気付かぬうちにはげ
Hさんは50歳、そろそろ頭髪もクルお年頃である。雰囲気としてはカッパに近づいてきたHさんに、お兄さんが
「お前、もう少し気をつけた方がいいんじゃないの、髪。」としきりに忠告してくるようになった。
Hさんはいくつになっても兄弟ってありがたいなーと思う反面、
「兄貴だって相当キテルのに。人のことどころじゃないだろう。」とも思っていた。
お兄さんの後頭部は既にフランシスコ・ザビエルを思わせるまでに脱毛していたからだ。それに比べたら俺はまだまだ。
しかし、お兄さんは相変わらずHさんの髪のことを注意してくる。
しかも、自身は特に頭ケア(叩いたりとか)はしていないのである。
ちょっと不審に思っていたHさんだが、ある日はたと気がついたことがあったので、
後日、またもや「髪、髪」と言ってくるお兄さんに、合わせ鏡で自身の後頭部を見せてやった。
一瞬の沈黙があって、お兄さんは「ぎゃあああ」と叫び声をあげた。「ひょっとして兄貴、場所が場所だけに、
自分の状態に気付いてないんじゃ。」というHさんの予想は見事ビンゴ! していたのだった。
灯台元暗しというか明るしというか。
お兄さんはその後Hさんに髪のことをひとことも言わなくなったという。どっとはらい。
はげの楽しみ
S先生の頭はてっぺんがつるつる、まわりに真っ白の毛が生えている。私の好きな「白髪はげ」である。
先生の場合、白髪が先、その後だんだんキてしまったらしい。
ある冬に頭皮を直接刺激する北風に耐え切れず、思わずかぶったベレーが今やトレードマークになった先生だが、
はげならではの楽しみもあるという。
それはおしぼり。
夏には冷たーい、冬には暖かーいおしぼりで直接頭皮を拭く。体のてっぺんから直接やってくる刺激は
「髪のあるあなた方には味わえない快感ですよ。」とのこと。なんか、想像するだけで気持ちよさそう。
そのためだったらはげちゃってもいいかな、とつい血迷ってしまいそうになる。
ちや象のはげ・クライシス
はげ好きの私だが、自身は人並み以上に髪が多い。髪形変える時に困るくらい。
しかし、こんな私も、はげの危機に直面したことがある。
高校生の頃、髪を洗うたびにごそっと抜けてくるのに気がついた。季節の変わり目だからかな、と
そんなに気にしていなかったが、何ヵ月たっても抜け毛は止まらない。
当時は校則でみつ編みのおさげにしていた。髪の多い私のおさげは、太くて丸く、綱チックだったのだが、
ある日よく見ると平たくなっている。明らかに髪の量が減っているのだ。
さすがにちょっといかんなあと鏡で生え際チェックをしてみると、全体に抜けたせいか、地肌が白―く透けて見える。
減ったとはいえ、世間並みの毛量は保っているが、やはり気になってしようがない。
私はシャンプーを変えたり、ブラッシングを頻繁にしたりと、抜け毛対策に乗り出した。
けれど、一向に抜け毛が減る気配がないのだ。これはまずい。
どうしよう、と思ったのだが、いい方法を思いつかない。いろいろ考えて、ずっとロングだった髪を切ろう、
という結論に至った。こーんな大量の髪を長くしていたのだから、頭皮に負担がかかって当然かもしれない。
私はさっそく美容院に出かけて、髪をおかっぱにしてしまった。
それがよかったのかどうかは分からないが、しばらくすると抜け毛は止まり、もうちょっと経つと新しい毛が生えてきた。
めでたしめでたし、と言いたいところだが、しばらくの間、短い生え始めの毛が頭上一面を覆い、
鳥の雛状態になっていたのには結構困った。
当時は受験なんか控えて、お気楽な私でも知らず知らすストレスを抱えていたのかもしれない。
それが抜け毛の一因では、とも思うのだが、じゃあなんで受験勉強真っ只中に毛が生えなおしたのかは謎。
やっぱり髪を短くしたのが勝因だったのではないか。
だから、若はげ(予備軍)の人からどうしたらいい?と言われたときは、私は迷わず
「髪を切れ!頭皮を引っ張る力を少しでも減らすのだ!」と力説することにしている。
「俺はげるかも」と悩んでいる若者はレッツ・ヘアカット。
白髪抜き
私の趣味の一つに白髪抜きがある。黒い髪の毛の中からえいやっと白髪をむしりとるとき、
もうなんともいえない快感を感じる。さして抵抗なく抜けてくるあの感触もたまらない。
とはいうものの、自分のは抜かない、というか抜けない。白髪が一本もないのだ。
昔はもっぱら母のを抜いていたのだが、今はほとんどの髪が白髪(染めてるけど)で、
どれを抜けばいいのか分からないのでやめている。
そんなわけで、最近は白髪抜きの腕を振るう機会が少なく寂しいかぎりだが、
うまくしたもので今度は友人たちの頭にちらほらと白髪が出現し出した。ラッキー!
で、さっそく「抜かせろー」と迫っているのだが、これがなかなか大変。
女性はまああっさり抜かせてくれるのだが、男の人は嫌がりますねえ。理由は一つ、「はげそうだから。」
しょぼら毛の男の子ならいざ知らず、どんなふさふさ青年もそう言う。
男性の無意識下に、はげへの恐怖は根強く食い込んでいるようである。ちょっと気の毒。
でもめげずに、飲み会のゆるんだ席で、キャンプの退屈しのぎで、と折を見つけては迫ることにしている。
この間もキャンプの時に友人の近藤君に取らせてもらってたら、
「もういいだろうちやぞうさん、次は大将の取ってよ。」という。
ではさっそく、と大将を押さえつけてたら「あかんーちやぞちゃん、バイト君の取ったってえ。」
じゃあバイト君の、と思うとまたってな具合に、生け贄は互いに押しつけ合うのもお約束のようだ。
そりゃそうか、他人の頭だったらはげてようがづらかぶってようが、なーんの不都合もないもんね。
友情は毛よりも薄し。
|