●report6. 藤田嗣治 作 画用紙デッサン
厚紙に描かれた作品の波打ち変型修正と汚損の除去(乾式洗浄)
作 品:画用紙デッサン(ペンに墨)
作 者:藤田嗣治(ふじたつぐはる/つぐじ)
装幀形態:未装幀(額装痕あり)
本紙寸法:W427〜434×H520〜525ミリ
【修復処置の概要】
○調査、採寸、写真撮影
作品の状況を詳しく観察し、採寸を行った後、修復前の状況を写真に撮って記録した。○描着力試験
作品の描着力(絵の具の固着力)の状態を調査した。描画部は水によく反応することが判明した。○PH試験
PH試験紙を用いて、作品料紙の酸化進行の度合いを調べた。この結果、PH4.5の酸性数値を示した。(PH7.5で中性。数値が小さくなると酸性、大きくなるとアルカリ性を示す)○乾式洗浄
修復専用のパウダー状の消しゴム、練り消しゴム等を利用し、画用紙表面に付着した汚れ、顔料などをできる限り除去した。
乾式洗浄 テープの除去作業 除去した接着テープと接着剤
○水洗
水溶性の汚損と酸性物質の除去を目的として最小限の水洗をおこなった。本作品は、とくに水に弱いため、プリザベンションペンシルを利用して処置を行った。水洗用の水は、精製水を超音波加湿器にて微細な蒸気にし、さらに加温。これを作品の表面から散布し、下部から強制的に吸引(サクションテーブル使用)すキる方法で行った。
ただし、パステル等顔料が付着している部分については、かえって顔料が画用紙中に深く入り込む可能性を憂慮してこの処置は行わなかった。○裏面に張られたテープの除去
裏面に張られていた茶褐色のテープの除去には、プリザベンションペンシルを利用した。テープの表面に加温した蒸気をあて、接着剤を膨潤、溶解させ、画用紙繊維が痛まないように少しづつ慎重に剥がした。テープの除去後、さらに画用紙に残る接着剤は、綿棒などで丁寧にぬぐい取った。○脱酸処理
前記の水洗の後、作品の裏面からアルカリ剤をスプレーした。この処置後、作品は全体にほぼ中性の7.5PHを示した。なお、脱酸処理には水酸化カルシウム水溶液を用いた。
脱酸性化処置
折れ、波打変形の修正
プレス乾燥
○変型修正
本作品(画用紙)は処置前、強い折損傷に加えて、激しい波打があった。変型修正は、周囲に厚手の和紙(石州紙/比較的強靱であるが、画用紙よりは薄く強度が低いと思われるものを選んだ)を取り付け、作品を間接的に加湿(作品を不織布に挟みこれをさらに湿らせた紙で挟む方法を用いた)した後、先に取り付けた紙の周囲に糊を付け、作業台に固定し、画用紙全体を乾燥と共に緊張させ、この後、さらに作品をプレスした。○破損の修復
作品下部の画用紙の破損部分は、損傷後、長い経年と摩滅等があり、接着の後、典具帖紙
(てんぐじょうし/楮製の極薄い紙)とパウダー状のセルロースによって表裏を局所補強した。○作品の保護
作品の保護と、以後の湿度による画用紙の動き(折損傷は激しく、処置後なお不安定)を抑制するため、周囲に和紙を張り廻らせ、作品の裏面に置いたバックボードに間接固定する形にした。バックボードはPH8.5(TSスピロン製アーカイバルボード)の弱アルカリ性紙ボードを用いた。○報告書
修復後の作品を写真撮影し、本報告書の製作をもって今回の修復作業を終了する。
絵画・美術工芸品・文化資料の保存修復 中塚祐松堂
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