山靴通信

2000年9月1日号(毎月1日発行)

『山靴通信』も猛暑に耐えて、
秋の号となる季節になりました。
9月の声をきくと、
夏のエネルギーを体験したあとでは、
山も侘びしさばかり感じてしまう。
夕暮れ時、
単独行の岳人は、
風の中で人恋しくなる。

猛暑の記憶
猛暑の記憶

#23 『上州武尊山』は雷雨だった

●深夜の駐車場
 金精峠を越えて長い長い下り道を進んで、やっと片品村に入った。寝静まった町の中を通り、花咲温泉そして武尊牧場入口を過ぎて林道終点の武尊山登山口の東俣駐車場に着いたのが深夜1時。狭い駐車場だと思って寝入ったが、朝になって外に出てみたら、一段高くなった所に広い駐車場があった。
 夜中に着いた駐車場の印象は、暗いこともあって朝になるとその印象を一変させてくれる。南那須の沼原湿原に行った時も、霧の中で辿り着いたこともあったのだが、明るくなって朝日に映える白笹山を見て驚いた。浅草岳の時は、見事な紅葉に感動したのだが、感動しながらも車のエンジンが起動しない故障が気になっていたのを思い出した。

●ブナの森
 武尊牧場登山口からの山道はブナの森に入る。登山道はこのブナの森から許しを得て出来たような道だ。クロスカントリー・スキーで滑ったら楽しそうだ。

武尊山1
霧の前武尊を望む
●笹清水
 山頂近くに湧く笹清水は冷たくてうまい。水筒にたっぷり汲んだので、さあ山頂めざして出発しよう。

武尊山2
この時は晴れていた武尊山
●展望のない山頂
 武尊山(2158m)は人気の山だけあって、次々に登山者がやってくる。しかしあいにく山頂は雲の中。霧が晴れるのを待って、スコッチの笹清水割りを作る。木製のカップで2杯飲んでも、3杯飲んでも、最後の1杯を飲み終えても空は晴れなかった。

武尊山3
日本武尊は何を見る?
●雷雨で小屋に避難
 下山途中から本格的な雷雨となった。ピカッ、ゴロゴロの間隔が長いので安心だが、避難小屋で雨宿りすることにした。すぐに5人の中年登山隊も小屋に逃げてきた。隊長らしき人はすこぶる元気で、面白い話を次々と披露してくれる。どこかの町で芸者をあげて遊んだなどと自慢している。1時間ほどで雨も小降りになった。
(登山日、2000年8月4日[金])

武尊山4
避難小屋から外を見る


#24 『日光太郎山』も雷雨だった

●山王林道
 光徳牧場からハガタテ薙コースを経て太郎山に登るつもりでいたが、コース入口には集中豪雨の影響で危険なため通行禁止とするとの案内板があった。あとで小太郎山で会った単独行の二人はこのコースを登ってきたと言っていた。さすがに下山には危険なようで、二人とも別コースで下って行った。私は無理することもないだろうと、山王林道を峠まで歩いて、山王帽子山を経由して太郎山に登ることにした。山王林道は3月にクロスカントリー・スキーで滑ったことがある。

太郎山1
山王帽子山から白根山を望む
●山王峠での朝食
 峠のベンチで朝食。インドのナンを炙り、これにベーコンとチーズをのせる。熱いコーヒーを煎れる。これでも結構な朝食となったが、最大のご馳走は山の空気と向かいに見える於呂倶羅山の景色である。

太郎山2
小太郎山からの男体山
●小太郎山
 ひと山(山王帽子山、2077m)越えて、小太郎山(西峰)へ。男体山と戦場ヶ原が見えるが、白根山は雲の中。手ごろな岩の上に腰を下ろして、缶ビールを飲む。2缶担いできたので残りは太郎山の山頂でと脳味噌では考えたのだが、渇いた喉ちんこは2缶目を要求している。結局、喉ちんこが脳味噌に勝ってしまった。

太郎山3
太郎山(右)と奥鬼怒方面
●太郎山から林道へ
 太郎山(2367.5m)に着いた。空模様が怪しくなってきたし、展望もますます悪くなってきた。今日もピカッ、ゴロゴロになってきたので長居はできない。
 林道に出る前に雨となった。林道に出たら土砂降り。木の下で雨宿りをしたら、すぐに小雨になった。そして長い長い林道歩き。やっと辿り着いた光徳牧場の牛乳とアイスクリームに救われた。
(登山日、2000年8月5日[土])

太郎山4
太郎山山頂にて


#25 『温泉』の主人

●雷雨に追われるようにして武尊山を下りたのですが、雨も止んでしまったし、温泉に入って汗を洗い流すことにしました。花咲温泉に近付いて最初に目についた「しんめいの湯(せみね山荘)」に入ることにしました。車から下りたら山荘の主人が出てきて、「紫蘇の葉と青唐辛子をあげるから畑にきなさい」と言うのです。なんだかいやに親切な人だなと思いながらも付いていくと、立派な野菜畑がありました。青々とした紫蘇が幾畝も生えていました。「好きなだけとりなさいよ」と言うのですが、なんだか申し訳ないような気持ちになって、それでも十数枚の紫蘇の葉を採ったら、主人は手に一杯の紫蘇の葉と青唐辛子を持ってきてくれました。そして紫蘇の葉と青唐辛子の料理の仕方まで教えてくれました。

温泉に入ることにしたのですが、入浴料が書いて無いようなので、千円札を差し出しました。まあ、紫蘇の葉と青唐辛子をもらったことだし、少々高くてもよいかなと思っていたら、入湯料金は五百円でした。「武尊山登山口のトイレには割引券が置いてあるんだけど、気がつかなかった?」と訊ねるので、「気がつかなかったなあ」と答えたのです。そうしたら主人は百円を返してくれたのです。

誰もいない風呂場でゆっくりと汗を流しました。透明で、肌がつるつるする湯でした。風呂から上がって、主人と少しの時間を山談義しました。帰る時には私の車が山荘の前の道を右折するまで主人は見送ってくれました。

この山荘の主人の親切に感動したので、この温泉を宣伝してしまいましょう。

  尾瀬と丸沼と武尊の宿/天然温泉/花咲温泉
  せみね山荘/しんめいの湯
  群馬県利根郡片品村花咲281/TEL0278-58-3292

武尊山のブナ
武尊山のブナ


また10月1日にお会いしましょう。Have a nice day

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暮篤(ぼとく)

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