「序章」
それは1月頃、私がたまたま仕事の都合で京急川崎駅の前を通りかかった時の
事だった。
なにげなく駅前のゲーセンに目をやると、見たことの無いプライズマシンの筐
体がある。しかしただの筐体では無く何か変な感じ
がする。
なんというか、UFOキャッチャーの亜流っぽいデザインなのだが、筐体に水
が入っているのだ。
仕事の合間だったので時間が無いことを気にしつつも、その怪しげな筐体のデ
ザインがどうも気になるので近くによって確認して見ると…
筐体の中になんと伊勢海老が入っていて動いているではないか!?
その日は仕事中と言う事もあり時間も無かったので、プレイは見送って事務所
に帰る(万が一エビが取れても事務所に持って帰る訳にはいかないので)が、余
りの凄い発見に、その日の内に友人等に電話をして報告を行う…
しかし、余りの変な話に友人達もにわかには信じられないらしく、流石に
半信半疑の様子だった。
しかたがないので、その週の週末にもう一度確認すべく再び川崎駅前を訪れて
みたが、既にその時には「伊勢エビキャッチャー」
は既に姿を消した後であった。
その後、このゲームの事が雑誌等でも取り上げられ、五反田に入荷といった噂
を元に五反田まで足を運ぶも、そこには既に筐体の姿はといった事もあり、我々
にとって幻のゲームとして、その後の消息を掴む
ことは出来なかった。
「伊勢エビキャッチャー体験記」
2000/03/02、その「伊勢エビキャッチャー」が、なんと
新橋に入荷されていると言う情報を再びキャッチする事に成功した。
なんでも、ほんの数日前に入荷されたらしくて、まだ暫くは新橋にあるであろ
うとの報告である。
その報告を受けた私は、友人のデジカメ担当と現地のサポーターとで即座に
チームを結成し(一部嘘)、報告の翌日に遠征を敢行する事とした。
「伊勢エビキャッチャーの存在を確認し、その画像を入手すること」
「伊勢エビキャッチャーに挑戦し、伊勢エビを捕獲すること」
これが、当局より今回我々に課せられた任務であった。(コレも嘘)
翌日、新橋駅前にて友人と待合わせの時間に集合し、そのまま目的地を目指す。
場所は駅前の「ニュー新橋ビル」この「ニュー」とか名前が付いているが、古
色蒼然とした建物の地下1階に例の「伊勢エビキャッチャー」があるとの報告で
ある。
新橋ビル地下のゲーセン街と言えば、何故か未だにテーブル筐体(アップライ
トではなく平台のタイプ)が現役だったり、キックボードがUFOキャチャーの
景品となっていたりする怪しげな風土の場所である。
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我々を威嚇するように群れる伊勢エビ
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そういった一種いかがわしげで、逆にサイバーとも言えるハイブリッド的な雰
囲気が伊勢エビを惹き付けるのだろうか?などと言った感慨を抱きつつ、地下へ
のエスカレーターを下ると、そこには…
あった、それは間違い無く私が以前に川崎で目撃したものと同じ筐体であった。
筐体の中で伊勢エビも蠢いている。
流石に物珍しさからか周辺にはすでに野次馬が集まっているものの、概ねの客
は遠巻きにして筐体を眺めている。流石に恥ずかしいからだろうか?いや、ひょ
っとしたら伊勢エビが思いのほか狂暴で、
あまり筐体に近づくのは危ないのかもしれない。
危険な香りを感じつつ筐体に近づいて見ると、危険な香りと思われたものは海
産物独特の生臭い臭いであった。流石は活伊勢エビ
だけの事はある。
まずは筐体を確認する。筐体の正式名称は
「サブマリンキャッチャー」
サイズは小型のUFOキャッチャーのような感じだが、内側が2重構造になっ
ており、中に水槽状の部分がありここに水が張られてエビが入っている。
単なる水槽付きといった訳ではなく、エビを飼育する為に水の濾過フィルタや
エアを送る装置、塩分濃度計(PHチェッカ?)とかも標準で付いているようである。
ちなみに写真では分からないが、エビは元気に動き回っている。
アームの爪は3本のタイプで、何故かブラックライトで光るようになっている。
とはいえ、別にブラックライトで照明されている様子は無かったが…。
1プレイの価格は200円、まぁ筐体のランニングコストや景品の価値を考えると
妥当なところだろうか?
筐体をあちこち眺め回して見ると、奇妙な注意書きがあるのに気付く。
「景品は生ではなく、加熱調理してからお召し
上がりください」
一体、どこの強者が伊勢エビをその場で丸かじりしたのだろうか?よくもまあ、
そんな電撃ネットワーク並みの強まったプレイヤーが居たものである。
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このようにして、3本爪のアームで伊勢エビを狙う
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まずは筐体の写真を撮影し、その後コインを投入
しトライしてみる事とする。
プレイをする前に、ふと不安がよぎる「ここでもし
取れたら、やっぱソニックの袋か何かくれて、持ちかえりになるんだろうか?
その場合、俺は四六時中混雑している東海道線に伊勢エビ持参で乗ることに?」
などと、要らぬ事を考えていると、あっさりとミス。
その後、2度3度とトライするも、どうにも上手く行かない、どうもアームの
設定がイマイチ上手く行ってないらしく、エビの居る深度より少し上に上がらな
いとアームが閉じ始めないようだ。おかげで、ポイント的にはベストの位置でア
ームをおろしても、エビの背中を引っかくばかりである。
しばらく友人と相談して「コレはまっとうな方法
では取れない」という結論に達し作戦を練る事とする。
その最中にたまたま通りかかった人たちが、物珍しげに筐体を眺めたり、かなりの
人数がプレイをしていったりしたのだが、やはり同じような状況で全敗である。
我々は協議の結果、作戦としてはアームの閉じ始めるタイミングに問題がある
のだから、エビが2匹重なった瞬間を狙うしかないだろう。という方針で再度
トライを開始。
コインを1枚のみ投入し、エビが自分から移動して取れるポイントに入るのを
待つ…周りのギャラリーの目が結構恥ずかしい
が、ここは我慢のしどころである。
エビが重なったのを見極め、素早く2枚目のコインを投入しアームを移動させ
る。そして、今度こそエビを捕らえた!!と思った瞬間に、信じられない光景が
我々を襲った。
なんと、エビが自力でアームから脱出した
のである。
と言うか、良く考えればあたりまえである。相手は生き物なのだから、訳の分か
らないアームで掴まれて持ち上げられそうになれば、暴れるのも当然である。
私はUFOキャッチャー歴10年以上になるが、
自力でアームから脱出するような強敵は初めてだった。
結局、何度かトライを繰り返すが、やはりエビを捕らえる事は出来ず、計2000円
近くが文字通り水泡と消えた。
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伊勢エビキャッチャーを調整する店員
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その後、流石に金銭的に苦しいので、他の客のプレイをギャラリーしてみること
にするが、このアームの設定ばかりはどうしようもなく、誰も一匹も取ることが出
来ず諦めて帰っていく。
ゲーセンの店員も流石に気にしているらしくて、暫く後にマニュアルを引っ張り
出してアームの調整を始めたが、他に類を見ないような特殊な筐体の為に、どうに
も上手く調整が出来なかったようだ。
この時、ついでに「ちょっと景品取れないんで、
取りやすいように位置を動かして下さい」とお願いしようかとも思ったが、
積みなおした端から景品が自力で移動する為、余りにも意味の無い行為なのでお
願いするのは止めておいた。
結局、今回の遠征の目的の一つである「伊勢エビの捕獲」には失敗したものの、
もう一つの「伊勢エビキャッチャーの存在の確認」には成功したので、まずまずの
成果だと言えよう。
ちなみに世にも珍しいこの伊勢エビキャッチャーは、今でも新橋駅前の
「ニュー新橋ビル」の地下1階の
「AMパーク ウイング ウイングオフィス」
というゲーセンににあるはず(2000/3/3時点で店員に確認したところ「暫く
(少なくともあと1週間ぐらい)はこの店にありますよ」との事)なので、
興味のある方は、後学の為にもこの世にも珍しいゲーム筐体を見学しておく
のも良いだろう。
こんな暴挙としか思えないようなゲーム機が、今後普及していくとは思えないの
で、ある意味一生の思い出になることウケアイ
である。
ただ、伊勢エビを取る気満々で行く場合は、オガクズと袋ぐらいは準備しておい
たほうが良いかもしれない。
どうも、その店には景品用の袋が常備されていなかったようだっかから。
ちなみに、取れた場合どうやって持ちかえらせてくれるのかが、確認できなかっ
たのが、最大の心残りであった。
(2000/03/03 新橋発:上井密度弐號記)