修復家の私考  〜 伝統・文化・芸術、そして文化財修復の世界 〜


◆セロテープの災い 

近ごろでは、文具店や画材店にいくと、様々な種類の接着剤が販売されている。首都圏で有名な東急ハンズや街にある大きなホームセンター、DIY店などにいけば、プロフェッショナルも使うようなものが簡単に手に入る。用途に合せて種類も様々で、その姿形も液状のモノからはじまって、ゼリー状、粘土のようなモノ、固形、テープ状と様々だ。店頭に並ぶパッケージは色とりどりで、新しい物好きの私などは、つい手にして試したくなる(仕事上必用なことでもあるので実際に多くを試している)。これらの接着剤料は、知識のない者でも、子供から大人まで安心して利用出来るように安全設計されていて(もちろん使い方を間違えなければ)、利用強度の高さに優れ、なお簡便性の高いモノが多くて魅力的だ。
けれど、こういったものを、とくに『大切』と思われる物には、安易に利用しないで欲しい。間違ってもパッケージにうたわれた効能を鵜呑みにし、上辺だけで判断したり、DIYの趣味よろしく安易な補修や修理に利用するのを控えていただきたい。
かつて、その簡便さからか、版画やデッサン、水彩画など、紙製の作品を額装する際に、よくセロテープなどと呼ばれる透明の接着テープが利用され、今もなお、この接着テープの被害を受けた作品が工房に数多く運び込まれる。接着テープの利用によって生じる一番大きな問題は、経年と共にテープ上にあった接着剤が被着物(作品などそれを取り付けたもの)にゆっくりと溶け出し、染み込んでゆくこと。さらに時間を経ると、この接着剤がが茶褐色に変色して、こうなった時は、もはやそれを除去することは極めて困難になる。
市販されている接着テープは、日常生活における用途に十分に答えてくれる物で、短い時間か、使い捨てを念頭に利用すれば全く問題はないだろう。それを良く理解して使う限り、安全で使い勝手がとても良い物が多い。しかし、貴重な美術品や資料に対して利用する修理材料としては、長期的な安定に欠ける物は多く、得に後の可逆性(時間が経っても安全に被着物を傷めずに除去出来ること)を保証するものがほとんどない。私達は取り扱う物が貴重なだけに、利用する材料素材に求める要求も、一般からくらべればかなり高く、厳しい。昨今ではずいぶんと研究も進み、中にはかなり長期的に安定する材料も増え、一方、以前から私達のような専門家しか使うことのなかった商品も店頭に並びはじめている。でも、やっぱり安易に利用することは常に控えたい。どんなに優れたものにもウイークポイントやデメリットはつきものだ。。強力!とか瞬間!であれば全てが良いワケではないのである。

大切なものが壊れたら、まずは専門家御相談を!

020921(080529)


絵画・美術工芸品・文化資料の保存修復 中塚祐松堂

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