修復家の私考  〜 伝統・文化・芸術、そして文化財修復の世界 〜


◆修復家と健康

作品に出来る限りリスクを与えない様、修復処置の方法を工夫するように、それと同じように、私達修復家自身の健康も日頃からきちんと留意したいと思う。
私達修復家の周りには、案外と危険なものがある。 専門によって扱う素材も異なるから危険も様々だが、例えば発ガン性、有毒性の大きな有機溶剤や顔料。日本では、すでに海外でその使用を一切認められない物が今でも秘かに?使われていると聞く。私達専門家が利用する洗浄剤などの化学薬品の中には、危険なガスを発生するものや、容易に皮膚を犯すものもあるし、黴や埃などの被害を受けた作品を不用意に取り扱えば、喘息やアレルギー疾病を引き起こす可能性がある。かつて、表具師や一部の修復家は、絵画に発生したシミ抜きを行うために、処置中に有害なガスを発生するような薬剤を頻繁に使用していた。どこの誰が始めたのかはわからないが、彼等の多くは、その薬剤の目で見える限りの効能ばかりを評価し、その裏に潜む作品破壊の危険や人体に機能障害すら引き起こす有害性を知らなかった、、、。
今日はこの仕事をするかぎり、作品だけではなく、自分達の健康を保持するためにも最低限の化学的な知識を備え、問題を抱えた作品の取扱い対策もしっかりと身に付けなければならない。実際に有機溶剤を使う時、あるいは黴の発生した様な作品を取り扱う時には、必ず性能の良いマスク(風邪の時に使うマスクではダメです)を使用しなければならない。マスクの種類、機能によっては、少なからず呼吸もしにくくなるので、長時間の仕事はさけるべきだろう。フィルターの交換もケチらずにこまめにおこなおう。汚損した作品を取り扱う時は、清潔な手袋をする事が望ましい。使用後の手袋は洗濯をするか捨てること。汚い手袋で作品を取り扱うならば、きれいな素手でやった方がどれだけ良いことかと思う(実は手袋をすると、手先の感覚が鈍るので作品を傷めるリスクが生じる)。もちろん、自分自身のために作業前後の手洗いも必ずおこなうことが大切だ。
こういった基本的なことは、修復家のみならず、美術品などを所有する企業や一般のコレクター、博物館や美術館などで働く学芸員の方達にも、『そんなことは分かっている』と叱咤されるかもしれないが、もう一度、しっかりと確認してほしい。私の知る限り、案外ずさんなところが多いのだ。これは、収蔵庫の清掃、整理作業の時なども、決して軽視しするべきではないと思う。まず、少しぐらいならとか、ある程度ならとかいう考えは捨てること。常に出来るだけ安全と思われる環境、方法を考え、工夫して作業をする事を心掛けたい。これまた当たり前のようだが、長く集中して仕事をしなければならない時は、かならずどこかでキリを付け、一息入れて休憩する事も大切だし、その方がかえって仕事がはかどったりもする。 作業には期限というものが付きモノで、とかく大きな組織の中では、忙しくなると安全を無視してでも作業効率や結果を優先する様な傾向が見られるが、問題が起きた時には、良くない『結果』しか残らない。私の友人は、よく『いそがばまわれ』と言っている。
私達修復家も、とかくジッと座ったりあるいは立ちっぱなしのことが少なくない。これは誰から見ても健康上よくない。たまには外に出て運^動することも必要だろう。『筋骨隆々の修復家』は必要ないかも知れないが、 『不健康な修復家』もいただけない。より良い仕事をするためにも自分の健康維持はまず大切にしたい。それも修復家のツトメだと思う。
どうぞみなさん御自愛を。 m(_ _)m

数年前にマウンテンバイクを購入した。
日曜日は天気がよければ早起きして多摩川サイクリングロードを走る。とても爽快だ。(040105)

私の愛車?


絵画・美術工芸品・文化資料の保存修復 中塚祐松堂

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