●report12. 上野山清貢 作 鮭図 の修復
◎ 修 復 前 の 状 態 ◎ ■作品データ
◇名 称 上野山清貢 作 鮭図
◇形 質 油画 木板
◇寸 法 上辺871/中央辺871/下辺878×左高370/中央高435/右高400×厚さ30〜40(単位はミリ)
◇備 考 作品上部に2カ所真鍮製ヒートンをねじ込んである。装幀(額装など)、収納箱等は無し
■修復前の状況
1.組成構造
基底材は楢材と思われる一材で、板目(木の垂直方法)の裁断。表面は鉋などで平滑に切削加工してあるが、周囲、裏面は鉈や鑿(あるいはちょうなを用いたか)などを利用して粗く裁断、切削してあリ、全体に厚さも均一ではない。
基底材は、膠など、滲み止めを目的とする樹脂等の塗布があったかは定かではないが、絵の具のない背景、イメージ部共に地塗などは施さず、基底材の上に直接油絵の具による描画がされており、描画周囲には部分的に絵具や展色剤などが滲んだようなシミ痕も見られる。全体に絵の具の塗厚は薄く、下層に塗った絵具が乾かぬ内に絵具を塗り重ねた様子が伺え、素早く豪快なタッチで描かれた印象がある。基底材は柾目板ではなく、複雑な目を持ち、これが作品の背景として、水流のようなイメージをかもし出し、効果的な印象を与えている。
本作品は額装など装幀はなく、天辺に二箇所真鍮製のヒートンがねじ込まれていた。これとは別に、かつて他の吊金具などの装着痕と思しき人工的にあけられた穴が数カ所空いていた。
赤外線画像 紫外線画像 2.損傷状況
今日までの利用、保管に由来する塵埃の堆積、タバコなど(洗浄中、タバコのヤニ特有の臭気を知覚できた)汚れの付着も著しかった。
基底材には所々にひび割れを認め、とくに表面左下方にはおよそ全幅の半分をこえる大きな亀裂が発生し、なお下の部分が表面方向に大きく彎曲変型していた。
鮭のイメージの頭部あたりには絵の具層から基底材表面をえぐるような引っ掻き傷があった。左下方に生じたひび割れ部の周辺には、所々に小さな木材の欠失、描画部に至る亀裂周囲には絵の具の小さな欠失があった。
全体に絵の具の定着はほぼ良好であったが、とくに絵の具が薄く塗られた部分に小さな欠失、剥離進行を認めた。剥離した部分を顕微鏡で観察する限り、描画部下に地塗りは認められなかった。
●基底材が大きく亀裂し彎曲変型していた ●頭部イメージの上方より深い引っ掻き傷があった ■修復の目的、方針
全体の清掃、付着物などの払拭に加えて、所有者の希望により作品下方に発生した基底材の亀裂、変型の修復、鮭のイメージの頭部にある損傷部の修復をおこなうこととした。
■上野山清貢(1889〜1960)
1889 年6 月9日、北海道札幌郡江別村に長男として生まれる。小学校の代用教員を辞め上京し太平洋画会研究所で画家を目指す。黒田清輝、岡田三郎助に師事。昭和24年帝展初入選。昭和26年から28年第七回帝展より三年連続特選受賞。和製ゴーギャンと称され注目される。激しい色彩とタッチで表現主義的な作風を示す。郷里の北海道に取材した風景、魚などの静物を多く描いた。一線美術を創立。昭和35年(1960)歿、70才。帝展連続特選。昭和25から27年槐樹社展で槐樹社賞。昭和50年一線美術会創立会員。53年北海道新聞社文化賞。
●作品右下サイン部分
絵画・美術工芸品・文化資料の保存修復 中塚祐松堂
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