●report6. 藤田嗣治 作 画用紙デッサン
厚紙に描かれた作品の波打ち変型修正と汚損の除去(乾式洗浄)


  
作  品:画用紙デッサン(ペンに墨)

作  者:藤田嗣治(ふじたつぐはる/つぐじ) 

装幀形態:未装幀(額装痕あり)

本紙寸法:W427〜434×H520〜525ミリ 
   ◇画用紙は汚損し、強い折損傷に加えて波打ち、変型(右斜光線写真)。裏面周囲にはテープが張られていた。


◎作品組成

本作品は藤田嗣治作の素描。基底材は厚手の画用紙で、表面に細かな凹凸のあるものである。描画道具はペンで、墨を用いて描いたようである。画用紙の右下に作者サインとともに、制作年を示すものであろう『1929』の数字が記されている。基底材は厚手の画用紙で、表面に細かな凹凸のあるものである。

◎修復前の損傷状況

作品全体に汚損している。また、画用紙は折れや波打変型が目立つ。とくに本作品は、おそらくパステルかなにかで製作された作品と共に長く重ねて保管されていた様子で、その顔料が付着している。加えて、過去には折り畳んで保管されていた模様で、作品の数カ所に強い折れ筋が発生している。また、この折れ損傷のあたりには、さらに汚れや顔料の付着が顕著である。

 

本作品は、長く額装されていた形跡が認められ、額のマットで被覆されていた部分と露出していた部分に変退色などによる色差が認められ、さらにマットの刃先が接触していたのであろう部分は茶褐色に変色している。
作品の裏面周囲には茶褐色のテープが張られていた。おそらくは、このテープにて額に固定(マットにであろう)されていた模様。このテープはクラフト紙様の紙(酸性紙であった)に接着剤を塗布したもので、接着剤は膠であった。作品のサインしたあたりには画用紙の破損があり、これも裏面より同じテープで固定してあった。

◎修復作業の方針

所有者の希望と作品の状況を踏まえ、主として以下を目的として作業をすすめることとした。1.折れ筋、画用紙の波打ち等変型の改善 2.サイン下にある画用紙の破損部分の修復 3.裏面に張られたテープの除去 4.洗浄と脱酸処理


◎藤田嗣治(ふじたつぐはる/つぐじ)

明治19年〜昭和43年(1886〜1968)
洋画家、陸軍軍医藤田嗣章の末子として東京に生まれる。1905年東京美術学校西洋画科に入学。1913年渡仏。パリで川島理一郎と共同生活を始めるが、この直後に第一次世界大戦が勃発する。この戦争前後にはモディリアニ、ピカソ、ザッキンらを知る。1919年にはサロン・ドートンヌに出品した作品がすべて入選する。乳白色の背景、墨による黒い輪郭線、その細密な作風によって名声を馳せ、1921年には同展の審査員となった。
1933年より日本に滞在。1938年に日本海軍省嘱託として数多くの戦争画を制作。戦後、戦争協力者としての強い批判を受けながら、1949年に再びパリへ赴く。
1959年にはカトリックの洗礼を受け、レオナルド・フジタと改名。続けて日本芸術院会員を辞任する。この後、フランスでおよそ20年間の生活を過ごし、宗教画に取材した多くの作品を描いた。1968年1月29日にスイス、チューリヒで死去する。享年81歳。1957年レジオン・ドヌール四等勲章受賞、1968年勲一等瑞宝章授与。


絵画・美術工芸品・文化資料の保存修復 中塚祐松堂

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