●report11. 山本昇雲 作絹本彩色屏風絵図の修復
◎修復前の状態 ■作品データ
◇作 品:山本昇雲 作 絹本彩色 二曲一隻屏風絵図(収納箱はなし)
◇修復前寸法: 作品寸法/w840xh1770ミリ 下骨寸法/w954xh1998ミリ x2面
◇修復後寸法: 作品寸法/w841xh1772ミリ 骨寸法:h1998x w954ミリ x2面
■修復前の状況
1.作品組成
本作品は薄い絹織物(絵絹)を基底材料とし、膠を接着剤とする顔料と墨で描画された作品。描画部分は左側の画面下の少女の図中に、衣類を現す部分に数層の絵具の重ね塗が見られるほかは、薄く料絹に染込むような描き方がされている。
装幀は、二曲一隻(にそういっせき/2つの画面を挿むような形式で中央(二画面の間)に紙製の蝶番を持つ形式)の屏風装となっており、縁は漆、為塗で総丸型。四角と縦縁中央に飾り金具、縦縁に散し鋲(3箇所消失)が装着されており、各々梅鉢の紋様が刻印されていた。作品の周囲(縁と作品の間)には小紋の織物が表装されていた。2.損傷状況
作品画面の所々に、微生物被害と思しき淡い褐色の斑点状の変色、汚損が認められた。この斑点状の汚損は、描画部の絵の具上にも多く発生していた。画面左側に描かれた人物像中には、絵の具の剥離進行を認め、とくに青色の顔料に顕著であった。
料絹は、所々に小さな引っ掻き傷や亀裂を認め、裂けた部分はさらに経年を得たためか、周囲が汚れたり、料絹繊維の解れや糸飛び、小さな欠失も認められた。
屏風装は、蝶番部分に破断や亀裂損傷が発生しており、これに伴って、蝶番付近の料絹も一部裂けたり、裏打ちが糊離れして浮き上がったり、変形、波打っている箇所を認めた。屏風裏面には、上張りの裂地に大きな破損を認めた。
屏風の縁には所々に傷や突衝による凹み、塗装の剥離等を認め、縁に取り付けられた飾り金具、鋲は一部欠失、残存する部分も接合が緩んでいたり、折れ曲がったり、変形している物もあった。■修復の目的、方針
画面の洗浄による観賞性の向上を目指すとともに、新規屏風装を行う。これは、旧屏風装は全高が2メートルを超え、一般の住宅環境下では移動や取り扱いが困難であったため、とくに所有者より全体の寸法の縮小化の強い希望があったことによるものである。
寸法の縮小化の具体的方法としては、旧屏風装幀で作品の周囲に取り回してあった裂地の部分を新規屏風装では省き、屏風装全体の高さと幅の減少をはかることとした(完成後は作品の料紙の周囲に直接縁が取り付けられる様式になる)。
■山本昇雲
本名茂三郎。別号松谷。明治3年(1870)土佐後免(現高知県南国市)生まれ。
滝和亭の門に学び、報道画家として当時流行していた雑誌「風俗画報」の口絵・挿絵に全国各地の事件や当時の風俗、風景を描いた。松谷は「風俗画報」で用いた号。版画家、日本画家として美人画・花鳥画を数多く製作し、文展などに出品した。木版画のシリーズとして「いますがた」「四季のながめ」「子供あそび」などがある。昭和40年(1965)没、享年96歳。
絵画・美術工芸品・文化資料の保存修復 中塚祐松堂
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