実は私はヨーロッパ偏重という地理的な問題よりも、 文化遺産と自然遺産の登録数のアンバランスが特に問題だと思っています。 せっかく、 自然と文化を一つの条約下でともに守ろうという画期的な考えであっても、 それがあまりよく表現されていないのが残念です。 世界遺産は現在 690件あります。 そのうち文化遺産は 529件、自然遺産は 138件、複合遺産は 23件です。文化遺産は自然遺産の4倍近くもあるのです。 この理由として、 一つには自然遺産は保護が難しいということが挙げられると思います。 自然を保護すると、 その土地は有効利用しにくくなるし、 文化財よりも管理が難しいですから。 実際、危機にさらされている世界遺産リストに登録されている 30件のうち、19件は自然遺産です。 これは自然を保護する方が難しいということを示していると、 私は思います。
いま一つには、 文化遺産と違って価値の見極めが難しいことも挙げられると思います。
文化遺産は言ってしまえば「もの」です。 しかし自然遺産は単なる「もの」ではありません。 ここに比較の難しさがあると思います。 自然遺産はある程度の面積を有し、 数々の生物、景観、地質などを含むからです。 生物地理区として区分して登録推薦するとの勧告が出されても、 その分類は文化遺産に比べて困難なのではないでしょうか。
また文化遺産は、 たった一棟の教会堂だけでも登録されているというものが沢山あります。 しかし自然遺産では、 たった一つの滝、あるいは断崖、あるいは川、 あるいは樹だけでの登録は出来ません。 自然遺産はその完全性維持のため、 ある程度の面積を有していることが必要条件となっているからです。 一つ例をあげますと、 オーストラリアの「マッコーリー島」はあまりにも狭く、 それが登録に際してネックになり、 一時は登録することが出来ないと通告されました。 一方文化遺産はどうかというと、 チェコの「オロモウツの聖三位一体柱」なんか、 たった一本の柱に過ぎません(装飾性著しい巨大な柱ではあります)。 自然遺産ではこうはいきません。 たった一つの美しい滝だけでは登録できませんから、 必然的に自然遺産が少なくなってしまうような条約設定であるように、 私には見えてしまいます。
それからこれを言ったら極論となってしまいますが、 自然と文化は相互に関係しあっているという考え方自体、 人間の一方的な思い過ごしだと言えないこともありません。 文化側から見れば、 自然景観の中に位置する文化財は 「文化的景観」を作りだしていると言えるでしょう。 しかし自然側から言えば、 文化的景観など邪魔も良いとこです。 だからそれを持ってして、 自然と人間の共同作品だなどと言うのは、 人間の一方的な解釈に他なりません。 更に、 多くの先住民族が自然の中に神秘性を感じ、 それらは自然と文化の融合財産であるとして認識されていますが、 これも人間が勝手にそう思ってるだけのものです。 ま、世界遺産条約を採択したのが人間だから、 しょうがないんですけどね。
こういったことから、 もしかしたら「自然よりもまず文化を」といった考えが無意識の内にあって、 だから文化遺産の方がはるかに多いのではないかなー、 とも思えてきます。
作成:2000.2.16
改訂:2001.4.01
|