※※※※※※※※※※※※※※※※ 人体デッサン ※※※※※※※※※※※※※※※※ 2年C組、美術の時間。 場所はもちろん、美術室。 丈二 「先日の写生会、あの時はなかなか良い作品が提出されていたな。 ‥‥そこでだ、今回は趣を変えてデッサンの課題とする」 神一郎「今日はデッサンかぁ」 深雪 「私、苦手だなぁ」 フレッド 「ところで、何をデッサンするんですかぁ?」 丈二 「まぁ、何でも良かったんだが‥‥今回は人体デッサンに挑戦してもらいたい」 3人 「人体デッサン?」 人体デッサン‥‥とは、人間の身体の骨格・プロプーション・動きなどを的確に捕え、それを描写することを指す。 絵画の基礎の基礎、本来ならばもっと初期に行うべきカリキュラムであった。 深雪 「‥‥って言うと、もしかして‥‥ヌード?」 フレッド 「わぉー」 丈二 「よし、このわしがいっちょ脱いでやるか‥‥って、おいおい」 フレッド 「違うんですかぁ?」 深雪 「やだっ、想像しちゃったよぉ」 丈二 「おのれが言い出したんだろが!」 神一郎「おぇ‥‥」 丈二 「何だ菱之宮、わしの裸なんか描けないってか?」 神一郎「い、いや‥‥そういうわけじゃ‥‥おぇ」 深雪 「おまけにバックは薔薇‥‥とかだったりして」 フレッド 「ボクはなかなかナイスだと思いますけど〜」 丈二 「そんなにわしのモデルがいいなら考えんでもないが、 残念ながら、今日のモデルはわしじゃないのだ‥‥さ、入ってきていいですぞ」 丈二が美術室の外へ向かって合図をすると、扉を開けてモデルの人物が登場した。 学園長「ふっふっふ‥‥いやぁ、参ったなぁ」 3人 「がっ、がっ、学園長!?」 学園長「やぁ」 丈二 「ちょ、ちょっと学園長、私は学園長なんて呼んどりませんが‥‥」 学園長「え?私じゃなかったのかね?」 梅華 「はぁーい、お待たせー!」 3人 「梅華先生!?」 学園長「なんだ、モデルって梅華くんのことか」 丈二 「当り前ですよ、誰が学園長をモデルに人体デッサンなんかしますか」 学園長「ちぇっ‥‥」 学園長はちょっぴりすねた様子で、とぼとぼと帰って行った。 梅華 「どしたの、学園長」 丈二 「何でもないですよ。すーぐ首を突っ込みたがるんだから、あの人は‥‥。 それより、今日は無理にお願いしてすんませんでしたね」 梅華 「とーんでもない。デッサンのモデルなんて光栄ですわ」 丈二 「そう言ってもらえると助かります」 深雪 「良かった。モデルって梅華先生のことだったのね」 フレッド 「学園長が現われた時は、ヤラレタ〜って思いましたよ」 神一郎「しかし、それにしても‥‥梅華先生のチャイナはいつみても悩ましい」 祭事用チャイナの鮮やかな赤が、とってもまぶしい。 丈二 「というわけで、モデルは特別に梅華先生に引き受けてもらった。 こんなチャンスは滅多にないから、しっかりデッサンするんだぞ、お前ら」 3人 「はーい」 梅華 「あらいやだ‥‥あんまり、見つめないでね」 神一郎「い、いいのだろうか‥‥こんなことがあっても」 丈二 「念のために言って置くが、ヌードデッサンではないからな。 妙な期待を膨らませるんじゃないぞ」 神一郎「わ、分かってるってば」 フレッド 「それにしても、すばらしいプロポーションですねぇ。惚れ惚れしますぅ」 深雪 「本当、本当、羨まし〜」 梅華 「おだてても脱がないわよ」 丈二 「さぁ、おしゃべりはここまで。 ほらほら、早くイーゼルとスケッチブックを用意せんか」 3人 「はーい」 3人はモデルの梅華を囲んで、思い思いの場所に陣取る。 丈二 「じゃぁ梅華先生、ポーズをお願いします」 梅華 「はいはーい」 3人 「おーっ!」 な、何とも言えないセクシーなポーズを決める梅華(笑)。 梅華 「いいこと、ちゃんと描かなかったら『往復びんた』よー」 神一郎「なぬぅ!?」 深雪 「ほ、本腰入れて描かなくちゃ‥‥」 フレッド 「‥‥(オウフクビンタ?‥‥何でしょうか?)‥‥ま、いいや、 時間がないから、早く取りかからなくちゃ」 熱心にデッサンに励む3人。 やがて時間はあっという間に流れ‥‥。 丈二 「はい、今日はそこまでだ。 梅華先生もお疲れさまです、もうポーズ崩していいですから」 梅華 「あ、そうですか‥‥ふぅ〜、モデルってのも結構疲れるものですわね」 丈二 「さて、では残りの時間は講評としよう。 ‥‥じゃぁまずは北丘、作品を見せてみろ」 深雪 「は、はい‥‥じゃん!」 深雪のデッサンは、まだ途中であった。 丈二 「うーむ、完成度70%ってところか? まぁ、全体的なバランスは良く取れているな」 深雪 「ポーズが複雑で、全体のかたちを取るところに時間がかかっちゃいました」 梅華 「でもなかなか良く描けているわね。 仕上げまでちゃんと出来ていれば、もっと良かったんだけどね」 丈二 「というわけで、北丘の作品は‥‥B°だな。 ‥‥よし、次は菱之宮、作品を見せてみろ」 神一郎「はい‥‥じゃん!」 神一郎のデッサンは、まるで劇画調であった。 丈二 「お前、漫画の読みすぎじゃないのか?」 神一郎「そ、そうですか?‥‥自分ではうまく描けたと思ったんだけど」 梅華 「まぁまぁかしらね。出来ればもっと可愛らしく描いてほしかったけど」 丈二 「というわけで、菱之宮の作品は‥‥B´だな。 ‥‥最後はフレドリーケ、作品を見せてみろ」 フレッド 「はいー‥‥じゃじゃん!」 フレッドのデッサンは、まさしく近代アートであった(笑)。 丈二 「な、なんだそりゃ!?」 フレッド 「メイ先生の美しさを、アプストレ(抽象的)に表現してみましたー」 丈二 「ばっかもん!デッサンを抽象的に描く奴があるかっ!!」 梅華 「‥‥往復びんた決定!」 びんたびんたびんたびんたびんたびんたびんたびんた‥‥。 フレッド 「あうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあう‥‥」 美術室には、拍手に良く似た、乾いた音がこだましていた。 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ あとがき フレッド 「ひ、ひどいですぅ‥‥」 梅華 「大丈夫よ、ちゃんと手加減したんだから」 神一郎「そういう問題か?」 深雪 「くぅ〜‥‥すぴぃ〜‥‥」 丈二 「寝るな、コラ!」