修復家の私考 〜 伝統・文化・芸術、そして文化財修復の世界 〜
◆明日のデジタル 〜第二回JHKオープンセミナーに参加して〜
2004.07.02 於:中央大学駿河台記念館
『デジタル化された人類の記録は次世代に残せるか』
講演:国立国会図書館 関西事業部電子図書館課 今野 篤2003年になると、デジタルカメラの生産台数は銀塩カメラ(フィルムを使うこれまでのカメラ/近年、デジタルカメラとの対象呼称として使われる用語)のそれを超え、VTRレコーダーもDVDレコーダが生産台数を凌駕した。同じ時点で、ウェッブ(インターネット)上にある表層の(簡単に変化、増加しない固定された)情報は167TB(テラバイト)、深層(日々増殖、変化する)情報は91PB(ペタバイト)を超える。さらには、ウェッブ上でかわされる電子メールの数は1日当たり310億通という想像を絶する数に登る。デジタル技術の革新はさらに加速度をつけて進み、かのintelの創設者であるDr.ムーアの名前をとったムーアの法則によれば、半導体の集積密度は18〜24ヶ月で倍増し、ネットワークの帯域幅、通信速度はおよそ6ヶ月で2倍(これはギルダー則というらしい)、パーソナルコンピューターのハードディスクは15年で約30倍、CPU(車に例えるならばコンピュータのエンジン)の動作周波数(簡単に計算、作業速度、能力)は、この15年で200倍を超えている、、、。こんな風にはじまった今野氏の講演は、オシャレな銀色に輝くモバイルコンピュータから写し出されるクールな画像を観ながら淡々と進められた。
講演の中でも紹介されたデジタル情報のメリットは、検索、製作、配付(コピー)、利用が容易であること。今や行政、金融、通信、交通機関では当たり前、ホテル、レストラン、コンビニやスーパーで、宅配の配達員、小さな子供までが皆、デジタルな電子機器を片手にし、私達の身の回りの至る所で、様々な情報がデジタル化され、利用されている。たとえ間接的であれ、もはや現代社会においてはなくてはならないモノ。これは、日常でコンピュターを使っている人ならば誰もが認める事実だと思う。
けれど、こんなに素晴らしいメリットがあるデジタル情報も、それに匹敵するか、それ以上に大きなデメリットが潜んでいる。デジタル情報を記録するためには、例えば大切なコレクションを収納しておく収納箱や倉庫(部屋)が必要なように、保存容器となる電子媒体が必要となる。ちょっと前ならフロッピーディスク、MOにCD、DVD、HD、、。最近では保存を必要とする情報量がとても多く、昨今販売されているデジタルカメラの画素数を観ても、精密な写真画像などを取り扱うと、ひとつのデーターが数[を超えるのは当たり前で、最大でおよそ1.4[程度の情報しか入らないフロッピーディスクなどは、『まったく使い物にならない ! !』。音楽の世界ではスーパーオーディオなるモノが出現し、ビデオテープは静かな勢いに乗ってDVD化している。VHSはついになくなる?
こういった電子媒体というのは、時代の要求とともにまた、必要に応じて進化してきたのであろうが、今なお、これを読み取る器機の進化と、抜きつ指しつつの果てしない興亡?を続けている。コンピューターなどのハードウエアの進化はもとより、それを作動させるOS(オペレーションソフトウエア/おおざっぱに人がコンピュターを利用する上で必要な基本ソフト)やアプリケーションソフト(ワープロや写真画像処理などに使う専用のソフトウエア、OSが管理、支配する)、ドライバー(たとえばプリンタやスキャナ、CDなどを読み取る装置を作動させるソフト)もそれぞれ進化を続けているから、その進化する度に、旧式の記録は書き換えたり、移し変えたりする必要が生じて来る。あるいは最悪の場合、知らぬ間に、『それはもう廃棄処分にしかならない』なんてことだってありうる。
デジタル情報は文明の進歩とともに育まれ、それとともにゴミ屑同前になりかねない。器機や記録媒体が変わればくり返しそれに合うように置換し続けなければならないし、古い記録を当時のまま読み取ろうとしたければ、古い器機もソフトウエアも温存、メンテナンスし続けなければならないが、開発、生産業者はそんなことはお構いなし。これが少ない情報ならまだしも、例えば膨大な数の情報を所有しているとしたら、いったいどういうことになるのだろうか。考えただけでもゾッとする。私は500枚を超えるレコードをコレクションしているが、ハッキリいってこれをCD化するなど考えたこともない。そんな暇があったら、お金を出して別にCDを買いにいった方がいいと思う。断然!
現在、世界中で、様々な機関で進められているデジタル情報サービスは、あらゆる情報のデジタル化と、その蓄積、保存管理、利用システムの構築に、官民をあげて必死な様子であるが、そこにはまた、著作権問題に代表される様々なる利害関係も存在し、発生していると聞く。一見して大変に便利。良いとこ取りのデジタルも、いやいや一筋縄では行かない、ずいぶんと取扱いが面倒で、それはそれは手間とお金のかかることだということを、あらためて思い知らされる講演であった。今から10年ほど前に初めて買ったパーソナルコンピュータは、ハードディスクの容量が500MB。CPUは75MHz。メモリーは32[! 当時、ソフトウエアとペンタブレット(マウスの変わりに電子ノートとペンのようなモノを組み合わせた描画用の道具)をあわせて虎の子の数十万円をはたいた。あれからおよそ10年。今所有しているノート型のパソコンは、ハードディスクの容量が28\。CPUは667MHz。メモリーは512[を誇る!? いやいや、今やこれをもってしても愚図でのろまなマシンに成り果てている。
いったいデジタルはどこへ行くのだろう
もはやそれを手放すことも出来ないわたしたちは、ただ進化に翻弄され、彷徨い続けるのか、、。2004.07.05 そろそろNewマシンを購入検討中(やれやれ、、、)
◎コンピュータが扱う情報の最小単位。2つの選択肢から1つを特定するのに必要な情報量が1ビット。一般に、nビットの情報量では2のn乗個までの選択肢からなる情報を表現可能。例えば、アルファベット26文字を表現するのに必要な情報量は5ビット(16<26<32なため)。
(8bit=1byte 1Giga byte=10億byte 1000G byte=2Tera byte 1Tera byte×1000=1Peta byte)
絵画・美術工芸品・文化資料の保存修復 中塚祐松堂
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