ユネスコの世界遺産センターは、 「ヨーロッパおよび北米が、全登録遺産の半分を占めている」と指摘しています。 私はこの指摘に、 必ずしも賛同できません。 なぜなら北米の世界遺産の中には自然遺産が多く、 先史遺跡や先住民居住地が多いことから、 ヨーロッパのものと登録傾向が違っていると言えるためです。 ですからここでは単に、 ヨーロッパに全世界遺産の半分近くがあることを論点にしたいと思います。
ヨーロッパに世界遺産が多いことの理由として、 世界遺産条約がヨーロッパの価値観によって作られたためだと、 よく言われます。 ヨーロッパの基準で作られているので、 その登録がより容易になっているというのです。 この言い方にも一理あるかもしれません。 でも、 文化的景観という新しい概念の誕生や、 真正性に対する解釈の拡大がなされた近年でも、 ヨーロッパからの新登録が圧倒的に多いことに変わりはありません。
ヨーロッパに多いという傾向は、早くも 1979年の第3回世界遺産委員会から見られました。 第3回委員会終了時点で、 世界遺産リストに登録されている物件は 57件。そのうち半数近くの 23件が、ヨーロッパの遺産でした。 以来ヨーロッパは全世界遺産の約半数という数を保ちながら、 世界遺産を増やし続けています。 2001年1月現在登録されている 690件のうち、半数近くの 310件がヨーロッパ所有です。
ヨーロッパからはほぼ全域から、 様々なタイプの文化遺産が登録されています。 とは言っても細分化して見ると、 必ずしもバランスが良いとも言い切れないのですが・・・ 例えば西ヨーロッパからは 集落遺産が登録されていなかったりします。 でもヨーロッパは世界のほかの地域に比べて、 文化遺産の登録がかなり充実しているのは確かです。
文化遺産の場合、 特に登録数が少ない(あるいは全く無い)のが、 大洋州、アフリカのサハラ以南、 シベリアと新世界北部です。 そういった所にも人類活動の痕跡などが残されているので、 文化遺産の多様性を見せるためにも、 いくつかの遺跡や文化財を世界遺産に登録するべきだと私は考えています。 しかし、 どうにも遺物が少なかったり、 正確な調査がなされていないものが多いそうです。 また世界遺産の根本的問題として、 保全義務をかせに思って登録が非消極的になっていることもあるかもしれません。
この辺り、 世界には後に残る石の文化ばかりがあるのでもない という妥協が見いだされているとは言え、 難しいところです。 また地理的なアンバランスの是正を大きく取上げると、 今度は、 世界遺産としての価値が無いものでも、 単にアンバランスを解消する目的で登録されはしまいか、 などという危惧が出る恐れもあります。
以前私は、 地理的なアンバランスは絶対に解消しなくてはならないと思いつづけてきました。 しかし世界遺産についての色々な人の意見を聞くうちに、 これはそこまで深刻な問題でもないのかな、 と思うようにもなりました。 長期間のヨーロッパの文化・芸術の集積はとても優れていますから、 今後もヨーロッパからの登録数が少なくなることが考えられないからです。 ですから私は、 地理的アンバランスは仕方ないものと捉え、 それよりも、 まだ登録されていない非ヨーロッパ地域の物件を、 速やかに世界遺産に登録して保全を促したり、 文化・自然の多様性がよりよく示されるようにするべきだと 思うようになりました。
作成:2000.2.16
改訂:2001.4.01
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