第11章 気象観測

Since: October 4, 1999
Last updated: May 25, 2003

§11.1 地上気象観測

§11.1.1 気象台・測候所で行う地上気象観測

観測項目
[測器によるもの] 風向・風速、気圧、気圧変化傾向、気温、露点温度、降水量、日照時間、日射量
 
風速 周囲の影響を避けるため地上10mで観測することが基本。しかし、高層建築が多くその影響を受けやすい場所では、さらに高い場所で観測されることがある。観測時前10分間の平均。
 
KT単位とm/s単位との関係
1KT=1NM(海里)/h≒2km/h KT×2≒km/h
1KT≒0.5m/s KT÷2≒m/s
風向 風の吹いてくる方向。
方向の表示…36方位、16方位、8方位で表す方法がある。
気圧 地上の観測点は様々な高度の部分に分布している → 気圧の海面更正(海面更正気圧)
降水量 転倒ます型雨量形 (降水量0.5mm毎に受水ますの傾きが変わってパルス信号を発生する) を用いて観測。降雪量は融かして降水量として観測し、 積雪の深さは超音波積雪深計もしくは雪尺によって観測される。
観測時刻 3時間おき、UTC基準(00,03,06,09…)

[目視によるもの] 大気現象(雨、雪、霧、雷、みぞれ、あられ、ひょう、煙霧、黄砂、砂塵嵐、虹などの発現時刻、強さ・状態、終了時刻)、視程、雲(雲形、雲量、雲高)観測結果は気象庁へ送信され、気象庁で全国の観測結果をまとめている。
 

§11.1.2 アメダス観測

アメダス(AMeDAS=Automated Meteorological Data Acquisition System:地域気象観測システム)
全国約1,300ヶ所(間隔平均17km)

観測要素

データは、電話回線を通じて気象庁へ送られる。

AMeDAS観測の利点

§11.1.3 海上気象観測

観測種目
気圧、気温、湿度、風向・風速、降水、雲、視程、天気などのほか、海上特有の種目として、海面水温、波浪、海氷や船舶への着氷の状態などがある。

波浪を目視で観測するには、風浪とうねりに分けて それぞれの波向、周期、波高を観測する。
海面水温 海面から1〜2mの深さまでのよく混合した海水の温度
風浪 その海域の風によって起きる波。波長は数mから数十m。
うねり 遠くの海域で発生して伝わってきた波。その海域に風がなくても残る波。波長は数十mから数百m。
波向 波のやってくる方向(風向と同様)
周期 波の山から山までの時間 いくつかの波を観測してその平均を取る。
波高 波の底から山までの高さ いくつかの波を観測してその平均を取る。
有義波高 波浪計でN個の波(Nは100程度)を観測し、波高の高いほうからN/3個の波高を平均した値。平均波高は有義波高の約0.6倍、1000波に1波は有義波高の2倍近い波が現れる。
風浪の向きはほぼ風向と一致するが、うねりの向きはその海域の風向と一致するとは限らない。
波浪は船舶に取りつけられた波浪計によっても観測される。波浪計によって数分間に観測された波の高さと周期を統計処理して、有義波高や平均周期を出す。
波浪計では、風浪とうねりは区別できないし、波向もわからない。

§11.1.4 航空気象観測

航空機の離着陸の安全のために行う観測 → 風、視程、雲の高さの変化、雷などの発生に対して迅速に対応。
観測結果は直ちに空港内の航空管制機関や航空会社などに通報するとともに、気象庁を通じて他の空港にも送られる。
滑走路付近で観測。観測時前10分間の平均に加えて、風の変動の大きいときには、この10分間の最大・最小瞬間風速や風向の変動範囲も観測される。この他、航空機の離着陸には微細な風の変動も影響するので、2分間平均の風も常時記録して監視するとともに、空港内の関係機関に分岐提供している。
視程 空港周辺を目視で観測するほか、滑走路視距離観測装置を用いて、滑走路視距離(パイロットが滑走路の標識や灯火を見ることができる距離) を観測する
一般的な気象観測で観測される要素(滑走路付近の気温、大気現象など)も視程や滑走路の状態に関係の深い要素として重要である。雲量・雲形のほかに、雲底の高さを目視及びシーロメーター(真上に発射した光パルスが雲底で反射されて戻ってくる時間を測って高さを求める装置)で観測する。

航空気象でいう現地気圧 → 滑走路の上3mの値に換算したもの
海面の上3mの値に換算したもの → 高度計規正値(QNH)

航空機が備えている気圧高度計は、気圧を測定して標準大気の気圧対高度の関係から高さに換算するものであるが、その場所・時刻での実際の海面上3mの気圧が標準大気の気圧と異なる分をQNHを使って補正する。
 

§11.2 高層気象観測

高層気象観測官署:国内18ヶ所、全世界約850ヶ所 海洋上(特に南半球)が不足
WMO勧告:観測の間隔 → 陸上約300km、海上約1,000km
ACARSによるデータは数値予報の初期値解析に用いられ、予報開始直後の予報精度向上に役立っている.

§11.3 気象レーダー観測

レーダー(RADAR):RAdio Ditection And Rangingの略。
電磁波を発射して目標の存在を探知し、その位置を測定する装置。レーダの探知範囲は数百キロに及び、目視でも天気図でも把握しにくい「メソスケール現象」の観測に適している。

§11.3.1 気象レーダー方程式

レーダーの仕様によって決まる定数やc,ε,τなどの常数を まとめて C と表すと、レーダー方程式は簡単になる。
  Pr= (CL2/r2)・Z
レーダー方程式の中で、降水粒子の特性に関する項はレーダー反射因子 Z。つまり、気象レーダー方程式は平均受信電力Prから Z を求める式である。Z は単位体積中の降水粒子の直径を6乗して集計したもので、妊6 と表せる。

§11.3.2 レーダー反射因子と降雨強度推定

降水粒子の粒径分布にはある一定の規則性があるので、Z (mm6/m3)と降雨強度 R (mm/hr)との間には 以下のような統計的関係が見出されている(Z-R関係)。
  Z = BRβ
ここで、B,βは定数で、降水の種類によって異なるが、200と1.6が代表的のものと考えられる。気象庁のレーダー観測ではこの関係を用いてレーダー反射因子 Z を降雨強度 R に換算してレーダーエコー図に表示している。

§11.3.3 レーダー電波の波長と降水探知能力

探知範囲とアンテナの仰角・山岳との関係

§11.3.4 途中の降雨による減衰

§11.3.5 レーダー・アメダス解析雨量図

降雨強度には、途中の降雨による減衰やZ-R関係による誤差のほかにも様々な誤差を含んでいる。→すべての誤差をアメダス雨量計による測定値と比較して補正
レーダーで測定されるのは降雨強度 → 1時間積算して雨量計の毎時雨量と比較補正
この補正によって作成されるのがレーダー・アメダス解析雨量図である。前一時間降水量が5km格子毎(2001年3月より2.5km格子)に記号で示される。2003年6月2日より30分ごとに作成され発表される。
日本海上をカバーしているのはメリット。17km間隔のアメダスでは捕捉できない集中豪雨も捕らえることができ、見逃しがほとんど無くなった。


利点
欠点
レーダー
空間分解能がよい
観測誤差が大きい
AMeDAS
直接観測のため誤差が小さい
分解能が荒い
観測点が陸上にしかない
これら2つの観測法の欠点を相互に補完し、利点を生かすためにレーダーアメダス解析雨量は作成されている。

§11.3.6 地形エコーの除去

山岳などからの反射によるエコー → 降水の観測には不要
パルスの変動の差を利用して除去する

地形エコー以外の降水エコーの探知を妨げるもの

§11.3.7 気象ドップラーレーダー

気象ドップラーレーダー: 「ドップラー効果」を利用して、降水粒子の速度のレーダー方向の成分を測定する。

降水粒子がレーダービーム方向の速度成分を持っているときは、送信電波の周波数と反射電波の周波数が異なる(ドップラー効果)。これを利用して、降水範囲の移動速度を知るために作られたもの。3箇所以上のドップラーレーダーで観測すれば、速度の3成分(東西、南北、上下)を知ることができる。

動径速度パターンの利用:動径速度の正負(風向が観測点に近づく向きか、遠ざかる向きか)の分布を見ることで、空気の発散や渦を見出すことができる。
 

§11.3.8 短時間予報(ナウキャスト)

§11.4 気象衛星による観測

ひまわり5号(GMS5)は観測装置の不具合のため2003年5月22日9時JSTをもって観測を終了した。
同日15時JSTより東経155度赤道上に位置するアメリカの静止気象衛星GOES9(パシフィックゴーズ)が観測を引き継ぎ、MTSAT打ち上げまで運用される予定である。
なお、運輸多目的衛星(MTSAT)の打ち上げは2003年度冬季の予定。

静止気象衛星は赤道上に5つ配置。日本付近を観測するのはGMS(Geostationary Meteorological Satellite)ひまわり。

静止衛星とは、地球の赤道上にあって 地球の自転角速度と同じ角速度・向きで地球を回る衛星。地上から見ると止まっているように見える。高さは35,800kmで直下点を中心とする半径約6,000kmの範囲の雲が観測できる。
極地方は、静止衛星では見えないので、極軌道気象衛星を用いる。極軌道気象衛星には、アメリカのNOAAシリーズと旧ソ連のMETEORシリーズがある。極軌道というが、極の真上をとおるわけではなく、緯度80度の上をとおる。しかし、軌道の両側±1,500km程度の幅を観測するので、極点もカバーできる。1日に同じ場所を2回(12時間おき)に観測することができる。

日本の静止気象衛星「ひまわり」

ひまわりの水平解像度

直下点(赤道、東経140度) 日本付近
赤外画像(IR) 5km 南北約7km
可視画像(VIS) 1.25km 南北約1.7km

ひまわりの感部VISSR(Visible and Infrared Spin Scan Radiometer)

を観測している。雲分布の観測は毎時間行われるが、3,9,15,21時(高層気象観測時刻)には30分後にも観測されて、30分間の雲の移動から上空の風向・風速が推定されている。

衛星画像の種類と特徴
 
赤外画像(IR) 雲がだす赤外放射を観測。そのエネルギーの大きさから温度を推定する。推定された温度を輝度温度もしくは相当黒体温度という。陸地や海面の相当黒体温度は、実際の観測値がない場合の近似値として扱い、雲の相当黒体温度は雲頂の高さを求めるのに用いられる。
赤外線は常に出ているので、昼夜を問わず観測できる。
輝度温度の低い雲すなわち高い雲ほど白く表現する。
水蒸気画像
(WV)
対流圏中上層の水蒸気量を観測。
水蒸気が多いほど白く表現する。
画像のパターンから対流圏上層の流れの様子を推定することができる。
可視画像(VIS) 昼間しか見えない。
日射をよく反射する厚い雲や新しい雪氷ほど白く見える。
見た目に近い。(赤外画像ではわかりにくい霧なども見ることができる)

気象衛星で観測する画像などから得られる情報

  1. 雲分布(厚さ・高さなどの雲の特性を含む)
  2. 雲の場所の海面水温分布(IRによる)
  3. 雪氷、特にオホーツク海の海氷の分布(雲に比べて海氷の動きが遅い)
  4. 上層風(雲の移動から推定)
  5. 気温や水蒸気量の鉛直分布(NOAAに搭載されたTOVSによる)
  6. 雲分布から低気圧、前線、台風の中心位置や発達の段階・程度を推定することができる



第12章 気象解析
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