第5章 大気における放射

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Last Updated: April 22, 2000

§5.1 地球に入射する太陽放射量

太陽定数:I=1.37×103[Wm-2] (太陽からの放射線に直角な方向の単位面積が単位時間に受ける太陽放射のエネルギー)
 

§5.2 黒体放射とプランクの法則

物体はその温度が絶対零度でない限り絶えず電磁波を放射している。一般に、よく放射する物体は吸収もよくする。そこで、入射してきた電磁波をすべて吸収するような仮想的な物体を考える。このような物体のことを黒体という。黒体からの放射を記述する具体的な法則がプランクの法則である。プランクの法則は量子力学から導くことができる。プランクの法則から、単位面積から単位時間に放射される全エネルギー量 I*
  I* = σT4  (ステファン・ボルツマンの法則)
と求められる。
ここで、σ=5.67×10-8[Wm-2K-4](ステファン・ボルツマンの定数)である。
また、単位波長あたりの放射強度 Iλ* が最大となる波長(λm)は、温度が低くなるのに対して大きくなり、
  λm[μm]= 2897/T (ウィーンの変位則)
となる。
ステファン・ボルツマンの法則とウィーンの変位則を用いると、観測結果から太陽の表面温度を推定することができる。
 

キルヒホッフの法則:放射率と吸収率は等しい.つまり,放射をよく吸収する物体は最もよく電磁波を放射するということである.
 
 

§5.3 放射平衡温度と太陽放射・地球放射

地球に入ってきた放射の一部は、大気中の気体分子・エアロゾル・雲・地表面によって散乱・反射される。
このように、地球によって反射された放射量と入射太陽放射量との比をアルベド(A)という。
地球のアルベドは0.30程度。

地球の放射平衡温度

  S0(1-A)πre2 = 4πre2 σTe4
  Te = (S0(1-A)/4σ)1/4 = 255[K]
これは、実際に観測による288Kよりも低い。
 →大気による温室効果を考慮に入れていないため。

プランクの法則から地球の放射の大部分が赤外線領域にある事がわかる。よって地球からの放射を赤外放射もしくは長波放射ということがある。

§5.4 吸収・透過・反射及び散乱

地球大気による吸収
地球大気上端で観測される放射量よりも、地表面で観測される放射量のほうが少ない。
 → 大気中にある雲やエアロゾル・気体分子で吸収・散乱された

吸収帯による吸収:赤外線領域はH2Oによるものが主
紫外線領域(0.3μm以下)の吸収:オゾンや酸素による

地球放射の吸収の主役:水蒸気と炭酸ガス → 温室効果

窓領域

大気による吸収の弱い領域で、この領域内の放射は宇宙空間に到達する。宇宙空間でこの波長域の放射強度を測定すれば(地球放射が黒体放射であるとして)、p}ヒ体の温度を推定することができる。このようにして推定した温度を輝度温度or相当黒体温度という。
実際に、気象衛星でこのような観測を行い、海面温度分布や雲頂高度を求めている。(例えば、ひまわりの赤外画像)
散乱
電磁波がエアロゾルや気体分子にぶつかる → いろいろな方向に反射 ⇒ 散乱
電磁波の波長と粒子の半径との関係によって散乱のされ方が異なる
  1. 波長≧半径:レイリー散乱

  2. 散乱光の強さは電磁波の波長の4乗に反比例
    空が青く見える理由
  3. 波長≒半径:ミー散乱

  4. 散乱の強さはほとんど波長によらない
    雲や汚れた空が白く見える理由
  5. 波長≦半径:幾何光学散乱

  6. 虹が見える理由

§5.5 温室効果

地球大気は、日射に対してはほぼ透明(透過する)であるが、地球放射(赤外放射)はよく吸収する。そのため地表温度に影響を与える。

1層大気モデル

大気層の吸収率:太陽放射に対して0.1、地球放射に対して1と仮定。(太陽放射の1割と地球放射のすべてを吸収)
IE:地表面における単位面積あたりの平均日射量
  IE= S0(1-A)/4 = 241[Wm-2]
放射平衡にあるとき
 地表面: 0.9IE+σTa4+σTg4 = 0
 大気層: 0.1IE−2σTa4+σTg4= 0
この2式より、Ta=255[K]、Tg=299[K]と求めることができる。
地表面が大気からの赤外放射を吸収
 → 地表面温度は大気がない場合の放射平衡温度よりも高い ⇒ 大気の温室効果

金星の表面温度が放射平衡温度よりもかなり高い ← 金星が厚い大気に覆われている(温室効果強)
 
 

§5.7 放射平衡と大気温度の高度分布

放射平衡にある大気の高度分布を求める → 大気をたくさんの層に分ける
放射平衡にある大気の温度分布(一般気象学p.132、図5.18)
オゾンによる紫外線吸収の効果を考慮すると → 成層圏の存在が確認
放射平衡にある大気の対流圏での気温減率は観測値6.5℃/kmよりかなり大きい → 大気は不安定 → 対流が起こる
この対流の影響(水蒸気の潜熱放出など)も考慮に入れて計算されたもの → 放射対流平衡
これは、観測結果とよく一致する。
 

§5.8 地球大気の熱収支

(一般気象学p.135、図5.20参照)



第4章 降水過程
第6章 大気力学の基礎
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