修復家の私考  〜 伝統・文化・芸術、そして文化財修復の世界 〜


◆画像のチカラ

今日では修復家の業務の一環として、すでに当たり前のこととなっているかと思うが、私は公的な機関だけでなく、一般の顧客に対しても、見積時における作品の状況説明と修復後の報告を丁寧におこなうことに努めている。そして、修復後には必ず処置前後の状況を記した報告書を作成し、すべての顧客に手渡している。これは、いままでもずっと、それを最も良く知っていると思ってきただろう所有者に、あらためてその特徴や状態を知ってもらい、後の保存管理の準備、利用の姿勢を整えてもらうことが大きな目的だ。せっかく高いお金を出して修復をしてもらったのだから、できるだけ上手に、すこしでも長く作品を保存してほしい。
しかし、専門的な知識を持つ者ならいざ知れず、そうでない者にはなかなか理解してもらうことが難しい文化財の保存、修復の世界である。数多ある公共の美術館、博物館施設でも保存修復の専門的な情報を持つ者はいまだ少なく、社会的にも広くは認知されていない。だから、日頃私達が当たり前の様に理解し、考えている事柄も、出来るだけわかりやすい様に工夫して説明をする必要がある。話を簡単にしようとして、安易に専門用語等使えば理解を得られない。逆に深切余ってあまり細かく説明をしてゆくと、話しは長く退屈なものになってしまうかも知れない、、、。そこで大活躍するのが写真やビデオによる画像である。文字を並べただけの文章にくらべると、見た目も鮮やかな画像は、利用の仕方によって誰にでもわかりやすく、注目してくれる人も多い。それは一目瞭然とはいかぬまでも、時に言葉よりもはるかに説得力がある。

最近、通常用いる塩銀カメラ(フィルムを用いるカメラ)にくわえて、デジタル形式のカメラやビデオカメラを利用する事が多くなった。現在市販されている機器の中には、赤外線で撮影出来る機能を持つものもあり、作品の調査、解析にとても役立つ。デジタル画像は、動画であれ制止画像であれ、パーソナルコンピューターと画像の加工が出来るソフトウエア(Photoshopなど)を用いる事で、適正な色彩を得るための調整も容易。加えて特定の部分を拡大したり、またカットしたりできるので、問題点を浮き上がらせ、説得力のある画像も得られる(もちろん、変造はイケナイ)。デジタル方式のカメラは、紫外線や赤外線の撮影にも効果があるため、通常では肉眼で確認できない情報もしっかりと捉えることができる。ホワイトバランスさえ取れば(光源の種類に合わせた色調整)、フィルムを使う塩銀カメラのようにフィルターを用いたり、露出やシャッタースピードに気を使う必要もあまりなく、おのずと、必要な機材も少なくなるので、工房の外へ出張して調査をおこなう時も装備が少なくて助かる。そして何よりも、撮影後の画像資料は、すぐにその場で確認出来るし、取り損ねもない。その上管理や編集がとても簡便で容易になることが大きな魅力。インターネットを通じて世界中に送信する事もできるし、研究発表の場でも利用出来る。アイデア次第で様々な活用ができるだろう。今やこれらの電子機器とコンピューターは、私達にとっての『三種の神器』になりつつある?

もちろん。悪用は御法度!!(020921)


絵画・美術工芸品・文化資料の保存修復 中塚祐松堂

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