
山を歩いていて道に迷ったことは、誰でも一度や二度はあるでしょう。その時、どうするでしょうか。整備された登山道を歩いているときなら、来た道を戻り、道標を見つけて、あるいは見覚えのある地形を見つけて正しいルートに戻ることができるでしょう。しかし、道なき藪山を歩いている場合には、予定していた正しいルートに戻る(出る)ために、地図を開いてどの方向に進むべきかを考えます。その時に問題になるのは、現在位置が地図上でどこなのか、ということです。
すべての道迷いの根源は、この“現在位置を知る”ということに帰着するのです。現在自分がいる位置を間違えると、とんでもないことになることがあります。特に現在位置が正しいと思い込んでしまうと最悪の結果が待っています。私はこの思い込みで予想外のところに出てしまい、何度も長い林道歩きを強いられたのでした。
前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。現在位置を知るための道具がGPS(Global Positioning System、全世界測位システム)で、カーナビゲーションとして利用されているのは皆さんご存知の通り。これを手のひらサイズにしたGARMIN社製ハンディGPS(etrex VISTA日本版)というものを入手しました。使用目的は、もちろん山登りの道具としてなのですが、どういうわけか山に行く機会がなく、もっぱら小旅行や散歩のときに使っていました。
現在位置はハンディGPSの液晶画面の地図上に矢印として表示されるとともに、自分が北緯何度、東経何度の位置にいるか、がわかります。GPSを手にして歩くと、歩いたコースが軌跡として地図上に記録されます。ある地点を登録すれば、どこにいてもナビゲーション機能により登録した地点までの直線距離が示され、その地点に向かう方角を矢印で教えてくれます。街中で使っているかぎりは面白い玩具なのですが、はたして山の中での使用感はいかがなものでしょうか。実際に登山に使った感想は、『山靴通信』#133と#134で報告しましょう。

驚いた。あの鄙びた温泉が、一部の人にはよく知られた存在であったとは・・・。
つげ義春という漫画家がいる。小学生の頃、その漫画を読んだ記憶がある。今となっては変わった作品であったという印象しか残っていない。子供には面白くない漫画であったようだ。ところが、どういうきっかけか忘れたが、きっとそれは赤瀬川原平あたりの文庫本を読んだのがきっかけだったよ
うな気がするが、最近つげ義春に興味がわき、「血管をネジで止める」という奇妙な内容の作品『ねじ式』を読んでみたいと思っている。この辺の本屋にはつげ義春の本など置いていない。出張のときに立ち寄った上野駅の本屋にもなかった。
そんな折り、高野慎三著『つげ義春を旅する』(ちくま文庫)という本を近くの本屋で見つけて読んでいたら、つげ義春の作品に『二岐渓谷』というのがあるのを知った。秋の終わりに、旅に出た義春が台風の迫り来る日に、会津の二岐渓谷の老夫婦が営む谷底のわびしげな温泉宿に泊まった。そこで義春のバナナを盗んだ猿が台風の中で濁流の中に逃げ遅れているのを目撃し、翌日の台風一過に山の様相が一変していた、というのがこの作品のあらすじであるが、これも読んではいない。
この温泉宿が「湯小屋旅館」であり、これこそ私が二岐山に登ったあと入湯した温泉である。下山後、温泉で汗を洗い流そうと小奇麗な旅館を訪ねたのだが、入浴だけの客はだめだと断わられ、そこで教えてくれたのが「湯小屋旅館」であった。たてつけの悪い戸を開けて、薄暗い中に入って声をかけたら障子戸が開いて主人が出てきた。入浴料は五百円だというので、五百円玉を一つ主人の手に渡した。奥の部屋では、泊り客らしき二人と宿の女主人が炬燵に入って談笑していた。壊れそうな木造の通路を通ると脱衣所に出たが、これもいかにも古びている。湯船は大きくない。石鹸も何もない。しかし湯は透き通り、誰もいない湯に手足を伸ばすと、登山の疲れも消えていくようだった。渓流脇には露天風呂があり、これがまた良いものであった。二度目に二岐山を訪れたときもこの温泉に入れてもらった。
このような印象深い温泉であったが、つげ義春ファンには良く知られている温泉であることを知った。驚くと同時に、あの温泉が懐かしくなってしまった。もちろん、再び二岐渓谷を訪ねることがあれば、湯小屋温泉に入るつもりであるが、老夫婦が営む旅館であるので、いつまで営業できるのかという、余計な心配をしているところである。

塩原温泉郷にある日留賀岳(1849m)に登ったのは、残暑の9月中旬であった。前夜はウドウ沢林道で車中泊した。翌朝はGPS受信機を作動させて5時半に歩き始めた。谷あいの地形のために人工衛星を捕捉できない。小山氏宅が登山口になっているが、大根を洗っている家族の方に挨拶をして玄関にある登山者名簿に記帳し、手書きの登山地図をもらった。
竹林を過ぎ、石碑があるあたりでGPSを見ると衛星が捉えられるようになっていた。送電線鉄塔に出たら、そこはシラン沢林道であった。ここでGPSにウェイポイント(現在の位置)を登録した[下記の地図の「あ1」地点]。比津羅山の山腹を巻いて作られた落石の多い林道を30分ほど進むと林道終点に至る[あ2]。ここから本格的な登山道となるが、ここで腹ごしらえした。


なんどさんのホームページ(http://member.nifty.ne.jp/nando-room/)にある筑波山ハイキングコースを参考にして、GPSを片手に筑波山を歩きました。ホームページの「m3梅林コース」で男体山自然研究路まで登り、男体山山頂を経て自然研究路を一周し、これもホームページにある「m4峠コース」で出発地の市営駐車場に戻る予定でした。下の2枚のカシミール図を見て下さい。赤いGPS軌跡が切れていたり横にはみ出しているのは、GPSが衛星を捕捉されなかったためです。

