私たちの登山入門(団体登山編)

      1. ☆印は無意味
      2. 山で一番恐いのは天候
      3. 一番楽なのは、前から二番目
      4. ハンデをつけて登ろう!
      5. 登山はノリである
      6. おしゃべりしながら楽しく登ろう!
      7. 休憩はしない!
      8. 頂上をめざさない!
      9. 下山の時に事故がおきる
      10. 登山で3番目に楽しいのは、下山を終えて帰る時
      11. 登山で2番目に楽しいのは、帰って風呂に入る時
      12. 登山で1番、楽しいのは、寝酒を飲みつつ蒲団に寝転ぶ時



 登山というものは、ノリで、ずいぶん楽に登れるものです。
「体力がない」
と言ってる人たちの多くが、私たちの登山に参加すると一般の登山客より早く頂上に登ってしまいますが、これにはわけがあります。

 私は、マラソンが大嫌いです。でも、高校時代は速い方でした。理由は、バスケットやサッカーが大好きだったからです。意味もなく走るマラソンが大嫌いな私でも、サッカーに熱をあげ、ボールを追いかけ回して走ることは大好きでした。だから、決して、体力がないからマラソンが嫌いだったわけではありません。

 これは、登山にも言えます。登山が嫌いな人は、決して、体力がないからではありません。体力の有る無しにかかわらず、登山を嫌う人は、嫌ってしまうのです。そして、その理由は、だいたい「面白くない」の一言につきるのです。

 面白くない。

 そうでしょう。面白くないでしょう。山なんぞに登って何が面白いものですか。ただ、登って降りてくるだけだったら、これほど面白くないものはないでしょう。これは、旅にだって言えることです。何時間も電車に乗って、北海道に行って、何も観光せずに帰ってくるだけだったら、何が面白いもんですか。尻は痛くなるし、お金もかかるし、疲れるし。
 でも私たち旅人は、決して北海道に行って帰ってくるだけではありません。人とふれあい、景色を楽しんだりします。そう言う意味で、山岳会が行なうような、登って降りて来る登山は、電車で北海道まで往復してくるような旅と一緒です。鉄ちゃん(鉄道マニア)ならともかく、そんな旅は、一般の旅人には耐えられないはずです。

 旅人の目から見れば、山岳会のやってる登山は、何時間も電車に乗って、北海道に行って、何も観光せずに帰ってくるだけの旅をしている、鉄ちゃん(鉄道マニア)と同じに見えます。
 やたらと山装備に金をかけ、ブランド物のグッツに身をかため、ただ、ひたすら登ることに生きがいを感じ、どんな苦しみも厭わず、そして、平日には階段でウサギ跳びなどをして体を鍛えています。
こういう人たちと一緒に山を旅しようと思うと、旅人たちには、ギャップの大きさに苦しみます。ましてや、こういう人たちが書いた『登山入門』や『登山ガイド』などは、旅人には、参考になりにくいものです。では、どういう登山理論が、旅人にとって必要なのでしょうか? そこで今回は、団体登山の方法を述べてみたいと思います。


1. ☆印は無意味。
   
 登山ガイドなどで、難易度を☆印で現わしているのを見かけます。☆は初心者向き。☆☆は熟練者向き。☆☆☆は大ベテラン向きと言った具合です。山のことを知らない私たちにとって、この☆印は便利な目安ですが、☆印を信用することは危険です。
 何故ならば、☆の山でも、40キロの荷物を背負い、走って登れば、☆☆☆の山となんら変わりがありません。逆に、☆☆☆の山も、しっかりとしたリーダーのもとに、ゆっくり、無理をせずに登れば、☆の山となんら変わりがないからです。☆の山を☆で登るか☆☆☆で登るかは、貴方しだいなのです。



2. 山で一番恐いのは天候。

 実は、登山で一番恐いのは天候です。ですから私たちは雨天中止にしています。しかも、各自の判断に任せてます。各自の判断で、すっぽかしてよいのです。☆の山も霧が出たら☆☆になりますし、雨に降られたら☆☆☆になります。要注意です。


3. 一番楽なのは、前から二番目。

 団体で山に登る時、一番楽なのは、前から二番目です。逆に、一番きついのは、一番後ろです。ですから、体力の無い人は、前の方を歩かなければなりません。
 素人登山団体の犯しやすい最大のミスは、これを知らないで、体力のある者が、ドンドン前を歩いてしまい、体力のない者が、ドンドン後ろに遅れて追いかけてしまうことです。こんな馬鹿な登山をやってしまっては、登山が嫌いになる人が増える一方です。
「俺は体力あるんだぞ!」
と、体力のない人をドンドン追いたて、追越すなんて最低なことです。そういう見栄っぱりな人は、無視しましょう。登山は、体力測定ではないのです。


4. ハンデをつけて登ろう!

 ハンデをつけて登りましょう。私たちは、スポーツをやるのではないのですから、なるべく平等に体力を消耗するようにハンデをつけましょう。登山の順番、荷物の重量を人によって変えるのです。
 もし、団体旅行をしていて、一人だけ苦しい思いをしている人がいたら貴方はどうしますか? そんな旅が楽しいですか? もし、前もって体力的に苦しむ恐れのある人がいたら、それを未然に防いだ方が良いと思いませんか? 私たちは、体力に自信のない人には、一切、荷物を持たせません。その代わりに、その分、速く登って頂きます。
 体力差のある者に、同じ重さの荷物を持たせて登山することは、障害者に健丈者の動きを要求するようなものです。女性に男性なみの体力を要求するようなものです。こう言う平等思想は、葬り去りましょう。

 体力のある者は、どんどん荷物を持ちましょう!
 体力のない人は、どんどん荷物を持ってもらいましょう!
 そして、その分、速く山に登りましょう!
 荷物の重量を調節し、全員の歩行速度をできるだけ一緒にするのです。苦しみは分かちあうのです。ただし、その代りに、頂上で食べる食事の時は、皆で一緒に食べましょう。 私たちは、頂上で皆で自炊し、一緒に昼食を食べることにしています。もちろん、お金はワリカンです。大食いの人も、あまり食べない人も、ワリカンにしています。人より重い荷物を持った人は、余分にお腹がすくでしょうし、あまり体力を使ってない人は、お腹がすかないかもしれません。ですから、たくたんの荷物を持ってもらった人には、たくさんの御飯を食べてもらいましょう。それが、人並以上に体力を使った人に対するお礼というものです。荷物をたくさん持ってもらった人に対するお礼というものです。

 それから人に荷物を持ってもらった人が、
「私は皆に迷惑をかけた」
と言って、ションボリしてたりしてますが、そんな考えこそが、皆に迷惑をかける考えです。
荷物は、持ってもらえばいい。むしろ、堂々と持ってもらってほしい。そのかわり、大きな荷物を持ってもらった人には、たくさんの昼御飯を食べてもらえばいい。私は、少ししか御飯を食べないからといって、皆よりお金を出さないと言うのではなく、皆と同じ会費を払い、大きな荷物を持ってくれた人に、たくさんの昼御飯を食べてもらえばよいのです。
「私は皆に迷惑をかけた」
と言って、ションボリするのではなく、
「おつかれさま、たくさん食べてね」
と、たっぷりと御飯をよそってあげればよいのです。キャンディーやチョコレートを差し出すだけでもよいです。

 山では、助けあうのが掟です。お互いが助けあうことが、山の掟なのです。登る時は、皆で登り、食事も皆で食べる。それが、皆で山を旅する者の掟なのです。


5. 登山はノリである。

 意外なことに、登山入門書には「登山はノリである」と書かれていません。けれど「登山は体力だ」とは書かれてあります。確かに登山に体力が必要なことは認めますが、それが全てだという思い込みには閉口します。
 例えば、あなたが北海道を旅をする場合、電車に乗ってることは苦痛ですか? 苦痛というより、楽しい電車の旅になってるのではないですか? 数時間の旅も全く苦になりませんよね。ところが、これが通勤列車だったらどうでしょう? 数時間どころか、たったの数分でも苦痛です。同じ列車の移動でも、通勤と旅では、こうも違います。
 これは登山にも言えます。山登りをただの運動と考えてしまっては、苦痛になります。旅の途中と考えたらどうでしょう? 登山はノリだと言ったのは、旅のようにウキウキしながら登れば、苦しくも辛くもなく登れるという意味です。
どんな険しい山でもウキウキしながら登る私たちも、ビルの階段は、一段だって登りたくないものです。都会のビルの階段は避けまくってエレベーターを使う私たちです。


6. おしゃべりしながら楽しく登ろう!

 楽しい会話ほど楽しいものはありません。逆に言えば、おしゃべりが聞えなくなってきたら、危険信号です。先頭の人は、歩行速度を遅くすることです。そういった意味で、登山隊の先頭の人は、ギャグの言えるような大馬鹿野郎の方が適任です。


7. 休憩はしない!

 前にも書きましたが、休憩をしないことです。休憩ではなく道草をしましょう。美しい景色を眺め、おしゃべりを楽しむことです。そして、道草をするコツは、意表をつくことにあります。
 展望を楽しむ、おやつを食べる、原生林を眺める、花を楽しむ。これみな道草ですが、こういう道草の他に、ギャグをとばす、ゲームをする、地図を見る、写真を撮る、歌う、踊る、飯を作る、飯を食う、飲む、昼寝をするといった道草もあります。
 もう一つ言えば、登山の時も、下山の時も、やたら立ち止まってしまうのは、考えものです。実は、止るのにはエネルギーが必要なのです。そういう意味で、登山に、もっとも大切なものはリズムです。一定のリズムをもって登る。これが一番大切なのです。


8. 頂上をめざさない!

 頂上は、第二次目標です。第一次目標は、あくまでも、楽しい旅をすることです。これは、別に頂上に登るなと言ってるわけではなく、頂上に行って帰って来るだけの登山をやめようと言ってるのです。歩行6時間の山なら8時間をかけて登ることです。余った時間は頂上や、展望の良い所で遊ぶ時間としてとっておくべきです。

 それから登山に昼寝はつきものです。私たちは、昼寝のために頂上をめざしていることもあります。頂上で、腹一杯に飯を食べ、酒を飲み、ぽかぽか陽気に昼寝をする。これぞ登山の醍醐味です。昼寝は、山の頂上ですることに意義があります。自宅のゴミゴミした畳の上での昼寝は、不健康そのものですが、目一杯の汗を流し、腹一杯の食事の後の昼寝は、体と精神を健康にします。

 悩みを抱えている方、精神的なストレスを抱えている方、人生で転機を迎えている方、大きな壁にぶつかってる方。そんな方には、山の頂上で、昼寝をすることをお勧めします。畳の上で、うじうじ悩むのは健康に悪いばかりか、何の解決にもなりません。新しい発想、意外な解決方法、迷いやストレスから逃れる方法は、山で昼寝をすることに限ります。


9. 下山の時に事故がおきる。
 事故が起きるのは、決って下山の時です。遭難する時も、怪我をする時も、圧倒的に下山の時が多いものです。私たちも、下山の時に隊員が怪我をしたことがありました。ですから、下山の時は、要注意です。
 具体的に言えば、登りの時よりも、休みを多くとることです。下山の時には、体力こそはあまり使いませんが、足にかかる負担は、そうとう大きなものとなっています。足を痛めるのは、こんな時です。ですから、何度も腰を降ろして休むことが必要です。
 また、調子にのってドンドン下山し、道を間違える事もよくあることです。なぜ、道を間違えるかと言えば、登山道は、上へ行けば行くほど一本に合流し、下へ行けば下に行くほど何本にも別れるからです。だから、登山の時より下山の時の方が道を間違えやすいのです。しかも下山の時に道を間違えると、取り返しがつかなくなります。何故ならば、日没が迫っているからです。山で日が暮れたら最後です。遭難の一歩手前と言ってよいでしょう。ですから、下山の時は、なるべく全員一緒の行動をとることです。
  



10. 登山で3番目に楽しいのは、下山を終えて帰る時。

 登山の醍醐味は、下山を終えて、電車やバスで帰る時に語る語らいにあります。ひと仕事を終えた後の語らいほど、すがすがしいものはありません。大いに飲み、大いに語りあい、二次会、三次会で盛り上がりましょう。ですから、下山を終えた時点で、体力に余裕が残っている登山こそが、ベストな登山と言えます。下山した時に、身も心もボロボロになっている登山は、失敗だと思ってよいでしょう。


11. 登山で2番目に楽しいのは、帰って風呂に入る時。

 家に帰ったら登山が終わるなんて思ったら大間違いです。正しい登山の終わり方をするには、風呂に入る事です。下山した時に、近場の温泉に入るのも手かもしれません。そして、筋肉をほぐすようにマッサージして下さい。柔軟体操も忘れてはなりません。


12. 登山で1番、楽しいのは、寝酒を飲みつつ蒲団に寝転ぶ時。

 説明は、いりませんよね。この時に注意することは、つまらない電話です。だから、留守電をセットし、押し入れにでも片付けてしまいましょう。
 それから登山で1番、辛いのは、翌日、蒲団から起きた時です。起きてすぐ体が痛いのは若い証拠です。2〜3日たってから痛みだしていたら、老化現象が始まっています。気をつけて下さいね。
【風より】