修復家の私考  〜 伝統・文化・芸術、そして文化財修復の世界 〜


◆失われゆく音楽を求めて

最近、中国の『女子十二楽坊』という楽団が話題を読んでいる。このグループは、好みは別として、若く美しいと評判の女性ばかりで構成され、ニ胡(胡弓)や琵琶をはじめとした中国古来の伝統楽器でヨーロッパのクラシックやポップスを演奏している。実際に、厳しいオーディションで選ばれたエリートということらしいが、ちょっと前に、確かアメリカのグループで、『ボンド』という女性カルテットがアンプに繋いだ電子ヴァイオリンやチェロを演奏していて、日本公演でもグラマーな肢体を見せびらかすようなパフォーマンスを繰り広げていたが、ここらあたりに、このグループ結成のきっかけ、ヒントがあったのかも知れないと私は踏んでいる。日本でも少し前から三味線にアンプを繋いで演奏するアーチストがチラホラと表れており、吉田兄弟とかいうアーチストは、ニューヨークでも大盛況?そんなTVニュースを見たのも記憶に新しい。
実際の彼等の演奏は、さほど聞き込んだわけでもないが、時々FM放送などをBGMに流していると、同じようなスタイルの演奏がよく耳に入って来る。私ごとき、たかが一修復家が評論するなどはおこがましいが、一音楽ファンとして個人的な意見を勝手に言わせてもらうと、こういった類いの音楽は好きではない。彼等の演奏には、時に扱う楽器の存在感が不躾に強調されるばかりで、ただ辟易してしまうのだ。その音色や演奏スタイルを象徴的に利用するだけで、まるでヨーロッパやアメリカ人の東洋趣味をくすぐるような楽器の使い方がどうも気に入らない。
ちょうど、私が中学2年生の頃だったか、富田勲(TVアニメーション『ジャングル大帝』のテーマ局などを作曲)が日本ではじめてシンセサイザーという電子楽器(1970年代の後半あたりに開発された音楽機器で電子的に多種多様な音をつくり出すことができる装置。後にクラフトワークやイエローマジックオーケストラが利用してテクノポップなる音楽ムーヴメントを起こした)を利用して、一人でムソルグスキーやストラビンスキー、ホルストの楽曲をレコード化した。それを初めて耳にした時は、かなり強烈な印象を受けたものだが、それも何度か聞いてみると、その面白さは演奏技術や音楽的に優れたところにあったのではなく、ただ単に、初めて耳にする音の魅力に尽きていた。彼等の楽器はまさにこのシンセイサイザーに等しく、エキゾティックな音色やチャイナドレス、羽織袴で演奏するオリエンタルな容姿、パフォーマンスに妙があるだけで、演奏の巧みさや、音楽から受ける感動を私には与えてくれない。
東洋の音楽は、もともと西洋のそれとは音階の構成も異なるばかりか、リズムもテンポもない。二胡も琵琶も三味線もその中で使われて来たもの。今、彼等はあえてその古い楽器を選び、本来その音量もバランスも合わないエレクトリックベースやドラムスと組み合わせ、ヨーロッパの楽曲やアメリカのポップスを演奏し、ロックバンドでじょんがら節を奏でるのはなぜなのだろうか。それは、ノスタルジーや記憶の現代における再現か、それとも、音楽産業の中心となるアメリカやヨーロッパに向けての商業的な戦略か、あるいは彼等こそが、現代にそれを使うための正しい術を知り、過去から伝えられて来た文化の担い手として選ばれた者達なのだろうか。

フランス国内(政府?)では、伝統文化を残すことに積極的で、放送メディアで流される他国(ほとんどアメリカ製)の音楽に規制、制限のようなものを設けている。歴史的な背景から、お隣の韓国も日本の文化統制をしているが、これまたナンセンスかと思う。

やっぱり音楽は好きなモノを好きな様に楽むことにしよう。
(031217 J-WAVEで女子十二楽坊を聴きながら)


絵画・美術工芸品・文化資料の保存修復 中塚祐松堂

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