山靴通信

2005年12月1日号(毎月1日発行)

漢字山名の画数の最も少ないのは
兵庫県にある一山(ひとつやま、1064m)。
画数の最も多い山は
北海道の鬱岳(うつだけ、818m)である。
どちらも遠いところの山だ。
登ることもないだろうし、
見ることもないかもしれない。
そう思うと少し悲しくなる。

#201
『四時川の紅葉と仏具山』


 自転車に乗ること、そして仏具山に登ること、これが最初の目的でした。自転車で風をきって走るのも気分爽快であったし、仏具山からは見晴らしがよくて小名浜の海が見えて、これはこれでとてもよかったのです。でもそれ以上にすばらしかったのは、四時川渓谷の紅葉でした。今年の紅葉は色づきがわるくて、いつまでも夏の暑さが残るような陽気が続いたのがよくなかったのだろうと思っていただけに、この意外な色彩には感動しました。

四時川渓谷の紅葉

四時川渓谷の紅葉

 水呑場という変わった名前の地域から四時川に沿って林道があるのですが、ここを自転車で下ると身体が紅葉の色に染まってしまうような気分です。舗装されていない道ですから、自転車はマウンテンバイクがよいでしょう。一気に自転車で下ってしまうのはもったいないので、そろりそろりと行きましょう。
 先日、とれたての新米をちょうだいしました。これをふっくらと炊いて、ちょっと深めの弁当箱につめて、これに梅干をのせて、チベット産という得体の知れない塩を入れた玉子焼きものせます。これが本日の昼食です。河畔で弁当を広げて、目の前の赤と黄がうまいぐあいに交じりあった景色もおかずにしました。こんな幸せ、お金を出しても得られないでしょう。たっぷり運動した充足感、ああ、日本の米はうまいなあ、との幸福。あれれ、倒木に茸が!平茸のようです。こんなことで倍増したのが素朴な幸せです。

仏具山

仏具山

 仏具山は山頂まで林道が通っていてつまらないけれど、自転車には好都合。西側の杉林から登りだしたら、そこには杉枝茸(スギエダタケ)がたくさん生えていました。こんな小さな茸は採る人もいないのですが、これはごま油を入れた草野心平粥に放り込んでみましたが、これが翌日の朝ごはんで、こうすると杉枝茸もすましたような風情です。若いつもりでも、この山をいっきに漕ぎ上がることはできないのは残念ですが、坂道の途中で自転車を降りて歩きました。たどり着いた仏具山山頂からの展望がよいことはすでに述べましたね。

MTBルート図(カシミール3Dによる)

MTBルート図(カシミール3Dによる)

 この山靴通信がでるころには、四時川渓谷の木々の葉はすっかり風に舞って落ちてしまっているでしょうから、来年の秋には皆さんもおいでなさいとお勧めしてここで筆を置くことにします。では、また、ね。

 
#202
『季節外れの諏訪梅林から助川山、そして高鈴山へ』


 知人宅を訪問したのですが留守でした。どうしてもこの日にこの知人に会う必要があるので、どこかで時間つぶしをすることにしたのですが、さてどうしようと考える。それでは近くの山歩きということで、高鈴山に登る暇つぶし。高鈴ゴルフ場近くの空き地に駐車しようとしたら、そこは道路工事中でした。しかたなくどんどん下っていったら諏訪梅林まで下ってしまった。ここの駐車場に車を停めて、いつでも車に入れてある登山靴を履いて、急崖をどんどん登ったらハイキングコースに出たのでした。このコースは助川山市民の森まで続いています。ここは初めて歩きましたが、よく整備されていて気分の良い散策路となっています。

高鈴山周回コース(カシミール3Dによる)

高鈴山周回コース(カシミール3Dによる)

 助川山市民の森は山火事後に整備されたのですが、できた直後には余りに人工的で自然破壊のような印象だったのですが、時が過ぎて草木が茂り、よい雰囲気の森林公園になってきました。孫二人を連れた写真家と立ち話をしていたら、この孫たちに好かれてしまったようでどこまでも私の後を付いてくるのです。「おじいさんを待っていないと迷子になっちゃうよ」と言うと、「じいちゃん、早くおいで。年寄りは遅いねえ」とじいちゃんを呼ぶ生意気な女の子二人。結局、二人からガムを二枚もらって別れることができて、高鈴山へのハイキングコースへと進んだのでした。

高鈴山の山頂から奥久慈方面を望む

高鈴山の山頂から奥久慈方面を望む

 ハイキングコースを進み、高鈴山が近くなってきたなと思う頃、こんなところにどうして、と思わざるをえないような、ひっくり返った廃棄された大型自動車に出会います。最初にこの不法廃棄自動車を見たのはいつの頃でしょうか。そのときは捨てられたばかりであることがわかるように、潅木が車体に押し倒されていたのでしたが、それから時が過ぎて、いまでは窓ガラスは破れ、車体は錆び、車体には穴が開いています。幾たび雨がこの車に降り注いだのだろう。林道から舗装道路に出て、そうして山頂に着いた。風が冷たいので早々に山頂を後にした。帰路は舗装道路を下った。次回はこの道を自転車で登ってやろうと思った。諏訪ダムでは釣堀が今年閉鎖したとの看板を見て、ここにもいつしか時が流れていたのを知らされたのであった。

 
#203
『筑紫山』


 筑紫山は栃木県烏山にある標高199.4mの小さな山です。征夷大将軍坂上田村麻呂が807年に東征したことに由来する山であるとか。また北側には烏山城址があります。那須与一の子孫である沢村五郎資重が1417年に築城したと伝えられていますが、明治6年に焼失しました。どうして筑紫山に登ったかというと、烏山城址にGPS宝(『山靴通信#135』2003年11月号)が隠されたという情報を得たので、その宝を探しに行ったのです。車で行くのも面白くないので、茨城の上小瀬にある、やすらぎの里公園から自転車で峠を越えていったのです。

筑紫山の山頂

筑紫山の山頂

 下の地図をよく見るとわかるのですが、3つの山越えをしました。自転車の峠越えでの、あの登りのつらさに耐えられるのは、峠からの下りの快適さがあるからです。烏山城址でGPS宝を首尾よく見つけたあとは、同じ道を戻ったのですが、帰路途中(下境)で花立峠に寄り道をしました。予定外の自然歩道(尾根道)を走ることになりました。急峻な山道では自転車を押し上げたり、抱え下りたりして余計な体力を使いました。

烏山城址GPS宝探しルート図(カシミール3Dによる)

烏山城址GPS宝探しルート図(カシミール3Dによる)

 ところで、自転車による峠越えはパスハンティングというのです。パス(pass)は英語で峠を意味します。日本は山国なので、内陸部に向かって自転車を走らせると必ずといっていいほど峠に出会います。あの峠を越えると、何か楽しいことが待ちうけているのではないか、美しい景色が見られるのではないか、と思ってしまうのです。これがパスハンティングの魅力です。もちろん、期待外れもあります。
 またポタリングというのは気ままにぶらぶら歩くというような意味ですが、これがいつの間にか和製語として気分しだいで自転車を走らせることを意味するようになったようです。私のポタリングは、まず地形図で目的地を決めて、この場所の緯度経度をGPSにインプットし、GPSを道案内にして見知らぬ田舎道を通って目的地に行くというものです。今回の烏山城址GPS宝探しは、ポタリングとパスハンティングを同時に楽しむというものです。

行人塚峠

行人塚峠

 ありふれた田舎道を自転車で走っていると、風光明媚なところなどはないのですが、あまり自動車の通らない道筋の民家を見たり、畑の作物に季節を感じたり、あるいはお年寄りが数人で立ち話をしていたり、といったことが面白いのです。曇の切れ間から日が差してきて、木々の葉が黄や赤に輝いたり、山里の早い夕暮れ時の寂しさが身に沁みたり、こんなことも楽しみになっているようです。下の写真を見てください。こんな柿の木にもおおいに感動して、写真を撮らずにはいられませんでした。

見事な柿の木

見事な柿の木
 

また2006年1月1日にお会いしましょう。Have a nice day

暮篤(ぼとく)

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