| 模倣の殺意
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著者 :中町信
出版 :創元推理文庫(東京創元社)
ジャンル:本格ミステリ
媒体 :小説
お薦め度:★★★★ |
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中町信のデビュー作の全面改稿版。旧作の名前は『新人賞殺人事件』。
この作品は出版するたびに作名が変わっているらしく、かなりの困り者。だがその作品としてのクオリティは高い。
七月七日七時に坂井正夫は死んだ。
このプロローグから展開される物語は圧巻。1970代の作品にも拘らず、今読んでもその文章には古臭さがありません。淡々としていて、洗練されてはいませんが、だからこそ読みやすいのかもしれません。
二人の探偵役が独自に導き出した二人の容疑者。だがそのどちらにも鉄壁のアリバイが……。
文章と同じく淡々とした、それでいて小気味よい展開は好感が持てる。
ネタばれ
坂井正夫が二人いるって言うのは全然気づきませんでした。でもって、秋子と津久見の記述に一年間のタイムラグがあるっていうことも。確かに、坂井正夫の描写の違いは気づいてたけど、人によっては印象ってのが違うから、気にはしませんでした。それに、これは言い訳だけど、この年代に発売された小説に、こういった叙述トリックが使われているとはまったく思ってなかったので。
日本で始めての叙述トリックを用いた作品で、だから当時の選考委員には良い顔色をされなかったそうです。
ちなみに『新人賞殺人事件』版では、本書の解説にもありますが、最初の時点で坂井正夫が二人いることは解ってるし、各章の最初に日にちだけではなく曜日までが記載されていますが、きちんと一年分のラグは生じていたらしいです。
当時の読者は、その手の免疫がまったく無かったせいか、坂井正夫が二人いることは知っていても、作中の坂井正夫が別々の人物とは誰も思わなかったそうです。私も当時読んでいたら、二人目はいつ出てくるのかな? と首をかしげていたのかもしれません。
そしてここまであからさまに真相を提示しているからこそ、その驚きは、インパクトは桁外れだったでしょう。今こういう手段を用いると、すぐさま見抜かれてしまうのがオチです。ああ、出版当時に読みたかった。 |
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| 天啓の殺意
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著者 :中町信
出版社 :創元推理文庫(東京創元社)
ジャンル:本格ミステリ
媒体 :小説
お薦め度:★★★★ |
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中町信の第六作目にして最高傑作と呼び名の高い作品。
『模倣の殺意』が面白かっただけに気合を入れて読んだ。
推理作家・柳生照彦が出版社に持ちかけた「犯人当てリレー小説」。それは柳生の問題編に対し別の作家が解決編を書き、さらにそのあとに柳生自身の解決編を発表するというもの――要するに作家同士の知恵比べとも呼べるこの企画に選ばれた解決編の著者はタレント作家の尾道由紀子。
企画は順調かと思われたが、問題編を編集者の花積明日子に渡した柳生はその後失踪してしまう。
解決編はどこからも見つからず、さまざまな痕跡から柳生は自殺したのではないかと見られたのだが……。
小気味良い文体は以前と相変わらず。柳生の問題編がノンフィクションというのにも興味をそそられました。
明日子が柳生の問題編を片手に、小説と現実を照らし合わせていく家庭が面白い。編集者だけあって、行動力に富んでいるんですよね。読んでてかっこいいと思いました。
ネタばれ
神永朝江の殺人が作中作と思わせておいて、実は作中作中作という仕掛けの作品。つまりはその後の明日子の捜査が作中作。こういう叙述トリックはややこしすぎてあまり好きになれないのですが、それでも面白かった。やはり『模倣の殺意』のような、単純でいて、それでも大きな仕掛けというほうが好きなのですが。
まあ、この作品の一番面白いというか感心したところは、問題編それ自体が、柳生の計画指示書だったという事でしょうか。ちなみに犯人=柳生と思っていました。推理おおはずれ。
今回も作品中に仕掛けを見抜くための要因がありました。それはノンブル……絶対気づけませんよ……。 |
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| SIREN
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メーカー:ソニー・コンピュータエンタテインメント
ジャンル:ホラー/アクション
媒体 :PS2ソフト
お薦め度:★★★★ |
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あきらかな名作にも拘らず星が四つなのは、要するにその難易度ゆえ。
あまりに難しい難易度は攻略本必須と言われるほど。
午前零時、羽生蛇村にサイレンが響き渡り、村は隔離された。村人が次々と屍人と化していく中、それでも足掻き続ける登場人物たちは、リアルそのもの。そしてその耐久力も。銃で撃たれれば簡単に死に、走っていると息切れして足が遅くなる。唯一人と違うのは、超人並の回復力と、視界ジャックという他者の視界と同調する幻視の能力。これこそが全ての登場人物がすでに普通の人ではないことを物語っている……。
この作品の恐怖は、幽霊のそれとはまったく違い、追い詰められた絶望感、不安感、追われる恐怖がプレイヤーを襲います。
現在位置が表示されないある意味で不親切な地図は、無我夢中で逃げ惑い道に迷ったプレイヤーを不安にさせ、先がまったく見えない闇夜にもかかわらず、屍人たちの目を恐れ、ライトを付けるのも躊躇ってしまいます。
何も考えずに走ればその足音で発見されたり、そして敵に捕まりゲームオーバー。
私も何度も何度も、道に迷い、挙句敵の懐に飛び込んで銃殺されるなどの失態を何度も何度も繰り返しました。
ゲームには難しい操作はまったくなし、憶える事も少ないというシンプル設計のはずなのに、慣れてしまえば1ステージ、二分近くでクリアできてしまうのに、それでもクリアには時間がかかった。じっくり考えて、全体を把握し、そして対策を立てるのがこのソフトの醍醐味です。
ちなみに私は、攻略本を買いはしたものの結局読まずにクリアしました。冬に2が出るので、こちらも私は買います。
ネタばれ
十人近くの登場人物が屍人と化し、やがてプレイヤーを襲い始めるのには本当にびっくりしました。怪現象にはもちろん理由があるのですが、、そんな理由など私にはどうでも良くて、とりあえず生き延びる事だけを考えてしまいました。
一番印象に残ったのはやはり、学校の先生が一人の生徒を守るために、ガソリンに火をつけ自分の身体ごと屍人を吹き飛ばした事です。そして先生ものちに屍人とになり生徒の前に現れたときには驚きました。
あと、放送中止になったCMでも有名な、女の子が両親の元へなんとか逃げ帰ったときには、すでに自身が屍人となってしまっていたシーンです。
「お父さん、お母さん」と教会の窓を叩くその姿はすでに屍人という、あのCMです。 |
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| 長い長い殺人
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著者 :宮部みゆき
出版 :光文社文庫(光文社)
ジャンル:サスペンス
媒体 :小説
お薦め度:★★★★★ |
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初めての宮部みゆき作品。
今まではその作者の知名度ゆえ逆に読むのを敬遠してきたのだが、読んでみてそれを悔やんだ。面白いではないか。
まず目に付いたのが語り部がユニークであるということ。
財布だ。登場する語り部のすべてが財布なのだ。そして財布であるにも拘らず、宮部みゆきはそれぞれに特徴を与え、見事に書き分けている。最近良く見かけるような、安直な、そして不自然で特異なキャラクターなどは存在しない。どこにでもいるような財布や登場人物はきちんと描き分けられており、尚且つ自然体だ。
必要以上の説明文もない。本格ミステリを読んでいると、やたらと説明文が――しかも退屈な説明文が多い気がするのだが、この作品には退屈な部分がまったく無い。キャラクターの会話などを聞いているだけで、情景が目に浮かぶ。
ストーリーは格別奇を衒ったものではない。まず最初に殺人の疑いが濃厚な轢き逃げ事件がおきる。容疑者は被害者の妻でアリバイもあるのだが、彼女の愛人の存在が浮かび上がるとともに、アリバイは意味を成さなくなる。そして愛人の妻もやはり殺されてしまった。
警察はこれを保険金交換殺人と睨み捜査を進め、そしてマスコミも同調するように進めていく……。
こういった物語の展開を、それぞれの財布が断片的に語って行き最後には見事に繋がっていくのだから圧巻である。
ネタばれ
犯人にはまったく意外性が無く、最初の容疑者がそのまま犯人です。アリバイトリックも無く、実行犯として第三の人物がいきなり出てきたのですが、「おいおい」とはまったく思わず、それを素直に受け入れられました。このあたりが宮部みゆきの凄さであり実力なのだと解釈しています。
お気に入りのエピソードは「少年の財布」のゲームソフトを強奪されるシーンです。かつては本当に並ばないと買えず、買えたとしても帰路で柄の悪い兄ちゃん(高校生ぐらい)に奪われるようなソフトがあったものです。かくいう私も奪われかかった人間の一人なんですけどね。だってゲームソフト買うために並んでいると、道路の向かい側に明らかに怪しい三人組の男がいたのですから。これは今でも憶えています。買ってすぐにとっとと撤退したのですから(笑)
ちなみの今作動機については特に思うところはありませんでした。まあ、私はミステリの殺人の動機ほどどうでもいいものはありませんから。殺したかったから殺した……それで良いんですよ。理解もできないし納得もできなくても、事実そういう人間は存在するのですからね。 |