遺産略説(執筆:収斂さん)
コイバ国立公園(Coiba National Park)はパナマの太平洋岸ベラグアス州(Veraguas)の南にある国立公園で、 コイバ諸島を中心に総面積は2701平方キロメートルもある世界最大の海洋公園である。 コイバ諸島はコイバ島を含め大小38の島から成り、 島には独自の進化をした動植物が多く見られることで有名である。 またコイバ国立公園内には東太平洋中部域で2番目に大きい珊瑚礁もあり、 島嶼、岩礁、海洋の重要な三つの構成要素のおかげで豊かな生態系が形成されている。 <歴史的経緯>
現在のコイバ国立公園一帯には、 かつてキャシク・コイバ・インディアン(Cacique
Coiba Indians)という部族が生活していた。 しかし彼らは1560年の欧州列強の植民地化でほぼ全滅してしまった。 1918年になって、 パナマ州(現在のパナマの前身)がこの島嶼を獲得し、 その中で最大のコイバ島に1910年に刑務所を建設した。 この刑務所はやがて規模を拡大し、 1970〜1980年代には受刑者数3000人まで膨れ上がった。 そして皮肉なことに、 この刑務所のおかげでコイバ島の熱帯雨林は手付かずの状態で保存することができた。 ちなみに刑務所は今でもコイバ島にある。
<動植物の生態系>
コイバ諸島は1万8000年から1万2000年前にパナマから分離したため、 孤立した島内で多くの動植物が独自の進化をした。 コイバ諸島には147種の鳥類が確認されているが、 1種につき20種は亜種が存在しているとさえ言われるほど地域特有性(endemic)が大きい。 コイバ島のアグーチ(agouti:Dasyprocta coibae
モルモットに似た熱帯アメリカ産の動物)や、 ホエザルの亜種(subspecies
of the howler monkey:Alouatta
palliata coibensis)、
ホワイト・テール・ディアの亜種(subspecies
of white-tailed deer:Odocoileus
virginianus rothchildi シカの仲間)はコイバ諸島でしか見られない。 また、コイバ諸島にはおよそ1450種類の植物が確認されているが、 そのうち固有種は758種にも上り、 その割合は驚異的である。 このため現在、生物資源有用タンパク質を採取する目的の研究プロジェクトさえある。 コイバ国立公園内には珊瑚礁もあり、 ザトウクジラ(humpback
whale)をはじめ23種のクジラやイルカが生息し、貴重な繁殖地にもなっている。
パナマ政府は、1992年にランチェリーア島(Rancheria)、 ヒカロン島(Jicaron)、ヒカリータ島(Jicarita)、カナル・デ・アフエラ島(Canal
de Afuera)、 ウバ島(Uva)、コントレーラス島(Contreras)、パハロス島(Pajaros)、 ブリンカンコ島(Brincanco)などを含む一帯を国立公園に指定した。 そして2001年にはこの地域を厳格に保護する法律をつくり、 人間と自然との共生を目指す新しいプロジェクトが開始された。 観光客もこの公園内ではエコツアーの義務が徹底され、 厳しい規制が求められている。 この取り組みは、 国際協同のためのスペイン機構(The
Spanish Agency for International Cooperation (AECI))、 スミソニアン熱帯研究協会(Smithsonian
Tropical Research Institute (STRI))などをはじめ、 世界中の多くの研究機関が注目している。 現在、コイバ国立公園は世界最大規模の厳格な海洋国立公園と言われている。
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