ドメスティック・バイオレンス(DV)とは

 
いつも彼の機嫌をそこなわないように気を使っていませんか?
彼を怒らせないためにあきらめたことがいろいろありませんか?
あなたが怖いと感じたらそれは暴力、あなたが不自由だと感じたらそれは暴力です。

menu ●ドメスティック・バイオレンス(DV)とは? ●子どもに与える影響
●DVの本質・パワーとコントロール(力と支配) ●加害者(バタラー)の特徴
●暴力の背景にあるもの  夫・恋人からの暴力(ドメスティック・バイオレンス)から逃れるために
●暴力のサイクル ●DVの相談を受けたとき、あなたにできること
●暴力が与える精神的影響 ●女性に対する暴力関連の図書

●DV防止法
「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の一部を改正する法律(平成19年改正)」のポイント


●ドメスティック・バイオレンス(DV)とは?
「夫やパートナー等の親密な関係にある(あった)男性から女性に対してふるわれる暴力」のことであるが政府の調査によれば20人に一人の女性が生命に危険を感じる程の暴力を受けていたことが報告された。
また、日本の警察の犯罪統計でも殺人事件の女性被害者の約3割が夫、内縁の夫から殺され、離婚調停を申し立てる妻の約3割が離婚理由として「夫の身体的な暴力」を挙げている。
暴力というのは本質的に理不尽なものであり、「安心」「自信」「自由」という人間らしく生きる権利を奪うものである。
これは家庭内の個人的夫婦の痴話喧嘩という次元をはるかに越えた社会構造の中にあり、またジェンダー(社会的、文化的性差。いわゆる男らしさ、女らしさ)による不平等と関係するような価値観、伝統、習慣などが複雑に絡み合っていると考えられる。たとえ夫婦であっても個々とした個人の人格があり、妻は夫の所有物ではない。



●DVの本質・パワーとコントロール(力と支配)
身体的暴力・・・殴る、蹴る、引きずりまわす、物を投げつけるなど
心理的暴力・・・大声で怒鳴る、罵る、脅すなど
性的暴力・・・・・性行為を強要する、避妊に協力しないなど
経済的暴力・・・生活費を渡さない、働きに行かせないなど
社会的暴力・・・女性の行動の制限、友人に会わせないなど

何よりも辛い事は身体に受けた傷やアザだけでなく、目に見えない心に受けた傷が被害者女性にとって一番辛く、長い時間をかけての心のケアを要する。
心理的暴力もまた身体的な暴力とほぼ同等であると考えられる。


●暴力の背景にあるもの
DVを支えている性差別社会
DVの背景にあるのは、性差別社会である。つまり、経済的、社会的に男性が優位に立つ社会、女性が経済力を持つことが困難を伴う社会、子育てが女性の役割とみなされ、その労働に対して経済的価値が付与されていない社会、妻には夫を世話し支える役割があるとされている社会、男性の攻撃性や暴力性が男らしさの証と容認されている社会。このような社会意識(ジェンダー)がDVを許してきたのである。
ジェンダー・・・生物学的性差(セックス)ではなく、社会的・文化的・歴史的に作られた性差のこと。いわゆる「男らしさ」「女らしさ」
「男だったら・・・」「女のくせに・・・・」とか「妻は夫に服従するものだ」「家事や育児は女の仕事だ」という刷り込みを言う。


●暴力のサイクル
1.緊張の蓄積
この時期、激しい暴力は起きないが加害者の機嫌をとったり、加害者のために子どもたちを静かにさせるなどの操作をするが徐々に家庭内がピリピリしていく。
2.
暴力の爆発時期
ある日、突然激しい暴力が始まる。暴力の多くは予測不可能で、コントロールがきかない破壊的な暴力であり、生命に危険が及ぶこともある。
3.
ハネムーン期
加害者による謝罪や、プレゼントを贈るといった行動により、これが本来の相手の姿であるかのように思い込んでしまうが、長くは続かない。

全てがこのようなパターンとは言えないが、暴力はこの三つのサイクルにより何度も繰り返される。

●暴力が与える精神的影響
・恐怖と不安 = 安心、安心でない状況
・無力感 = 自信がもてない
・行動の選択肢がない = 自由がない

予測不可能な突然の激しい暴力がいつ起こるかわからない、安心で安全な状況にない日々を恐怖で過ごすことは、精神的、肉体的に大きなダメージを受けると言ってもよい。
身体的、心理的暴力により、被害者女性は「私がいたらないから」「私が悪いから暴力をふるわれる」と自分を責めていくようになる。

被害者心理について
・暴力は安心や自己尊重感を奪う、自信がもてない
・自責感情が強い
・うつ傾向にある
・子どものケアができなくなる
・孤独感、無力感が深い

暴力からの脱却はなぜ困難なのか?
DVからの脱却はいくつかの要因が複雑に絡み合っているため困難になることもある。加害者が暴力を振るうことを誰かに言おうとしたり別れようとしたら’殺す’などの脅かしを受けている場合がある。そのため「別れようと考えたり(したら)殺されるかもしれない」という恐怖を感じ、また別れた後の報復に対して強い恐怖を感じている。
子どもがいる場合は、子どものためにも父親が必要ではないかと考えたり子どもの将来を考え、日本では離婚に対する否定的な社会的見方があることから離婚に踏み切れない被害者もいる。
また、最低限の金銭しか渡されていなかったり、働きに行かせてもらえないという状況から被害者は別れた後の生活どころか逃げ出すためのお金もないこともある。
心理的暴力を受け続けることで、自尊心の低下や問題に対処できない無力感から自立した生活を営むことへの不安を持っている場合もある。


●子どもに与える影響
6〜7割が身体的虐待、全ての子どもが精神的虐待
・暴力でものごとを解決することを学習する
・暴力を容認する傾向
・児童虐待とDVは重なっていることが多い
・全ての子どもが本来持っている個性やすばらしさを「暴力」という理不尽な力によって奪われていく

大人たちが頻繁に使っている「暴力」というものを子どもたちは当たり前のことと感じ取り確実に感染されていく
・不安感、睡眠障害、摂食障害などのストレス症状
・無力感、罪悪感
・他者とのコミュニケーションがうまく取れない
・感情をうまく表現できない
・身体の発育の遅れ
・自分を認めてくれない、誰も信じられないと思う反面、それでも自分に関心や認めてほしいという気持が他者や自分に対して攻撃的な行動として現れることもある

DVのある家庭で育った子どもは暴力のない家庭で育った子どもに比べて成長してから加害者になる確率が高いといわれている。他者に対して暴力を振るわなくても自傷行為を繰り返したり、薬物、アルコールに依存するなど自分自身に対して攻撃を向けることがあるといわれている。
直接的な暴力を受けない場合でも、暴力を振るわれる光景を目撃することは、まして自分の尊敬する父親だったり、母親だったりすれば大きな衝撃を受け、直接殴られたと同様にショックを受ける。

しかし、過去40の調査・研究から、自分が虐待されたから自分の子どもに同じことを繰り返し行うのは3分の一から5分の一という統計も出ている。
多くはその辛さを身をもって体験しているだけにあんな親にはなりたくないと自分の人生を切り開いている男性、女性がいるのも事実である。


●加害者(バタラー)の特徴
職業の有無や教育レベル、職種(大学教授、大企業の管理職、弁護士、警察官など)、学歴、階層に関係なく起きている。
アメリカでは、防止法ができてもバタラーが見逃され野放しになり、DV被害が継続した。バタラーとは自己コントロールの下手な男性だという誤解と、DVは自制心の喪失による「暴力の自然爆発」だという偏見があったことが、その大きな原因である。
バタラーとは、妻を強制的に服従させるために「暴力を選ぶ男たち」であって、DVとは「恐怖による支配」である。
・外面(公)と内面(私)の不一致
・矮小化と否認
・被害者非難と責任逃れ
・多様な支配行動
・嫉妬心と所有欲
・子どもの利用と虐待
・酒・薬物への責任転嫁
・自己変革への抵抗 など


(参考文献 森田ゆり「エンパワメントと人権」解放出版社 同「癒しのエンパワメント」築地書館 藤森和美「被害者のトラウマとその支援」試信書房 
沼崎一郎「なぜ男は暴力を選ぶのか」かもがわブックレット 同 特集 DV法をめぐってより 敬称略)



●夫・恋人からの暴力(ドメスティック・バイオレンス)から逃れるために 
我慢しないで! あきらめないで! あなたは一人じゃない!

ウィメンズネット・こうべでは、暴力からの脱出や生活再建について一緒に考えます。
病院や警察、福祉事務所や弁護士事務所など必要に応じて付き添いをしています。
(公的相談機関のページをチェックして下さい)

身体の危険を感じたら、警察に駆け込む110番する。
女性相談センター(配偶者暴力相談支援センター)民間シェルターなどの一時保護機関につないでもらう。
日頃から警察の生活安全課、女性相談センター(配偶者暴力相談支援センター)等に相談しておく
生活や住居について福祉事務所に相談する。(逃げた先の福祉事務所でもOK)対応が悪くても諦めない
女性センター女性相談センター(配偶者暴力相談支援センター)民間の相談機関シェルター相談する。
経済的に苦しくても、生活保護や、公的な母子支援の制度を利用すればなんとかなる。
被害の証拠をとっておく。写真(怪我の個所及び自分だとわかる写真)や、医者の診断書日記言葉の暴力も記録しておく)も証拠になる。 ※証拠がなくても、被害者本人の陳述書があればなんとかなる。
自分名義で、少しでもお金を貯めておく。なくてもなんとかなるが・・)
住民票を動かさないこと。住民票がなくても国民年金の受給国民健康保険の加入、学校の転入手続などできる
暴力がひどい場合、調停などは別居して、保護命令を取るなど身の安全を確保してから後にするほうがよい。過去に身体的な暴力がある場合や身体や生命に危害を与えるような脅迫行為があれば、 保護命令を裁判所に申請することができる。(6ヶ月間の接近禁止命令と家からの2ヶ月の退去命令がある)
接近禁止命令は子ども、親族、支援者にも適用される。保護命令は元夫も対象になる。

信頼できる弁護士に相談する。
裁判費用が払えない場合、法律扶助協会が利用できる。
調停が困難
な場合、最初から弁護士に依頼すると早い

(「ウィメンズネット・こうべ」学習会資料より)


●DVの相談を受けたとき、あなたにできること

1 彼女の話を信じて、聴くこと。(傾聴、受容、共感)
2 彼女の感情を受けとめる。充分話しをしてもらい、非難しない。
3 常識や従来の女性観を決して押しつけない。
4 暴力を受けている女性は「自分に落ち度があったから」と自己を責めている場合が多いので、繰り返し「あなたは悪くない」「自分を責めないで」など自己肯定できる言葉をかける。
5

彼女の問題は彼女だけの問題ではなく、社会的問題であることを認識できる助けをする。

6 DV相談機関やシェルター,法律相談などの情報を適切に提供する。
7 あなた自身の労力の限界を自分で認識する。
8 彼女を救う役割をせず、彼女自身が彼女の人生の責任を取れるよう勇気づける。
9 彼女の「戻る決断」などに自分の失望感を押しつけない。

(「ウィメンズネット・こうべ」学習会資料より)


●「女性に対する暴力」関連の書籍 

タイトル 著者名 出版社
女性・暴力・人権 渡辺和子編 学陽書房
女性学・男性学〜ジェンダー論入門 伊藤公雄 国信潤子 有斐閣
サバイバーズハンドブック〜性暴力被害回復への手がかり 性暴力を許さない女の会編 新水社
あなたが悪いのではない リンダジンガロ 発行 ビデオドック 発売 木犀社
心的外傷と回復 ジュディスハーマン みすず書房
性の法律学 角田由紀子 有斐閣
性差別と暴力 角田由紀子 有斐閣選書
ドメスティックバイオレンス 有斐閣選書
ドメスティックバイオレンス〜愛が暴力に変わるとき 森田ゆり 小学館
なぜ 男は暴力を選ぶのか 沼崎一郎 かもがわブックレット
エンパワメントと人権 森田ゆり 解放出版社
子どもと暴力 森田ゆり 岩波書店
キャンパスセクシュアルハラスメント対応ガイド 沼崎一郎 嵯峨野書院
白書 実態・防止・解決 スクール・セクシュアルハラスメント 子ども性虐待防止市民ネットワーク・大阪編 明石書店
今 学校で何が! 「スクール・セクシュアルハラスメントを考える」報告集 SSHP全国ネットワーク 事務局 06-6992-9184
兵庫発「女の伝言板」パート2 ウイメンズネット・こうべ編
犯罪被害者の心の傷 小西聖子 白水社
トラウマの心理学 小西聖子〜心の傷と向き合う方法 NHKライブラリー
蘇る魂 性暴力の後遺症を生き抜いて 穂積純 高文研
御直披 板屋利加子 角川書店
 
女たちのパワーブック
ノルウェー労働党女性局編 三井マリ子・山中紀代子訳 かもがわブックレット
問い合せ メール or TEL&FAX 078-734-1308