学的なデータを取るために西田さんは筋肉の微小な電流を計測するセンサーを使いました。西田さんはもともとセンサーの研究をしていたのです。こどもが力を入れると筋肉に微小な電機が流れます。その電気を計測することで、こどもが遊具のどこでどんな力を使っているのかがわかります。こどもが力をいっぱいつかっているところに落下の危険があると予測できます。
 こどもの行動の分析にはこの筋電計センサーとカメラを使いました。50人のこどもを年齢ごとに調査をしました。そして同じジャングルジムでもこどもの年齢によって登り方も違ってくることがわかりました。3歳以下と4歳以上では登り方が違っていました。石が出っ張ったところ手を引っ掛けて登る遊具では、出っ張りが2cm以下であると3歳以下のこどもには難しくて登れません。しかし出っ張りが5cmくらいになると簡単に登れるようになります。これを使うと設計者がどのあたりを難しく、または簡単にするか設計できるようになります。
 小さい子が間単に上まで登って落ちてしまうと大きな事故につながります。そこで小さい子は落ちるならできるだけ下で落ちるようにします。大きな怪我につながらないうちに落ちてしまうことで安全になります。最初の登りかけのところを難しくすると転落のリスクをコントロールできます。
 ところで遊具を安全にするとこどもが危険を察知する能力がなくなるのではという意見があります。西田さんたちは究極の安全な遊具をつくっているのではありません。落ちれば痛い、だけれども死んでしまったり重篤な後遺症の事故にはいたらない遊具を目指しています。

2007.11.27
安全で楽しい遊具を作るために 2
 またこどものけがの程度と原因の両方を分析するシステムを西田さんたちは開発しました。こどもの死亡原因は病気ではなく不慮の事故が1歳から19歳まで死因のトップです。こどもの事故を防ぐためには、どういう事故が起きているのか、その情報を集めるところからはじめました。国立生育医療センターと共同で開発した障害サーベーランシステムをつかって、多くの病院と協力して、事故にあった子が病院で治療するときの情報を蓄積します。。これまでに6000件以上データを集めることができました。公園ばかりではなく家のなかの事故も集めました。どういうところにけがをしているのか体の地図上にけがの情報を書き入れるソフトウエアをつくりました。するとけがが圧倒的に頭部に集中しており、なかでも左側の額にけがが多いことがわかりました。転倒、転落事故が多く、頭を打つ確率が高いようです。例えば、こどもは椅子やソファーで飛び跳ねて遊ぶことが多く、近くに机など角の鋭いものがあると落ちてけがをします。またソファーの背もたれ側から落ちて骨折をすることもあります。 
 家の中のどういうものにどういう危険があるか調べる指標として、けがをしてから完治するまでの治療費を試算しました。結果は椅子のけが 89000円、電気ポットの熱傷 79000円、味噌汁の熱傷 76000円、コーヒーの熱傷 55000円でした。転落と熱傷の治療費が高くかかっています。これは治療に要する通院回数が多くなるためです。お湯の温度を60度以下にするとずいぶん熱傷の危険性が減らせるデータが出ています。こどもがいる家では熱い味噌汁は食べないようにする。手の届かないところに置かないようにすることが重要になります。
 こどもが事故にあったら 親がちゃんと見ていなかったからだとよく言われます。また今までの事故予防の資料をみるととにかく「眼をはなさないでください」と書かれています。しかし24時間目を離さないでこどもを見ていることのできる保護者なんていません。そこで少しくらい眼を離しても危険な状態にならない安全な環境を作っていくことが事故予防につながります。危険を察知して知らせるセンサーの技術を開発して、例えばお風呂場に1歳くらいのこどもが来て 水遊びをし始めたらそれを教えてあげる(警報が鳴る アナウンスが流れる)。するとお母さんが急いで駆けつけて無事に保護できます。
 われわれの身の回りが計測の対象になって、具体的に数字とか映像で見せられるようになって、初めて科学的に扱えるようになってきます。これからは日常の科学技術が大きく発展し、安全まで高まってくることが期待ができます。
(10月11日のNHKラジオ夕刊、独立行政法人、産業技術総合研究所、デジタルヒューマン研究センター、人間構造理解チーム、チーム長の西田佳史さん「安全で楽しい遊具を作るために」より)

2007.10.11
日本の「食」の安全
 10月1日の日本経済新聞に日本の「食」の安全の記事がありました。そこには「日本は残りの物の市場。食のゴミ箱と呼ぶ人もいる」と書かれています。言っているのはASEANの食品加工会社の経営者です。彼は「日本人自身は誤解しているようだが、日本の安全基準は国際的にみて極めて甘い」と言います。この企業では厳格に検査した品を欧州連合(EU)と米国に回し、それ以外を日本に売ると言っています。食品の安全基準が厳しいのは日本ではなく、EUや米国です。特にEUは食品だけでなく、環境基準、工業規格、会計基準でも世界に強い影響力を与えています。ASEANの国々の輸出相手国は日本だけではありません。欧米にも輸出できるようにするために厳しいEUの基準を満たす努力をしています。ASEANに工場進出した日本の食品会社も、日本には輸出できても、EUの審査に合格できず欧米には輸出できないということもあるようです。ASEANの国々の政府もEUの指導で食品安全の国内法規を厳格化し始めています。日本の基準制度はアジアの国々には見向きもされないのが現実のようです。
 この記事が事実なら、国内事情しか知らない日本人は、いつのまにか世界の「残飯市場」で暮らすようになってしまいます。
ところで安全基準の設定と運用には難しい問題があります。基準に対する科学的な検証が十分にされているか。運用は厳格に行われているか常に検証されているかなど。この記事にはEUと日本の基準の違いの具体例は書かれていましたが、EUの基準設定と運用の詳細までは書かれてません。しかし欧州は日本と比べて情報公開は進んでいますから、その点からも日本のほうが問題ありそうです。

2007.9.20
こどもの片頭痛
 激しい頭痛で悩まされる片頭痛はこどもにもあります。日本頭痛学会の「慢性頭痛の診療ガイドライン」にも「小児の頭痛」の項目があり、そのなかに小児の片頭痛の記載があります。最近の論文からこどもの片頭痛の有病率は約7%、クリニックでは小児の頭痛患者のうち約50%は片頭痛であると書いてあります。ムカムカや嘔吐をともなう、ズキンズキンとする拍動性の頭痛で、さらには頭痛で日常の動作ができない、こような頭痛が5回以上あればこどもの片頭痛と診断します。
 ところでこどもには、突然の嘔吐を繰り返す、周期性嘔吐症という病気がありますが、これは将来、片頭痛へ移行するようです。また、お腹に特別に病気がないのに、突発的に強い腹痛をくりかえすのは、腹痛片頭痛として分類しています。
 9月18日に前原市の大塚神経内科の先生の頭痛の講演を聴きました。先生も4%位の頻度でこどもにも片頭痛があるといわれていました。こどもの片頭痛は両側性の締め付けるような痛みが多く、ほとんどの例で両親のどちらかに片頭痛があります。
 朝起こることが多く、不登校の半数以上に片頭痛があるといわれます。頭痛の訴えのこどもに、「頭は大丈夫」といってしまってはいけません。その子の訴えをよく聴き「片頭痛でないか」考えてみることが大事です。
 最近の研究で、片頭痛は脳血管の炎症の結果だとわかってきました。頭痛にたいして鎮痛剤で対処しては、痛みをわずかに抑えるだけで、血管の炎症は抑えることはできません。何回も血管の炎症が繰り返されると、血管がもろくなってきます。片頭痛の患者は脳血管障害(脳梗塞など)のリスクが高いという研究報告が次々と発表されています。特に前兆を伴う片頭痛はリスクが高くなります。片頭痛の治療には炎症物質を抑える、トリプタン製剤を使わなければいけません。このことは今後広く知ってもらう必要があります。しかしこどもにはトリプタン製剤の使用は認められていません。今後の問題です。

2007.8.15
「けが」をしたら
 「けが」をしたら、まず消毒、そして傷口をガーゼでおさえる。そしてこの処置を「付け替え」といって毎日繰りかえす。それが今までの「けが」への対処法でした。
 このやり方は間違いだとする考えがあります。そもそも「けが」をして皮膚が傷ついたら、皮膚自体に再生能力があるわけで、そこに消毒をすると再生しようとしている皮膚の組織を傷めるというものです。さらにガーゼで傷口をおさえるとガーゼが傷口の水分や皮膚の再生に必要な成分を吸収して傷口を乾燥させます。そのことがさらに皮膚の再生を阻害します。さらに「付け替え」をすると、ガーゼの網目が傷に食い込み,ガーゼを剥がす時に出血します。そのため治りかけた傷をさらに悪化させてしまいます。
 新しい「けが」の治療は、最初に傷口を水道水でしっかり洗います。日本の水道水には細菌はいませんから、医療用の無菌の生理食塩水を使う必要はありません。傷口に小さな砂が入っていたら、歯ブラシを使ってしっかり洗い落とします。砂はしっかり落としておかないと後で「しみ」のようになります。そして傷口にうるおいを与えて皮膚自体の再生能力を高めるために湿潤環境を提供して創治癒を促進する創傷被覆材をつかいます。
 この新しい考え方を裏付けるように、街のドラッグストアでも、けがのうるおい治療用にカットバンを作っているジョンソンアンドジョンソン社が「キズパワーパッド」を売り出しています。
 この「新しい創傷治療」「さらば消毒とガーゼ」を提唱しているのは夏井睦氏らです。詳しいことは夏井氏のホームページをご覧ください。http://www.wound-treatment.jp/

2007.8.15
予防接種の運用の変化
 「厚生労働省の検討会は10日、複数の疾病を予防するための混合ワクチンについて、対象疾病に罹患した経験がある人も定期接種を受けられるようにすることを決め、省令を改正する。」という記事が共同通信から流れました。今までは例えば、百日咳に罹ったことがあれば三種混合(DPT)ワクチン(ジフテリア、百日ぜき、破傷風)は接種できませんでした。以前は百日咳に罹った子どもには二種混合(DT)ワクチン(ジフテリア、破傷風)を接種できたのですが、数年前に省令が改正され三種混合ワクチンの1期から二種混合ワクチンが削除されてしまいました。
 医学的には罹ったことのある病気のワクチンを接種しても問題はおこりません。さらに免疫が高まります。しかし今までの症例では禁じていました。今回の改正で百日咳に罹った子は三種混合ができなかったという現場の問題がひとつ解決されました。
 予防接種のあつかいについては、4〜5年まえから厚労省の見解がよくかわりました。
 まずは異なる種類の予防接種の接種間隔の問題でした。例えば三種混合などの不活化ワクチンを接種した後は1週間あけるというのが決まりです。以前は水曜日に接種したら次の週の水曜日に接種していました。しかしこれに厚労省がクレームを付けました。法律的に1週間とは次の週の木曜日であると言い出したのです。そして次の週の同じ曜日の接種を禁じました。医学的には1週間あける必要はありません。間隔の基準は役所の決まりごとです。一般人の感覚では1週間は次の週の同じ曜日です。これを役所に認めてもらうのに数年かかりました。現在は省令で6日空けるとなりました。これなら次の週の同じ曜日に接種できます。現場の指導も元のようにやりやすくなりました。
 次の問題が三種混合の1期の接種間隔でした。1期の初回接種は3回しますが、以前はこの間隔に制限は設けていませんでした。極端にいえば1年あいても違反ではありません。しかしこれを8週間以内に行わないと公費の接種としないと厚労省が言い出しました。冬などは風邪をひいたりして接種間隔が8週間以上あくこともあります。全国の自治体の中にはこの省令を実直に守って8週間から外れたら公費の接種と認めなかったところもあるようです。しかし自治体の中にはこの省令があまりにも現場を無視しているとして眼をつぶったところもあるでしょう。これも後で病気等のやむを得ない場合は8週間以上も認めるとして、運用の実質は元に戻りました。
 なぜ現場を混乱させるだけの省令をここ数年出し続けたのか。そしてそれが最近になって現場の運用に支障のでにくい、元の形に近いものに戻ったのか。これは私の推測ですが、厚労省の予防接種の担当官が代わったからでしょう。現場を無視して法律の解釈ばかりにこだわる人からそうでない人に代わったのかもしれません。「木を見て森を見ず」が上にいると現場は困ります。

2007.7.15
乳児のスキンケア
 新生児は2ヶ月くらいまでは男性ホルモンの影響で皮脂腺の活動が活発です。そのため顔には赤ちゃんにきび(新生児ざ瘡)が、頭には脂漏性湿疹ができやすくなります。男性ホルモンが原因ですから、男児がよくなりますが女児でもなります。この場合は低刺激性の石けんを使ったスキンケアが重要です。スキンケアで少なくとも皮膚症状のそれ以上の悪化は防げます。ただし頭のスキンケアは石けんではなくシャンプーを勧めます。頭に石けんを使うとスカムができて、これが毛あなの入り口に付着してかえってよくないことがあります。スカムとは石けんと水道水が反応してできる「あく」みたいなものです。石けんを使った後の洗面器に浮かんでいる白いかすのようなものがスカムです。赤ちゃんも頭はシャンプーで洗ってください。

2007.6.28
アレルギー検査
 6月10日に横浜で開かれた日本アレルギー学会に行ってきました。食物アレルギーの教育講演で、乳児の食物アレルギーを疑ったらアレルギー検査は早めに行い、早めに対策をとることが重要という話がありました。母乳栄養の乳児で顔や体の湿疹がみられる場合、母親が摂取した鶏卵や乳製品が母乳を通して乳児に入り、アレルギー反応の一つとして湿疹を引き起こすという考えがあります。今までは血液検査によるアレルギー検査は生後6ヶ月を過ぎてから行うのが一般的でした。しかし症状が強い子には生後4ヶ月や5ヶ月でもアレルギー検査で陽性反応がでます。湿疹があったらステロイド剤で一時的に治して生後6ヶ月までアレルギー検査を待つのではなく早めの対応を勧める話でした。私も症状の強い子には早めに検査をしていました。

2007.5.24
はしか(麻疹)
 最近は麻疹をみなくなりました。若い小児科医は見たことがないでしょう。麻疹は過去の病気になりかけていたのに、この春から関東で流行しています。(実は昨年も関東では麻疹の発生はありましたが流行にはなりませんでした。)
 麻疹はどんな病気でしょうか。麻疹は感染力の強い病気です。患者さんの咳などで出た麻疹ウイルスは部屋の中に約2時間くらいは漂っています。だから患者さんがいなくなっても感染することがあります。これを空気感染といいますが、空気感染する病気は麻疹、水痘、結核などわずかです。
 麻疹はまず高い熱がでます。熱が出たばかりの時期の診断は困難です。口の中の粘膜に小さな白いブツブツ(コプリック斑)があれば麻疹を疑います。約3日たつと全身に赤いブツブツがでます。高い熱は約1週間続き、咳がひどくなり、からだが衰弱します。まれに息苦しくなる肺炎、意識がなくなる脳炎をおこして命を落とすことがあります。麻疹はウイルスの病気ですから抗生物質は効果がありません。麻疹ウイルスを殺す薬はありません。直接的な治療法がないのです。ただし前もって予防接種をしていれば95%の確率で麻疹にならずに済みます。麻疹は昔は「命定め」といわれ、こどもにとってはきつい病気でした。 麻疹にならないための唯一の方法は予防接種です。WHOは麻疹を地球上から撲滅しようと各国に働きかけています。欧米では90年頃から麻疹の予防接種を2回するようになり、その結果麻疹の発生は皆無になりました。2回接種が始まったきっかけは今回の日本と同じように80年代の終わりに米国の大学生の間で麻疹が流行したためでした。
 ワクチンの接種率が95%以上になると流行はなくなります。最近の幼児の接種率は95%を超えていますが、今回患者数が多かった高校大学生の年齢は90%を切っているいるようです。これはこの年齢がMMR(麻しん・風しん・おたふくかぜ混合)ワクチンのトラブルの時代に当たるためです。当時MMRワクチン接種後に髄膜炎の副反応が多く出たため、MMRワクチンが中止になり、麻しん単独のワクチン接種も控えた保護者がいらしたからです。
 ワクチンの接種率が落ちたため病気が流行したことは過去にもありました。百日咳ワクチンが70年代に副作用が問題になり75年に一時中止になりました。その直後から百日咳の患者数が急増し百日咳脳症で死亡する乳児も急増しました。81年に新三種混合ワクチンが再開された後から患者数もようやく減少しました。
 さてこれで考えさせられるのが日本脳炎ワクチン差し控えの件です。一昨年から日本脳炎ワクチンの差し控えが続いています。毎年100万人近い日本脳炎ワクチンの未接種者がでています。昨年は未接種の3歳児の日本脳炎が報告されました。新たな患者発生を防ぐためにも早急な対応が必要です。

2007.4.15
喘息と「鼻かぜウイルス」
 春先には喘息の患者さんが増えます。でもなぜ春先には喘息発作が多くなるのでしょうか。今までは季節の変わり目で気温差が大きいからと言われたりしていました。しかし最近の研究ではこの時期に多い「鼻かぜウイルス」が原因のひとつだということがわかってきました。熱はなくただ鼻汁だけを引き起こす「鼻かぜウイルス」は喘息のないヒトには鼻汁をださせるだけです。しかし喘息のあるヒト、いわゆる気道過敏性のあるヒトには、このウイルスが喘息発作を引き起こす誘因になると考えられ始めました。喘息は秋にも発作が多くなります。今までは喘息の原因のひとつであるダニが秋には死んで死骸が多くなるからだといわれてきました。しかしこれも秋の「鼻かぜウイルス」が誘因になると考えられ始めました。気道過敏性と、アレルギーの原因となるダニの糞や死骸の増加、それに「鼻かぜウイルスが」喘息発作の誘因というのが最近の研究結果です。そしてもうひとつ春先なら黄砂も忘れてはいけません。

2007.4.6
インフルエンザウイルス
 ようやく収束に向かってきたインフルエンザですが、今年は流行の始まりが遅かったため、A香港型、Aソ連型、B型の3型がほぼ同時に流行し、2回3回とインフルエンザに罹った子どもたちもいました。インフルエンザで多くのヒトが辛い思いをしているなかで、タミフルと異常行動の偏ったマスコミ報道や厚生労働省の朝令暮改の声明は、子どもや保護者を不安にさせ医療現場を混乱させただけでした。
 私は年に数回、急患センターに出ますが、昨年まではインフルエンザは早く検査をしてタミフルを処方してほしいという保護者の方が多かったのですが、今年は「タミフルを飲みますかそれとも飲まずに経過をみますか」と聞いただけで「テレビであれだけ問題になっているのにまだタミフルを飲ませるつもりか」と憤慨される保護者もいました。幸い私のクリニックでは保護者のみなさんは冷静に話を聞いてくれました。そして不安をあおるだけのテレビ報道に疑問を持たれているかたも多かったようです。
 ヒトに感染するインフルエンザウイルスには特徴があって、気管支や肺などの気道の細胞にしか感染しません。なぜならインフルエンザウイルスが増殖するためにはヒトの気道の細胞がつくるたんぱく質分解酵素が不可欠だからです。しかし気道の細胞にしか感染しないのにどうして異常行動、熱性けいれん、脳炎などの神経症状がでるのでしょうか。インフルエンザ脳症では脳の腫れ、いわゆる脳浮腫が著明です。最近の研究でこの脳浮腫が脂肪代謝の異常と関係があり、インフルエンザによる高熱で代謝を司るある酵素の働きが極端に低下して、その結果として脳浮腫になるということが明らかになりました。そしてその熱で働きが低下する酵素の遺伝子変異も明らかになりました。この遺伝子変異をもつ子どもは脳症になりやすいわけです。最初からこの遺伝子変異を調べてわかっていれば予防もできるわけです。もちろんインフルエンザ脳症がこの酵素の異常だけで起こるわけではなく、他の代謝異常も関係していると考えられています。
 このことからもインフルエンザの症状悪化には個人の遺伝子レベルでの違いが関係していることが予想できます。ゆえに一律にインフルエンザは休んでいれば治るとは言ってはいけません。
 最後に、タミフルを飲んだ後の異常行動ばかりを調べても、タミフルとの因果関係は解明できないでしょう。もともとインフルエンザ自体が異常行動を引き起こすからです。タミフルを飲まないヒトの異常行動を併せて調べれば少しは因果関係を論じることができるでしょう。しかしそれは症状からみた推論の域を出ません。やはり最後は薬理学、生化学、免疫学そして遺伝子レベルでの基礎研究の結果を待つしかないと思います。それには異常行動をおこした患者さん自体の遺伝子のレベルまでの研究が必要になります。患者さんの研究に対する協力があって初めて真実は明らかになります。