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<< 結婚式日記 >>


一日目 1/27(水)

〓〓〓〓〓〓再会の瞬間〓〓〓〓〓〓

前回妻と会ったのは、約半年前の八月であった。
もちろん、その後も電話なりメールなりで連絡を取り合っていたのだが、やはり実際に会えるのはたまらなく嬉しい。

近頃の技術的進展はすさまじく、”電子メール”を使えば海外に居る人とも簡単にコミュニケーションが取れるのである。 電話料金も時差も全く関係ないこの便利ツールを使えば、いとも簡単に連絡が取り合えるのである。

しかし、電子メールでは物足りないのだ。 メールでやり取りをしたことがある方ならご理解いただけると思うが、送ったら相手が返してくるまで一方通行なのである。 「今何をしてるの?」と聞いたとしても、返事が聞けるのは相手が返信してくるまで分からないのである。

そこで、電話の出番になるのだが、こいつはえらく高い。 正直なところ、貧乏いじめとしか思えない。 だって電話番号押すだけでどんなに遠くの人とでも話せちゃうんだもん。 そりゃ、使いたくなるって。

しかし、電話でも満足できないのだ。 ”会話”がリアルタイムに出来るっていう事は素晴らしいのだが、その為に相手がすぐ近くにいるものと錯覚してしまうのである。 「こんなにすぐ近くで話しているみたいなのに、なんで会えないんだ?」なんて思うと寂しさも倍増してしまい、電話を切ろうと思っても切れないのである。

やっぱり貧乏いじめだ


フライトの前の晩は、小学生の頃に遠足の日の前の晩に”ウキウキ”して眠れないのと同じように私も寝付けなかったのである。

いろいろ考えてしまうのだ。
「会ったらまず何を話そうか」とか「髪伸びたのかな」とか

「やっぱり外国の人は、空港でも抱き合ってキスしちゃったりするわけ?」

などといらぬ疑問を抱きながら。

飛行機の中では、寝不足からか熟睡していたのだが、着陸間近になりシートベルト着用の合図である「プォーン」という音で

「あと数十分で会える」

実際には入国手続きと預けた荷物待ちで数十分では会えなかったのだが、もうすぐ再開できる嬉しさで胸が高鳴っていたのであった。 その胸の高鳴りの何分の一かは「キスされたらどうしよう」っていうのがあったのだが...

飛行機が到着してもエコノミーの人たちは、すぐに降りられずファースト・ビジネスの人たちが降り終わるまで待っていなくてはならないという差別がある。
早く降りて会いたいのにファースト・ビジネスのお偉いさん方は何故人の恋路を邪魔するのか。
こんなところで軽く貧富の差を感じながらも、降りたあとはちょっと小走り。

軽快なステップでさっき意地悪された金持ちどもをかわし、入国審査のカウンターへ急ぐ。

飛行機の中で書く入国用の紙(正式名称知りません)には、今回のインドネシア訪問の目的を「marriage」としていたのだが、最初の数日間は仕事も兼ねていた。 スーツケースの中には仕事用にスーツも持ってきているし、仕事の資料も入っている。 訪問に先立ってビジネスビザを取っていなかったため、これらを見つけられたらグーの音も出ません

いよいよ自分の番になっったのだが、 「スーツは結婚式用って言い訳できるんだけど、資料はどうしようもないなー。 見つけられませんように...」なんて祈ってました。 しかし、顔はポーカーフェイスで無表情。 いかにも、「海外なんて慣れたもんだよ」という顔をしていた。

それが功をそうしたのか渡航目的も何も聞かれず、一言も言葉を交わさないで入国審査を通過できたのである。

そもそも、

スーツケースは預けてあったので調べられるわけが無かった。

なかなか出てこない手荷物を見つけ足早に出口を目指す。 出口付近では空港関係者でも無いポーター達がお揃いのユニフォームで待ち構えている。 頼んでもないのに勝手にスーツケースに手をかけ、あわよくば運んでいってチップを頂こうという考えなのだ。 ほんの数メートル運んでくれるだけなのに。

しかし、お揃いのユニフォームに身を包んでいるので予備知識の無い人なんかは
「もしかしたら空港のサービス?」
なんて思ってしまうのではないのだろうか。

そこを私はというと
「Tidak mau」
の一言で片付けているのであるが、この言葉って日本語に直すと 「不要だ!!」とか「結構!!」とかの意味になるのではないだろうか。 インドネシア語をほとんど話せないのだから仕方の無いことであるが、それにしても

冷たい人間である。

妻は出口で待ってくれているはずである。 会社の方が気を使って頂いて会社の車を出してくれたのであった。

「いよいよ待望のご対面か。 なんか映画みたいだな」などと考えていたのだが、”ご対面”はともかく

”映画みたい”は自己陶酔のきわみである

到着口に出る瞬間は「抱き合ってキス」も致し方なしと腹をくくっていたのだが、到着口の人の多さに

「こんなに大勢の人の前はちょっとやだな」

と少し躊躇してしまった。 大勢の人の顔を右から左へと、左から右へと妻を探したのだが、肝心の妻はどこにもいないではないか。

えー!!!!!! うそー!!!!!! 感動のご対面は? 抱き合ってキスは?????

えらいことになったぞ。 ”数日後の妻”はどこに? 考えたくは無いけど、もしかして逃げられた?

などと後ろ向きの考えもしてしまったが、本当にいないのだ。 周りを何回見回してもいないのだ。 辺りをうろうろしてもいないのだ。

「まあ病気かなんか?」
「急用ができたとか?」

なんて考えたりもしたが、それにしたって半年ぶりの再開なのである。 ましてや数日後には結婚するわけである。 歩けないぐらいの何かが起きなければ待っているはずである。 それでもいないなら仕方が無い。 自力でタクシーをつかまえてホテルに向かうしかないのであった。

タクシーカウンターに向かう途中、「やっぱりもう一度探してみるか」と思って外に出てみて辺りを見渡すと、一人の男が私に近づいてきて、私の名前を呼んだ。

「Mr.Nakamura?」

何故この男は私を知ってるんだ?

私の頭の中は混乱していた。 しかし、私を知っているものは会社の人間ぐらいのものだ。

妻がらみの人間なのか?

本当に何かあったのか?

かなり動揺していたと思う。 そりゃそうだろう。 待っているはずの妻が居なくて代わりに見知らぬ男が居るのだ。

「Di mana ○○(妻の名前)?」

男は指差してこう言った。

「TOILET」

えー、感動のご対面の瞬間にトイレー???

数分後、妻と再会を果たしたのであったが、当然のごとく抱き合ってキスは無かった

半年前と変わってない妻は、「ごめんごめん」と謝ってくれたのであるが、こうして再開できただけで大満足である。 やはり電話よりも直接会うほうが数倍嬉しい。

車の中では、

「今日仕事どうだった?」

などと半年ぶりとは思えない会話をしながらホテルへ向かったのであった....

これから久しぶりの再開を果たす、紳士淑女には次の言葉を頭の片隅において頂きたい。

「再開に過剰な期待をするべきではない」

 

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