迷探偵 水島茂実の珍推理[2]


  問題編
 
 どうやら事件にはお約束の展開というのがあるようね。
 私は三人の容疑者を前にそう思った。だって事件が起きると、何故か待ってましたと言わんばかりに容疑者が三人ほど出没するのは納得できないのよね。某少年名探偵漫画の事を言ってるんだけど。
 とりあえず、私――水島茂実は例によって例の如く事件に巻き込めれてるって訳。
 今回巻きこまれたのは、血も凍るような恐ろしい殺人事件、と言っとけばそれなりに雰囲気出ると思うけど、単なる撲殺事件なのよね、この事件。
「ですからね、茂美ちゃん。犯人がこの中にいるのは間違いないんだよ」
 たよりない風采の若い刑事――浦島刑事が事件について説明し終わった所だった。
 えーっと、事件について簡単に説明するね。
 今日私は萌がいないからゆっくりできると思って急いで家に帰ろうとした所、偶然にも殺人事件の遭遇したの。萌がいないというのは彼女が掃除当番だからなんだけど、そんな事は関係ないから冥王星辺りに置いとくとして、とにかく私は事件の第一発見者になったの。
 私のお父さんは警視だし、私もそれなりに警察業界では有名だから、一応捜査に加わることにしたの。と言っても、本格的に、ではないけどね。
 で、諸々の理由から目の前の三人に容疑者が絞られたんだけど、どうやって絞ったのかは永遠の謎ね。こんな誰が犯人でもおかしくないような場所で被害者は死んでいたのに、三人まで絞り込むなんて警察もやるじゃないって誉めてあげたい気分よ。
「で、浦島さん。殺された被害者――名前忘れたけど――は撲殺なのよね? 凶器とかは見つかったの?」
 目の前に都合よく集まってくれてしかも文句一つ言わない容疑者たちに感謝しながら、私は浦島刑事に質問した。この浦島刑事、推理小説お約束の無能刑事なんだけど、本人に言うと絶対傷つくからいってないの。
「それがまだ見つかってないんだ。犯人があの三人の中にいるのは間違いないんだけど、彼らに凶器を捨てに行くだけの時間はなかったんだ」
 容疑者たちに聞こえないように小さな声で話す浦島刑事。
「お約束の消える凶器って訳ね。鈍器のようなものが凶器ってはなしだけど、具体的にはどう言ったものなの?」
「えーとね、オニギリぐらいの大きさの石のようなものだと思われるんだよ」
 …それなら話は簡単じゃないの。丁度あそこに水道があるから…。
「氷を使ったトリックね。氷の石で被害者は殺され、あそこの水道でとかされたのよ」
「それは駄目だよ、茂美ちゃん。あそこの水道で氷を溶かすのは良いとして、この炎天下でどうやって氷をここまで運んで来るんだい? とけてしまうよ」
 私は言葉に詰まった。こういう駄目刑事って、推理力とかは全然ないくせに一人前に否定だけはしてくるから困り者だわ。それはそうと氷が駄目ということは、他に凶器があるのだろうけど、所持品検査はさっきやったって言うし…。困ったわね。
 ていうか、早く問題編を終わらせよう。こんなのに時間をかけちゃ、名探偵としての私の名が泣くわ、うん。
 さて、今までほったらかしにされていた容疑者三名の紹介、さっさと済ませましょう。
 まず一人目。名前は唐沢一郎、三十三歳。職業はプログラマー。目つきがいやらしい嫌な男だわ。恋人作るとしてもこう言うのは絶対駄目ね。
 で、二人目が大家進介、十九歳。職業――はないわ。彼はまだ大学生。空手は黒帯らしいけど、そんな風には見えないわね。
 で、最後は石川良子、二十一歳。職業は普通の会社員なんだけど、学生時代は柔道をやってたみたい。たしかオリンピックの日本代表に選ばれそうになった事もあるとかないとか。
 …こんな感じかしらね、容疑者の紹介は。
 ま、私にかかればこんな事件、ちょちょいと解決なんだけど。今回はちょっとだけ難しいかも…。
「浦島刑事。この三人には被害者を殺害する動機というのがあるんですか?」
「ああ。一応三人とも被害者とは顔見知りだから、あるんじゃないかな。まあ、今回は容疑者に喋る権利はないから、何とも言えないけどね」
 あ、だからこの三人、今まで何にも言わなかったんだ。さすが作者の力は凄いわね、と私は本気で感心した。だけど、それなら私を事件に巻き込まないでくれる!!
 それはそうと、事件の謎は解けたわ。
 ………。
 ……。
 …。
 
 

  解決編
 
「浦上刑事。犯人はこの人よ、ビシィッ」
 私は二人目の容疑者――大家進介を力強く指差した。彼は驚きで目を丸くしたかと思うと、次の瞬間には怒りを露わにして怒り出していた。
「お、おい、あんた。勝手なこと言うなよ。何で俺が犯人にされなきゃいけないんだ。いい加減にしてくれよ」
「犯人の決まり文句ね、それは」
 別に犯人じゃなくても、いきなり犯人扱いされたら、そう言う言葉を吐くだろうけれど、そんな事は当然、七光年彼方に放置してるけどね。
 私はこの事件で一番重要な謎――凶器消失に関しての答えを持っており、その事からこの事件の犯人が大家であるというのが解った。私がその事を一同に向って言った。
「つまり、凶器を消失できた壜物はこの大家しかいないというのかい、茂美ちゃん」
「ええ、そうよ、浦島さ――いえ、勤務中だから浦島刑事かしら」
 と言うところまで話が進むと、残る容疑者は用済みという事になったので、すぐさま釈放された。まったく、いい加減な話よね。
「で、俺は一体どうやって凶器を消失させたんだ? それにそもそも凶器って一体何なんだよ?」
 とぼける、とぼける。お約束、ってわけね。でも作者が早く終わらせろって後ろの方で煩いから、さっさと真相を言うわね。
「オニギリぐらいの大きさの石のような凶器――それは、貴方の拳よ。――そう、あなたは拳骨で被害者を殴っただけなの。手についた血痕は、そこの水道で流せば済むわ。
 三人の容疑者の中でこの方法で被害者を殺害できたのは、空手をやっている貴方だけなの」
 さあ、これで終わりよ。私は心の中で勝利を確信した。そしてその確信が正しかった事を証明するように、大家がガクッとうなだれながら、自分の犯した罪を認めた。
「その通りだよ、俺が犯人だよ」
 これまたお約束の罪の認め方よね。私はそう思いながら、事件現場を後にした。
 それにしても、こんなふざけた消失トリックを用いないで欲しいわ。これがまともな推理小説なら、絶対に壁本になってるに違いないのだから。
 密室トリックで、発頚で隣室の人物を殺害しタというバカミスに匹敵するわね。次にもし事件に関わるとしてももっと本格的なのに出会いたいわね。
 
 


  後書

 どうも富山です。まったく忘れていたこの事件の解決編を書きました。
 ないようは全然駄目な代物です。
 言うことは何もないです。
 それでは。


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