絵画・美術工芸品・文化資料の保存修復 中塚祐松堂 

保存修復に使う水

一見透明で、何ら不純物のない様に見える水道水は、味やにおいで解るものから、人が知覚出来ないものまでいろいろと含まれている。臭いの代表格は塩素で、一般にはカルキ臭として良く知られている消毒を目的として混入されるもの。プール用水などの消毒にも使われている。
数回階建て以上のマンションや、学校、大きな施設では水道管からの水圧だけでは各部屋に水が送れないので、いったん屋上などに設置した吸水タンクに水をため、重力を使って供給するが、貯水タンクが古くなると内部で黴やバクテリアが発生する。銅や鉛で出来た水道管からは微量の金属が溶け出し、古くなるとサビなども混じって来る。水は水道に送られるまでにも、様々な環境をくぐり抜けるあいだにいろいろな物を含んで来る。これらは、私たちの体にとって有効な場合、よくミネラルなどと呼ばれ、市販されているミネラルウォ−ターの瓶やペットボトルの成分を観ると、マグネシウムや鉄、カリウム、ナトリウムなど結構いろいろと溶け込んでいるのがわかる。

水はいろいろなものをくっつけ、溶かす性質を持っていて、広く一般の家庭でも、炊事や洗濯など日々の生活の折々でこの水の特性の恩恵を受けている。私たち修復家も、絵の具や接着剤を溶かしたり、薄めたり、資料や作品の洗浄に水を使う。最近では、飲料水としてカルキ臭などを除くために浄水器を蛇口に取り付ける家庭も多くなったかと思うが、私達の作業現場で使うろ過装置はその容量も性能もはるかに高度な物を使っている。処置後にとてもながい保存性、安定性を求める保存修復の現場では、十分に調整をした水が欠かせない。

私達の工房では利用対象や方法にもよるが、写真のような装置を使って三段階の濾過をおこなっている。この装置を通過して排出される水は、不純物がほとんど排除されてほぼHOの状態になる。

●第一ろ過装置(写真左下の青い筒状の装置)
活性炭を利用したフィルター。主に残留塩素、黴臭、有機物の除去をする装置  

   

●第ニろ過装置(写真中央の最も大きな装置)
イオン交換樹脂が詰まったボンベ。源水中にイオン化した電解質 陽イオン(Na+、 Ca+など)と陰イオン(Cl−、 CHO3−など)を完全に取り除く装置)。上部にある計測器はろ過された水の状態を知るためのる計測器。

   

●第三ろ過装置(写真右側青い筒状の装置)
中空糸フィルター。微粒子、配管のサビなどの除去をおこなう

 

   

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