サリャルカ ― カザフスタン北部の草原と湖沼群 Saryarka - Steppe and Lakes of Northern Kazakhstan
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| 遺産詳説(執筆:収斂さん) カザフスタンの国土は271.73平方キロメートルで、 気候が幾分おだやかな南部から急峻な山岳地帯まで変化に富んでいるが、 国土の大部分は大陸性気候(continental climate)のため年間を通して降水量が少なく、 3〜5月にまとまって降る以外、 雨はほとんど降らない。 そのため樹木は育ちにくく、 国土の大部分に広大な草原が形成されている。 草原は細かく分けるとさまざまなステップに分類されており、 それぞれに独特の生態系が見られる。 そのため中央アジアの生物種の保護に関して、 カザフスタンの自然公園が果たす役割は大きい。 カザフスタンのステップ地域は、 面積が110.2万平方キロメートルで、 国土の約40%を占める。 こうしたステップでは、 古くから人間によって牧畜や農耕地などへの土地改良が行われてきたが、 ソビエト連邦時代の1954年から1960年代にかけてもっとも大規模な国土開発が行われた。 この開発は、 温暖で耕作地に適した南部の草原から開始され、 現在では38万平方キロメートル以上が、 小麦を主体とする農地に変貌している。 しかしこの巨大土木工事は生態系を無視したものであったため、 近年、塩害などの土壌の劣化が深刻な問題になっている。 また丘陵地帯の谷間に開けた盆地や低地では、 動植物の固有の生態系はほぼ完全に破壊されてしまったといわれている。 そうした中で、 カザフスタンの北部に見られる草原は西シベリア低地ともいわれ、 気候が冷涼で開発が遅れたこともあって、 今でも自然環境は比較的良好である。 この地域のステップは、 森林性ステップ地域(forest steppe zone)に分類され、 広大な森や潅木林と草原が複合的に組み合わされたものである。 面積はおよそ7000平方キロメートルである。 この森林性ステップ地域は北緯54度以北まで続いており、 開発の拠点都市として建設されたペトロパブロフスク(Petropavlovsk)や Kokshetauのような大都市の近郊でも、 まだだいぶ残されている。 ただし降水量が少ないため、 森林性ステップは一度破壊されると森の再生が難しい。 そのため、近年、この森林性のステップの自然保護運動が活発になっており、 植生に改善が見られつつある。 またカザフスタンの北部にはプールとよばれる湖沼や湿原が多い。 そのため降雨量が少ないにもかかわらず、 さまざまな低地性の植物が湿原周辺で生き延びることができた。 大小無数の湖沼群の数は4万8000以上とも言われている。 こうした湖沼群は、 春と秋には、 シベリアからカスピ海へ、 またアジアからアフリカへの渡り鳥たちの貴重な中継地点・交差点になっている。 そのためカザフスタン北部の湿原や湖沼は、 ユーラシア大陸のさまざまな渡り鳥が見られる貴重な場所である。 また、 こうした湿原にはきまって広大な葦原が広がっており、 夏場には地元の鳥の貴重な繁殖地となっている。 主な鳥類としては、 カスピ海から飛来するサンドパイパー(sandpipers:海辺に生息するシギ科の数種の鳥類の総称)、 海カモメ(sea-gull)、 アジサシ(tern:カモメ科アジサシ属の中型の海鳥の総称)が一般的である。 またテンギス湖(Tengiz
lake)には珍しいピンク・フラミンゴ(pink
flamingo)も生息している。
またKurzhalgino自然保護区は、Astanaからわずか135キロメートル南西であるが、 ステップと湖沼群が共存しており、 多くの鳥類が見られることで知られる。 この自然保護区では、 シロハネヒバリ(white
winged lark)、 クロヒバリ(black lark)、 チドリ(plover)、 スカイラーク(sky
lark:ヒバリの仲間)、 ヒタキ(wheatear)、
チュウヒ(harrier)、 マーリン(merlin:小型のハヤブサの一種で、pigeon hawkと呼ばれることがある)が一般的である。 また世界で最も北で繁殖するグレーター・フラミンゴ(Greater
Flamingos)も生息している。
ほかにも
ペリカンの仲間のダルマチアン・ペリカン(dalmatian
pelican)や、 カイツブリの仲間のアカエリカイツブリ(red-necked
grebe)や ハジロカイツブリ(black-necked
grebe)、 オオハクチョウ(whooper
swan)をはじめ、 ガンカモ科の仲間のカオジロオタテガモ(white-headed
duck)、 カスピ海チドリ(caspian
plover)、 ツバメチドリ(pratincole)、 カモメの仲間のハシボソカモメ(slender-billed
gull)や オオズグロカモメ(pallas's
gull)、 アジサシの仲間(black
ternやwhite-winged tern)、 スラッシュ(thrush:主にツグミ科の小鳴鳥の総称だが、ツグミ科以外の小鳥も含まれる)、 ツメナガホオジロの仲間(longspur:ツンドラ地帯から中央アジアの草原地帯に生息するツメナガホオジロ属の小鳥の総称)、 ラップランド・ロングスパー(lapland
longspur)なども見られる。
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